1.評価対象プロジェクト名:
ナムホン部落上水道敷設支援計画
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2.国名:ベトナム |
3. 援助形態:
草の根無償1999年度、7.4百万円 |
4. 被供与団体:沖縄ベトナム友好協会 |
5. 評価者:
下岡明子 グローバル リンク マネージメント(株) 社会開発部研究員
小川陽子 グローバル リンク マネージメント(株) 社会開発部研究員 |
6. 現地調査実施期間:2001年7月22日~8月12日 |
7. プロジェクトの目的:
沖縄ベトナム友好協会の活動拠点であるドンアイン区ディア村では衛生的な飲料水が確保されておらず、周辺農民は感染症の下痢などに悩まされていた。また、同協会が周辺農民への技術移転や日本からの企業誘致などの事業を展開する上でも困難が生じていた。本プロジェクトは、衛生的な水の確保を通じてディア村の衛生状況を改善させ、さらに同協会の拠点であるドンアイン沖縄文化経済交流センターの活動環境を整備することを目的としている。
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8. 評価結果:
(1) |
浄水層や給水棟が建設され、ジェネレーター、変電気、水質改良装置など、日本からの輸入による機材の購入や設置も問題なく実施された。上水道は近くの幼稚園まで敷設されており、同園に設置された共同水道栓は、水汲みや行水など村の人々によってよく利用されている。 |
(2) |
購入された高性能水質改良装置は、地下水から病原菌を取り除くことが可能であるため、ディア村民の衛生環境の改善に寄与する可能性が高い。1日最大1万2千リットルの衛生的な水が幼稚園の敷地から村民(約1,500人)に給水できるようになり、幼稚園では教官の水汲みの手間が省け園児により多くの時間が割けるようになった。園児達は靴や草履を履くようになり、手や腕などを良く洗うようになったため、目に見えて小奇麗になった。幼稚園でより多くの木や植物が育てられるようになるなどの間接的な効果も見えている。 |
(3) |
対象地域一帯は道路で他の企業誘致地区から分断され、区内でもインフラ整備が遅れていたことから本事業は地域のニーズに合致していたといえる。一方で、高価なハイテク機材の選択は、将来的に給水事業が地元に根付くことを想定すると、適正技術とは言い得ない感がある。
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(4) |
安全な水が確保されたことでセンターや幼稚園の衛生環境、学習環境は大幅に改善され、活動が円滑に実施できるようになったことによる波及効果は高いものと考えられる。設置された上水道はディア村民の生活レベル向上に貢献するだけでなく、同協会と村民や行政組織との交流や信頼性が深まるという点でも意義あるものと評価される。さらに、同センターが企画している農産物の2次加工品製造に向けた事業拡張に対する貢献度は極めて高いものと考えられる。 |
(5) |
村落への水の安定供給に必要な維持メンテナンスコストは沖縄ベトナム友好協会が継続して負担してゆく予定であり、その意味で給水事業の継続性は確保されている。しかし、施設の維持責任と水量の管理は全て同センターが掌握しており、村の人々は実質的に関わっていないため、給水事業としての自立発展性が懸念される。
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9. 提言(今後のフォロー・アップ、改善すべき点など):
(1) |
村人を対象に水と下痢症の関係などに関する衛生意識を向上させ、行動様式の改善を積極的に促す活動が行われれば、草の根無償資金による設備改善がより有効に衛生状況の向上につながると考えられるため、この部分での一層の充実が望まれる。
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(2) |
水の産業利用が開始された後、村への水供給が途切れないこと、また、村・村民による水管理のシステムが導入されることが望まれる。
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10. 外務省からの一言:
(1) |
水供給に関する案件は草の根に多い案件であり、力を入れている分野でもある。今後も地元住民のニーズを汲み上げ、優良案件を発掘していきたい。 |
(2) |
事業実施団体である沖縄ベトナム友好協会が維持・メンテナンスコストを負担していくことは、当面の給水事業の継続性という点では有効であるかもしれないが、自立発展性という点で問題が残る。地域住民が維持管理に参加できるような体制を漸次的に作っていくことが望まれる。大使館としても適宜アドヴァイスしていきたい。
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