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インレー湖流域環境共生型農林業訓練センター計画

1.評価対象プロジェクト名:
 インレー湖流域環境共生型農林業訓練センター計画
2.国名:ミャンマー
3. 援助形態:
 草の根無償1998年度/99年度、8.0百万円/9.5百万円
4. 被供与団体:
 カラモジア・インターナショナル
5. 評価者:
 下岡明子 グローバル リンク マネージメント(株) 社会開発部研究員
 小川陽子 グローバル リンク マネージメント(株) 社会開発部研究員
6. 現地調査実施期間:2001年7月22日~8月12日
7. プロジェクトの目的:
 カラモジア・インターナショナルは、環境破壊の進行が進んでいるインレー湖流域において自然と共生できる環境保全型・持続的農林業の普及を目指し、1998年より現地で農業普及活動を展開している。98年度の申請ではデモファームの整備と研修センターの建設、及び研修用機材の購入を行い、循環型農林業普及のための活動基盤整備を目的としていた。99年度の申請は、活動基盤のさらなる充実と拡充を通じて、活動の幅を広げることを目的としている。
8. 評価結果:
(1) 2年間に渡って供与された草の根無償の資金は、事業実施団体が貧困撲滅と環境問題の解決に貢献するために策定した10ヵ年計画のプロジェクト展開に必要な基盤つくりに効果的に投入されている。デモファームは環境保全型・持続的農林業の普及を目的として有効に活用され、タンボジ研修センターは次代を担う農民リーダーの育成のため、ピンダヤ研修センターは農家を対象に、循環型農法のセミナー開催に使われている。
(2) プロジェクト展開の基盤作りは着実に達成されている。カラモジアの活動拠点のインフラ整備がなされたことで、土着菌製造が定期的に行えるようになり、3万本の植林用苗木の栽培が行われるなど、デモファームとしての機能が着実に稼動している。農業研修コースに在籍中の第1期研修生12名は、修了後は出身村で循環型農林業の普及に努める予定であるため、今後の若い農村リーダーとしての活躍が期待される。農業従事者を対象にしたセミナーも軌道に乗ってきており、3回のセミナーを通じて約50名が循環型農林業の理論と実践を習得している。
(3) 本プロジェクトによる循環型農林業の普及活動は、ミャンマー国内で高い評価を受けている。UNDP・FAOを始めとする国連機関やキンニュン第1書記、林業大臣、内務副大臣など政府要人による視察が相次いでおり、普及活動への波及効果が見込まれるだけでなく、高い外交効果が期待できる。また、同事業はミャンマーと九州の間の「農業技術・思想」の交流、青年同士の人的交流などの側面も大切にしており、ミャンマー人の親日感情や日本人の親ミャンマー感情に良い影響を与えている。環境保全型・循環型農林法の普及度・定着度を評価することが今後の課題であろう。
(4) ミャンマー政府はUNDPと共同で人間開発イニシアチブ(HDI)計画を策定し、農村部の環境保全対策と貧困撲滅を推進することを計画しており、その中で、農村型NGOとの連携の道を探ってきた。HDI計画の中には、環境問題への対応策として全国3地点を指定して具体化された「流域管理プロジェクト」があり、本プロジェクトが展開するシャン州インレー湖流域の環境改善と貧困撲滅事業はそのうちの一つである。そのため、本プロジェクトの目標は地域の開発課題との整合性が極めて高い案件である。
(5) 事業実施団体である日本のNGOは、林業省をカウンターパートに10年の長期的な視野をもって活動にあたっている。林業省との間で、10年後にプロジェクトサイトを引渡すという合意があり、ミャンマー人専門家の育成や広域にわたる農民への技術浸透を目指し、自立発展性を持たせる工夫をしており、この点が引き続き今後の課題いえよう。
9. 提言(今後のフォロー・アップ、改善すべき点など):
 前期事業の評価とニーズ査定に基づき次期フェーズの詳細計画が決められるので、事業展開に柔軟性がある。一方、事業開始から2年と間もないこともあり、試験的な活動内容も多い。今後は事業運営の費用対効果も考え、農民のニーズが高い活動に焦点を合わせると、一層充実した事業展開が期待できる。
10. 外務省からの一言:
(1) 事業実施団体の理念・技術がローカルスタッフ、さらには現地住民に正しく理解され、定着しており、自立発展性の高い案件である。
(2) 事業実施団体が指導する農法を実践した農家が、実際に収穫率の向上・増収という目に見える成果を上げていることから、ミャンマー国内での注目度も高く、政府要人等による視察も相次いでおり、外交効果の高い案件である。


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