経済外交
2013年G8ロック・アーン説明責任報告書の概要
平成25年6月7日
1.全体の概要
2013年の説明責任報告書は、G8として2度目の包括的な説明責任報告書となっている。本報告書は、2010年のムスコカ・サミットにて発表された初の包括的な説明責任報告書で対象とした9分野((1)援助量・援助効果・債務、(2)経済開発、(3)保健、(4)水と衛生、(5)食料安保、(6)教育、(7)ガバナンス、(8)平和と安定、(9)環境とエネルギー)の56のコミットメントと、2010年ムスコカ・サミット以降のサミットで合意されたコミットメントを対象として、レビューを行った。
透明性を向上し、より分かり易く情報を伝えるために、本報告書では2012年キャンプ・デービッド説明責任報告書で採用されたスコアカード・アプローチが用いられた。本報告書では、定量的及び定性的情報を用いつつ、5段階(極めて良好、良好、順調、期待を下回る、問題あり)で全体評価及び個別評価を行った(評価手法の詳細は報告書附属書Bに記述)。また、達成済み、既に無効又はG8外で取組がなされているコミットメントは、本報告書をもって評価を終了するものとして特定した。
本報告書は、新たな開発資金源や新興国、民間セクター、財団等を含む開発パートナーの拡大など、開発を取り巻く環境の変化を考慮に入れている。2011年ドーヴィル・サミットで立ち上げられた「ドーヴィル・パートナーシップ」、2012年キャンプ・デービッド・サミットで立ち上げられた「食料安全保障及び栄養のためのニュー・アライアンス」のような広範かつ革新的なパートナーシップの下で活動することで、G8はその環境変化に適応してきている。これら2つの取組は独自のモニタリング・プロセスを持っているため、本報告書では重複を避け、最新の進捗状況を記載している。
2.分野別評価の概要
9つの分野における進捗はスコアカード・アプローチを用いて評価されており、6つの分野(経済開発、保健、水と衛生、食料安保、ガバナンス、平和と安定)で全体評価が良好と評価され、3つの分野(援助量・援助効果・債務、教育、環境とエネルギー)で全体評価が順調と評価された。
(1)援助量・援助効果・債務(順調):2005年グレンイーグルズ・サミットにおける援助に関するコミットメントに関するG8各国の個別評価は進捗に幅が見られる。低所得国向け及びアフリカ向け援助量はほぼ一定を保っている。援助効果については、各国が釜山ハイレベルフォーラムを受けて取組を強化し、進捗が見え始めているものの、順調との評価にとどまった。
(2)経済開発(良好):特にアフリカにおいて、インフラ及び投資環境を含めた貿易及び開発支援について、概して前向きな進捗が見られた。国際送金コストの削減は非常に困難であることが明らかとなり、進捗は期待を下回ると評価された。
(3)保健(良好):本分野は多数の野心的なコミットメントが集中しており、進捗は概してとても良好である。感染症対策及び保健システムの改善における600億ドルのプレッジは複数のコミットメントの土台となるもので、その80%は2011年までに拠出されている。しかしながら、多くの国における保健従事者数の増加、HIV治療薬のユニバーサル・アクセスの達成、ポリオ根絶のコミットメントには課題が残る(なお、報告書においては日本が実施しているパキスタンにおけるポリオ対策でのゲイツ財団とのローン・コンバージョン案件がケーススタディとして掲載された)。
(4)水と衛生(良好):G8は本分野における政治的機運の維持及び資金拠出の増加において良好に進捗している。2011年には、G8は水と衛生に関するプログラムに対して47億ドルの貢献をし、途上国との水と衛生パートナーシップの数を増加させてきた。
(5)食料安全保障(良好):ラクイラ食料安全保障イニシアティブの進捗は良好である。プレッジされた222億ドルは全てコミットされ、2013年4月までに164億ドルが拠出された。G8は、途上国のオーナーシップ、協調、多国間機関の関与、説明責任及び透明性に関するローマ原則の実施に着実に取り組んでいる。アフリカの6か国が食料安全保障及び栄養のためのニュー・アライアンスに参加し、初めての進捗報告書が本年公表される。
