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プノンペン市キエンクリエン障害者職業訓練センター改修計画

1.評価対象プロジェクト名:
 プノンペン市キエンクリエン障害者職業訓練センター改修計画
2.国名:カンボジア
3. 援助形態:
 草の根無償1999年度、10.0百万円
4. 被供与団体:難民を助ける会
5. 評価者:
 下岡明子 グローバル リンク マネージメント(株) 社会開発部研究員
 小川陽子 グローバル リンク マネージメント(株) 社会開発部研究員
6. 現地調査実施期間:2001年7月22日~8月12日
7. プロジェクトの目的:
 難民を助ける会は、1993年に「キエンクリエン職業訓練センター」を設立し、地雷被害者やポリオの後遺症などによる下肢障害者の社会的・経済的自立支援を行っている。しかしながら、同センター施設は84年に建設された国立の建物で老朽化が激しく、訓練活動に支障があっただけでなく、下水施設も不充分でスタッフや訓練生の安全・健康への害が懸念されていた。本件は、同センター施設内の職業訓練棟、事務所棟、台所、男子寮の修復を通じ、障害者が安全に訓練できる環境を整えることにより、事業の効率を向上させることを目的としている。
8. 評価結果:
(1) 以前の施設は、床の凹凸がひどく義足や車椅子を使う訓練生の安全面を脅かしていただけでなく、雨季には男子寮や台所の雨漏りで床に水溜りができるなど、衛生面でも劣悪な状態だった。草の根無償支援による施設の改修後は、屋根の補修で雨漏りが無くなり、台所の水周りが改善されて衛生的になり、また建物の出入り口もバリアフリーとなって、快適な生活と安全な通行が可能になった。
(2) 本プロジェクトの成果の達成度は目覚しく、卒業6ヶ月の就業率は平均して80%、1年後の定着率も70%にのぼる。オートバイ修理コースでは民間工房での2ヶ月間の実習、縫製コースでは実習で製作した洋服・バッグの展示即売や会議用バッグなどの受注、TV/ラジオ修理コースではCDプレーヤーや携帯電話など市場需要を見込んだ教官の再訓練計画など、教官が主導となって行った様々な工夫が功を奏したと言って良い。草の根無償の投入は、こういった困難の伴う障害者の就業を達成するための努力を支える基盤・環境造りに貢献したといえる。一新された施設によって与えられた快適な訓練環境は、訓練生はもとより教官の士気を高める効果も大きかったようである。
(3) 1993年の開所以来350名が訓練過程を修了し、社会復帰を果たしている。訓練生の平均学歴は小学校卒業程度で、入所時読書きの出来ない訓練生もいるが、レベルに合わせた識字教育の実施で修了時にはほぼ全員が日常生活はもとより就業に必要な読書きが出来るようになっている。オートバイ修理コースの訓練生の一人は、以前は親類からの差別に苦しんでいたが、技術の習得によって勇気付けられ「障害者への偏見」に立ち向かう自信が覗えた。訓練生の精神面の成長が著しく、本プロジェクトが彼等の生活に与え得るインパクトの強さが推し計れる。
(4) カンボジアの障害者総数は推計で約14万人、総人口の約1.4%といわれ、障害者支援の必要性が高いにもかかわらず、国立障害者リハビリテーションセンターの実施運営能力は極めて限られている。このような状況下、障害者支援分野における国際NGOの役割は大きく、同訓練センターによる活動は極めて重要であるといえる。また、障害者人口の85%が農村に居住することから、地方出身者を多く受け入れる同センターの方針は、妥当性が高い。
(5) 事業実施団体である日本のNGOは長期的に事業を運営する意思を持っている。社会福祉省への運営引渡しは当面考えていないが、訓練センターの組織体制は確立してきており、カンボジア人スタッフの育成・強化も確実に進んでいると評価できる。他の国際NGO/機関との連携も出来ており、今後も同分野での一層の活躍が期待される。
9. 提言(今後のフォロー・アップ、改善すべき点など):
(1) 修復過程で数カ所の不良工事個所が発覚し、再三にわたる補強工事・再工事が必要となった。事業実施団体は、施設の耐久性および問題再発に備えての維持管理費の充当などを検討する必要がある。
(2) 精神的に不安定な障害者のために心のケアができるスタッフが配置されれば一層効果が高いと考えられる。
10. 外務省からの一言:
(1) 障害者への支援は草の根で力を入れている分野の一つであり、今後も積極的に支援していきたいと考えている。
(2) 当該訓練センターは、卒業後6ヶ月の就業率が平均80%という数字に見るように、障害者の経済的自立促進という点で成功している。同様の施設のモデルケースとなってほしい。
(3) 障害者施設の建設及び改修における工事の不良を防ぐために、大使館から事業実施団体に対して、業者の選定・業者への指示に際する注意事項等を指導するなどの対応を検討していきたい。


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