広報・資料 報告書・資料

メリン病院医療機材改善計画

1.評価対象プロジェクト名:
 メリン病院医療機材改善計画
2.国名:ベトナム
3. 援助形態:草の根無償1999年度、9.5百万円
4. 被供与団体:
 ビンフック省メリン病院
5. 評価者:
 下岡明子 グローバル リンク マネージメント(株) 社会開発部研究員
 小川陽子 グローバル リンク マネージメント(株) 社会開発部研究員
6. 現地調査実施期間:2001年7月22日~8月12日
7. プロジェクトの目的:
 メリン病院は、1956年にビンフック省メリン郡病院として設立され、地域人口25万人のほか空港周辺及び外国企業誘致地域の医療ニーズにも対応している。近年、空港/ハノイ間の交通量増加に伴い、高速道路での交通事故が増加しているが、同病院では機材導入が大幅に遅れているため、現在これらの受傷者は救急車で30km以上離れたハノイの病院に移送せざるを得ない状況にあった。本件は、外科手術室、レントゲン室、検査室の機材整備を通じて同病院の救急対応や早期治療の受け入れ能力を高めることを目的としている。
8. 評価結果:
(1) 全てを手作業に頼っており、時間的なロスの多かった病理検査・分析、ICU部門での心電図モニターの導入や、外科手術室での老朽化した医療機材の交換は、病院の機能強化のために必要且つ適切なものであったといえる。購入・設置された機材について、各室の常勤スタッフほぼ全員が取り扱い・維持管理に関する訓練を受けており、全てが意図された目的に利用されている。残念なのは、同病院には発電機がなく、一部機材は停電時の対処が考慮されなかったこと、また規格が必要とされる機能に対応していなかったことである。
(2) 草の根無償支援によって導入された医療機器によって、検査の分析データが早く、正確に、詳細に提供されるようになり、効率的・効果的な診断が可能になった。手術室では安全な治療が可能になり、ICUでは看護婦/士の負担が軽減されたことで時間的余裕が生まれている。医療業務の効率性が上がり、患者の受け入れ体制が改善されたことで、以前より多くの入患を受け入れられるようになっている。また、医療従事者による機器取り扱い能力向上にも寄与し、彼等の士気を高めるなどの間接的成果も観察されている。
(3) 外科手術ケースを上位医療機関に送る件数が半減したこと、迅速で正確な診断が可能になったことから、患者の疾病に対する適時適切処置が促進され、生存率を高めることに大いに貢献し得ると考えられる。
(4) 同病院において、交通事故で外科手術を必要とするケースは年間2,520件ほどあり、また、同病院は地域医療の基点となる郡保健センターも兼ねているため、結核などの予防・治療も重要な課題となっており、同病院の受け入れ体制の強化はその地域のニーズに呼応した有効な支援であったといえる。
(5) ベトナムにおいて過剰が問題となっている郡レベル病院の統廃合が進められている中、メリン病院は他郡区からの急患をも受け入れる中堅病院であり、総合病院化の計画もあることから組織の存続性があるといえる。導入後に増加した維持費・消耗物資購入費なども、省保健局からの割当て予算内で賄っており、自立発展のための下地ができている。多少弱いのが技術的側面で、器機の維持管理は実施されているが、増加する患者・ケースに対応できるだけの技量を持った医師の数が追いついておらず、現在上位医療機関との連携を通じた医療従事者の技術向上が進められており、この部分での更なる充実が望まれる。
9. 提言(今後のフォロー・アップ、改善すべき点など):
(1) 増加する患者や医療ニーズの変化に応じた医師、検査技師、看護婦・士の技量レベルの向上と数の確保がなされ、供与機材がより有効に活用されることが期待される。
(2) 今後、医療機材を購入する際には、業者と電力供給の安定性など病院のインフラ環境を事前に十分に協議し、また提供すべきサービスに適合した規格であることを確認しておくことが大事である。また、購入計画策定にあたり、長期的な視野から総合病院化の企画との整合性を考慮することも薦められる。
(3) 購入された機器は頻度の高い停電に対応していない可能性があり、早急に機器の寿命に影響がないかを査定し、適切な処置を行う必要がある。
10. 外務省からの一言:
(1) 草の根で供与した機材が適切に使われ、治療成果を上げていることは評価できる。
(2) 当該病院に発電機がないことについて、供与品目の決定時点で考慮されなかったことについては、反省すべき点である。以後、同様の案件が申請された場合、大使館としても使用環境の確認を徹底したい。


このページのトップへ戻る
前のページへ戻る