(6)教育(順調):本分野のコミットメントはファスト・トラック・イニシアティブ(現教育のためのグローバル・パートナーシップ(GPE))への資金提供に焦点が当てられている。2006年以降、G8は全体として基本教育に対して95億ドル拠出しており、本分野全体において進捗が見られるものの、GPEの資金不足は解消されていない。
(7)ガバナンス(良好):G8が資金の80%を提供しているアフリカにおける相互審査システム(APRM)、採取産業透明性イニシアティブ(EITI)、企業の社会的責任や財産回復を通じたガバナンスの向上の支援について、良好な進捗が見られる。紛争資源の解決及び外国公務員贈賄防止に係る法執行は進行中の課題とされた。
(8)平和と安定(良好):平和支援、輸送、兵站支援のための地域的な施設含む多くの平和と安定分野のコミットメントにおいて素晴らしい進捗が見られる。平和支援活動に従事する75,000人の兵士の訓練及び装備に関するプレッジは達成された。海上保安能力向上、アフリカ待機軍の強化、警察部隊の訓練、小型武器管理の効果改善においても良好な進捗が示されている。
(9)環境とエネルギー(順調):気候変動適応分野への資金拠出、森林管理、地域エネルギー源を含むエネルギー及び環境関連活動の面において良好な進捗が見られた。生物多様性の損失を減少させるために十分な取組がなされているが、成果を出すには至っていない。
2013年の説明責任報告書は、G8として2度目の包括的な説明責任報告書となっている。本報告書は、2010年のムスコカ・サミットにて発表された初の包括的な説明責任報告書で対象とした9分野((1)援助量・援助効果・債務、(2)経済開発、(3)保健、(4)水と衛生、(5)食料安保、(6)教育、(7)ガバナンス、(8)平和と安定、(9)環境とエネルギー)の56のコミットメントと、2010年ムスコカ・サミット以降のサミットで合意されたコミットメントを対象として、レビューを行った。
透明性を向上し、より分かり易く情報を伝えるために、本報告書では2012年キャンプ・デービッド説明責任報告書で採用されたスコアカード・アプローチが用いられた。本報告書では、定量的及び定性的情報を用いつつ、5段階(極めて良好、良好、順調、期待を下回る、問題あり)で全体評価及び個別評価を行った(評価手法の詳細は報告書附属書Bに記述)。また、達成済み、既に無効又はG8外で取組がなされているコミットメントは、本報告書をもって評価を終了するものとして特定した。
本報告書は、新たな開発資金源や新興国、民間セクター、財団等を含む開発パートナーの拡大など、開発を取り巻く環境の変化を考慮に入れている。2011年ドーヴィル・サミットで立ち上げられた「ドーヴィル・パートナーシップ」、2012年キャンプ・デービッド・サミットで立ち上げられた「食料安全保障及び栄養のためのニュー・アライアンス」のような広範かつ革新的なパートナーシップの下で活動することで、G8はその環境変化に適応してきている。これら2つの取組は独自のモニタリング・プロセスを持っているため、本報告書では重複を避け、最新の進捗状況を記載している。
2.分野別評価の概要
9つの分野における進捗はスコアカード・アプローチを用いて評価されており、6つの分野(経済開発、保健、水と衛生、食料安保、ガバナンス、平和と安定)で全体評価が良好と評価され、3つの分野(援助量・援助効果・債務、教育、環境とエネルギー)で全体評価が順調と評価された。
(1)援助量・援助効果・債務(順調):2005年グレンイーグルズ・サミットにおける援助に関するコミットメントに関するG8各国の個別評価は進捗に幅が見られる。低所得国向け及びアフリカ向け援助量はほぼ一定を保っている。援助効果については、各国が釜山ハイレベルフォーラムを受けて取組を強化し、進捗が見え始めているものの、順調との評価にとどまった。
(2)経済開発(良好):特にアフリカにおいて、インフラ及び投資環境を含めた貿易及び開発支援について、概して前向きな進捗が見られた。国際送金コストの削減は非常に困難であることが明らかとなり、進捗は期待を下回ると評価された。
