日本の安全保障と国際社会の平和と安定

平成25年5月1日
1.会議の概要

(1)4月8日から19日まで,オランダのハーグにて,化学兵器禁止条約(CWC)第3回運用検討会議が開催され,締約国188か国のうち我が国を含む122か国のほか,オブザーバーとして署名国2か国(イスラエル,ミャンマー)及び未署名国1か国(アンゴラ)等が参加した。また,会議初日には,潘基文(バン・ギムン)国連事務総長によるステートメントが行われた。

(2)5年に一度開催されるCWC運用検討会議は,過去5年間の条約の運用状況を踏まえ,今後の方向性を定める節目となる会議で,今回の会議は条約発効以来16年が経過し,ストックパイル化学兵器の廃棄が進捗し,化学兵器禁止機関(OPCW)が移行期にあることから,将来のあり方に関する指針を打ち出すことが期待された会議であった。

(3)今回の会議では,国家及びテロリストを含む非国家主体による化学兵器の保有・使用の脅威の増大及び科学技術の進展等を踏まえ,条約の国内実施強化,効果的な検証制度の運用,国際協力と援助の重要性等について,活発に議論が行われた。

(4)また,シリアにおける化学兵器使用の疑い,及び,国連事務総長による化学兵器使用の疑いにかかる調査について,CWC及びOPCWがどのようなメッセージを発するかが,今回の会議における争点となった。

(5)政治宣言及び条約運用のレビューからなる報告書は,特にシリアに関する記述についての協議が難航したが,調整を重ねた結果,コンセンサスで採択された。

2.最終報告書の概要

(1)政治宣言では,化学兵器禁止にかかる国際的な規範としてCWCが果たしてきている役割,非締約国へのCWC加盟呼び掛け,条約の趣旨・目的を実現するために締約国が取り組む重点課題,シリアにおける化学兵器使用の疑いにかかる懸念が表明された。

(2)条約運用のレビューでは,条約の各分野について,過去5年の実施状況のレビュー及び今後の取り組みが記述された。

3.我が国の貢献と評価

(1)我が国は、「化学兵器の再出現防止のために取りうる方策(PDF)」及び「中国遺棄化学兵器に関する我が国の取り組み(PDF)」に関する国別文書を提出するなどして,報告書作成の準備段階から積極的に議論に貢献してきた。また,今回の会議では,長嶺安政駐オランダ大使・OPCW常駐代表を団長とし,北野軍縮不拡散・科学部長等を含む代表団が参加し,最終報告書への合意形成にも貢献した。

(2)報告書のうち政治宣言において,条約実施にかかる締約国のコミットメントとともにシリアの化学兵器使用の疑いに対して強いメッセージを発することにより,国際社会におけるCWC及びOPCWの信頼性を維持することができた。
 また,条約運用のレビューについても,条約の国内実施強化,検証制度の効率化,科学技術の進展の考慮,化学産業界を含む市民社会等との対話促進等,化学兵器の再出現防止に資する具体的な取り組みについて,今後のCWC及びOPCWの方向性を示すバランスのとれたものとなっている。

(3)我が国としては,CWCに対する国際社会の信頼を維持し,核・化学・生物兵器を禁止・規制する多国間軍縮・不拡散条約の強化に向けた前向きな機運を維持するうえで,今回の会議の成功を評価する。

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