1.評価対象プロジェクト名:
シェムリアップ州アンコール小児病院検査室拡充計画
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2.国名:カンボジア |
3. 援助形態:
草の根無償1999年度、5.8百万円 |
4. 被供与団体:
フレンズ・ウィズアウト・ボーダー |
5. 評価者:
下岡明子 グローバル リンク マネージメント(株) 社会開発部研究員
小川陽子 グローバル リンク マネージメント(株) 社会開発部研究員 |
6. 現地調査実施期間:2001年7月22日~8月12日 |
7. プロジェクトの目的:
アンコール小児病院は、州立病院の小児科を担当しており、開院以来連日100人を越す小児患者を診察・治療している。しかしながら、検査室の機能が限定されていたため24時間医療体制が確立されておらず、望まれる医療サービスを提供することが出来ないでいた。本件は医療用資機材の購入を通じて同病院の検査室及び血液銀行の機能を拡充し、緊急受け入れ体制の強化を図るとともに提供される医療サービスを質的・量的に充実させることを目的としている。
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8. 評価結果:
(1) |
草の根無償資金によって購入された血液検査用の医療器機と、血液銀行用の医療用資機材は、一つを除いて有効に活用されていた。時機を得てオーストラリア人のボランティア医師が赴任し、3名の病理検査技師の技術指導にあたったことで、各種検査の効率性と精度の向上が極めて有効になされていた。 |
(2) |
以前は血液検査の多くを手作業に頼っており、検査値の信頼性が低く時間もかかっていたが、器機類導入後は正確な血清学的診断や病原体診断が短時間で出来るようになった。検査技師が正確な検査結果を早く提供できることで、医師は効率良く患者の治療にあたれるようになり、検査件数、患者数共に顕著な増加を達成している。使用頻度の高い血液の遠心分離機と加圧蒸気滅菌器が機材購入時のニーズ査定から漏れてしまっていたため、さらなる器機の充実が望まれていた。
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(3) |
同病院のデング熱患者のうち約5%が重症型のデング出血熱に感染しており、経静脈的輸液や輸血などの早期治療が出来ない場合、小児患者の致命率は20-50%になる。今回の検査室・血液銀行設備の拡充で、新鮮全血および新鮮凍結血漿、濃厚血小板が常備でき、デング出血熱患者に適切な早期治療が行えるようになり、同症例の死亡率低下への貢献が期待できる。 |
(4) |
シェムリアップ州における子供の2大疾患は肺炎とデング熱で、特にデング出血熱患者の死亡率が高いことから、医療サービスの向上により適切な早期治療が出来ることは、地域医療の優先事項であった。検査室の拡充計画で各種検査の効率・精度を上げる機材の設置がなされたのは、このような地域医療のニーズに応えたものと評価できる。 |
(5) |
同病院の支援母体である国際NGOは事業資金の約85%を会員および一般からの寄付で賄っている。医療費徴収を中止したことにより、事業運営費の大部分を引き続き寄付に頼ることになるものの、同病院では医療研修プログラムの開発にも取り組んでおり、将来的には研修費用の徴収による財源収入の道も開けている。また、カンボジア人による自主運営を促すために、外国人医療スタッフの削減をし、カンボジア人スタッフの確保と技術指導に力を入れており、自立発展を促進するための努力が評価される。医療器機の維持管理に関しては、現在イギリス人ボランティア専門家を配してあたっており、今後のカンボジア人専門家の養成が期待される。 |
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9. 提言(今後のフォロー・アップ、改善すべき点など):
ボランティア医師の任期が平均1‐2年と短いため、現在の医療スタッフのニーズにもとづき中・長期の設備計画を策定するのが難しい。カンボジア化がさらに進み、専任スタッフへの責任委譲も進むと思われるので、一貫した医療機材整備計画および機材の維持管理が課題となろう。
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10. 外務省からの一言:
自立発展のための事業実施団体の技能向上については外務省も重視しており、技術協力や青年海外協力隊による技術指導のとの連携を検討していきたい。
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