(3)保健(良好):本分野は多数の野心的なコミットメントが集中しており、進捗は概してとても良好である。感染症対策及び保健システムの改善における600億ドルのプレッジは複数のコミットメントの土台となるもので、その80%は2011年までに拠出されている。しかしながら、多くの国における保健従事者数の増加、HIV治療薬のユニバーサル・アクセスの達成、ポリオ根絶のコミットメントには課題が残る(なお、報告書においては日本が実施しているパキスタンにおけるポリオ対策でのゲイツ財団とのローン・コンバージョン案件がケーススタディとして掲載された)。
(4)水と衛生(良好):G8は本分野における政治的機運の維持及び資金拠出の増加において良好に進捗している。2011年には、G8は水と衛生に関するプログラムに対して47億ドルの貢献をし、途上国との水と衛生パートナーシップの数を増加させてきた。
(5)食料安全保障(良好):ラクイラ食料安全保障イニシアティブの進捗は良好である。プレッジされた222億ドルは全てコミットされ、2013年4月までに164億ドルが拠出された。G8は、途上国のオーナーシップ、協調、多国間機関の関与、説明責任及び透明性に関するローマ原則の実施に着実に取り組んでいる。アフリカの6か国が食料安全保障及び栄養のためのニュー・アライアンスに参加し、初めての進捗報告書が本年公表される。
(6)教育(順調):本分野のコミットメントはファスト・トラック・イニシアティブ(現教育のためのグローバル・パートナーシップ(GPE))への資金提供に焦点が当てられている。2006年以降、G8は全体として基本教育に対して95億ドル拠出しており、本分野全体において進捗が見られるものの、GPEの資金不足は解消されていない。
(7)ガバナンス(良好):G8が資金の80%を提供しているアフリカにおける相互審査システム(APRM)、採取産業透明性イニシアティブ(EITI)、企業の社会的責任や財産回復を通じたガバナンスの向上の支援について、良好な進捗が見られる。紛争資源の解決及び外国公務員贈賄防止に係る法執行は進行中の課題とされた。
(8)平和と安定(良好):平和支援、輸送、兵站支援のための地域的な施設含む多くの平和と安定分野のコミットメントにおいて素晴らしい進捗が見られる。平和支援活動に従事する75,000人の兵士の訓練及び装備に関するプレッジは達成された。海上保安能力向上、アフリカ待機軍の強化、警察部隊の訓練、小型武器管理の効果改善においても良好な進捗が示されている。
(9)環境とエネルギー(順調):気候変動適応分野への資金拠出、森林管理、地域エネルギー源を含むエネルギー及び環境関連活動の面において良好な進捗が見られた。生物多様性の損失を減少させるために十分な取組がなされているが、成果を出すには至っていない。
3.結論
本報告書はG8の取組の成功及び課題を紹介するとともに、例えば水と衛生におけるアフリカとの協力や食料安全保障における国及び地域パートナーとの協力等、G8は他者とのパートナーシップの下で活動することで最も成功を収めていることに言及している。また、G8の説明責任の課題として以下の評価がなされた。
そのような制限にも関わらず、本報告書は、評価、ケーススタディ、オープンデータの利用を通じてG8の取組のインパクトの一部を伝え、G8首脳が自身の約束に説明責任を負うことを維持するために関係者が用いることができる情報を提供しようとしている。
本報告書はG8の取組の成功及び課題を紹介するとともに、例えば水と衛生におけるアフリカとの協力や食料安全保障における国及び地域パートナーとの協力等、G8は他者とのパートナーシップの下で活動することで最も成功を収めていることに言及している。また、G8の説明責任の課題として以下の評価がなされた。
- モニタリングを促進するため、コミットメントは、将来の報告を可能とするような時間軸を持ち、明確かつ透明である必要がある。
- G8がニュー・アライアンス及びドーヴィル・パートナーシップのような他のパートナーが関与する世界的なイニシアティブの支援を強化する際、説明責任及びオーナーシップを形成するため、イニシアティブ自体によるモニタリングを行うことが最良である。
- 実際にG8の取組の成果とインパクトを測ることは、複雑であり、本報告書のような年次報告書の範疇を越える。
そのような制限にも関わらず、本報告書は、評価、ケーススタディ、オープンデータの利用を通じてG8の取組のインパクトの一部を伝え、G8首脳が自身の約束に説明責任を負うことを維持するために関係者が用いることができる情報を提供しようとしている。