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ムスリム慈善病院眼科医療機材改善計画

1.評価対象プロジェクト名:
 ムスリム慈善病院眼科医療機材改善計画
2.国名:ミャンマー
3. 援助形態:
 草の根無償2000年度、5.2百万円
4. 被供与団体:ムスリム慈善病院
5. 評価者:
 下岡明子 グローバル リンク マネージメント(株) 社会開発部研究員
 小川陽子 グローバル リンク マネージメント(株) 社会開発部研究員
6. 現地調査実施期間:2001年7月22日~8月12日
7. プロジェクトの目的:
 ムスリム慈善病院は1937年の設立以来、主として貧困層への奉仕のために患者の宗教に関係なく治療費・医薬費を含む医療サービスを無料で提供しており、手術などの治療を希望する患者が後を立たない。同病院では、眼科治療を希望する患者が多い中で、手術および検査用機材の老朽化により手術の安全性・効率性が低下していた。本件は安全面や精巧さで充実した新機材の購入を通じて、同病院における眼科手術の安全性と効率性を改善し、眼科系患者の受けるサービスの質を向上させることを目的としている。
8. 評価結果:
(1) 投入された手術用顕微鏡は画像を鮮明に捉えられ、執刀医が足ペダルで操作できるので、衛生的で安全な手術が可能になった。また導入されたばかりの超音波眼球診断器は、白内障患者の眼球診断を瞬時に正確に行うことができ、今後手術に必要な情報が効率良く正確に入手できるようになる見込みが高い。
(2) 機材の搬入後、週20~25人、合計200人(評価時)の白内障患者が手術を受けることが出来た。手術用顕微鏡その他の機材の完備で、1症例あたりの手術時間が5-10分短縮されており、執刀医の負担を軽減することで手術の安全と精度を上げることに貢献している。
(3) 供与機材の購入後も無料サービスの方針は変えておらず、草の根無償資金協力による便益は経済的な困難を抱えている眼科患者に還元されていると評価できる。現在執刀医は1人のみであるが、今後複数の執刀医の確保や医師見習への技術指導及び訓練を充実させることにより、より多くの患者が手術の便益を受けられるようになることが期待される。
(4) ミャンマーでは、推定1500万人の白内障患者がいると言われ、同病院でも眼科患者の約80%が白内障となっている。また、唯一の執刀医であるボランティアの医師が、同病院での限られた時間で平均20‐25症例の手術を正確・安全に行うには精度の高い機材の補助が必要であったことから、草の根無償支援で供与された機材の妥当性は高かったといえる。同病院を利用する患者の90%は貧困者で、噂を聞いて地方から遠路を経て訪問する患者も多く、ヤンゴン市内の総合病院で有料手術を受けられない人々の重要な受け皿となっており、このような慈善事業は、草の根無償資金による支援として非常に意義が高いと考えられる。
(5) イスラム教徒のネットワークを活かし、年間事業運営費の約50%を民間からの寄付で賄うなど、慈善病院としての基盤が確立されているため、今後も貧困層を対象とした事業の持続性が期待できる。高価な医療機器の購入の際には、公共機関や諸外国の政府機関・民間機関の寄付に依存することになるが、同病院は医療機材の輸入業者と良い関係を保っており、保証期間外には修理費割引の特典を受けるなど、維持管理体制も整っている。今後も、より多くの貧困層に対し、アクセスし易い医療サービスの提供が期待される。
9. 提言(今後のフォロー・アップ、改善すべき点など):
 貧困者の眼科患者が無料医療サービスを受けられる病院として、今後一層多くの患者が白内障治療手術を受けられることが期待される。この点、より多くの医師が供与機材を扱えるよう、訓練計画が早急に策定されることが望まれる。
10. 外務省からの一言:
(1) 少ない医師で多くの患者に対応しているため、効率と正確性を上げる医療機材を投入することは妥当な判断だったといえる。
(2) 当該病院は、貧困層に無料で医療サービスを提供している。資金源は各種ドナーからの寄付であり、ドナープレートが院内各所にかけられている。草の根無償資金協力についてもこれからプレートを作成するとのことであった。


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