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ヴ-ヴァン小学校改修計画

1.評価対象プロジェクト名:
 ヴ-ヴァン小学校改修計画
2.国名:ベトナム
3. 援助形態:草の根無償1999年度、6.3百万円
4. 被供与団体:ヴーヴァン村人民委員会
5. 評価者:
 下岡明子 グローバル リンク マネージメント(株) 社会開発部研究員
 小川陽子 グローバル リンク マネージメント(株) 社会開発部研究員
6. 現地調査実施期間:2001年7月22日~8月12日
7. プロジェクトの目的:
 ヴーヴァン小学校は本校と1.8KM離れた分校に分かれ、分校は堤防の外に位置し洪水時の浸水で学習効率が下がっていた。本校施設は3教室しかなく、78%の生徒が教室で授業が受けられなかったため、教員が生徒宅で出張授業をするという状況であった。本件は、本校と分校を合併させ、10教室を備えた学校施設を整備することにより、同小学校の学習環境を改善し、教育の質の充実を図ることを目的としている。
8. 評価結果:
(1) 約6百万円の資金で10教室と生徒会・図書室を擁する2階建ての立派な校舎が建設されたが、建物の仕様の違いもあり、日本の無償案件で建設された同規模の小学校の8分の1で済んだ。教育関連の行政手続きの煩雑さから資金申請から工事開始まで1年6ヶ月程かかり、工事の発注額の増加でコミュニティの負担額が多くなったが、オーナーシップや適切な規格などの点で長期的には正の影響が大きいと考えられる。
(2) 新校舎建設後、全校生徒(643名)が照明、換気、黒板などの施設が整備された環境で学習できるようになった。グループワークが効率的にできるようになり、電気の導入で音楽の授業内容の幅が広がり、学習効率の向上に対する効果が期待できる。また、生徒間の友達の輪が広がり通学の楽しみが増えたようで、生徒たちに充実した学びの場を与えた本案件の意義は大きい。建物の入り口の壁には日本のODA支援を明記した定礎碑がはめ込まれており、生徒会室にはホーチミン氏の銅像と並んで、学校側が自作したODAマークが額入りで飾ってあるなど、日本からの支援に感謝の意を表している様子が観察された。衛生施設や給水施設が増設されなかったこと、安全な通学路の確保がなされなかったことが課題として残っており、今後この部分での改善策が望まれる。
(3) 同校では、成績優秀生徒の割合が増加し、県内の36小学校のうち優秀学校第2位に輝くなど良いニュースが多い。ドロップアウトもなくなり、中等学校進学試験に全員合格するようになった。これは、学習環境の改善のほか、1998年から導入された生活困窮者を対象とした奨学金制度にも関連していると考えられる。また、クラス数の増加に伴い学校の格上げがなされ、教育訓練局から補助金が出るようになるなど間接的な成果も観察された。導入された電気を利用し、コンピューターと外国語の教員を雇う計画もあり、さらなる教育の充実が期待される。
(4) 初等教育の普遍化と質の確保は国家の重点課題であり、タイビン省では洪水被災地域での教育施設充実が優先課題となっていることから、本件の妥当性は極めて高いといえる。
(5) 国の教育機関であるため、教育訓練局がクラス数に従って教員の派遣を行い、その運営維持は人民委員会を始め村レベルの組織が責任を分担しながら管理している。事業及び事業後の運営維持は、既存の組織運営のしくみに則って行われており、オーナーシップが高く、将来的なニーズにも対応した自立発展性の高い初等教育の場を提供したといえる。
9. 提言(今後のフォロー・アップ、改善すべき点など):
 タイビン省では、洪水被災地域での教育施設充実が優先課題となっており、本計画の妥当性の高さを評価できる。 一方、旧分校区から通学する生徒および親の負担を配慮するなど、教育訓練局、人民委員会側に残された課題もある。
10. 外務省からの一言:
 教育訓練局、人民委員会がそれぞれ役割を分担し学校の維持運営に関わっているという点で、自立発展性の高い優良案件である。


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