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ヤンゴン四肢障害者職業訓練施設整備計画

1.評価対象プロジェクト名:
 ヤンゴン四肢障害者職業訓練施設整備計画
2.国名:ミャンマー
3. 援助形態:
 草の根無償2000年度、9.3百万円
4. 被供与団体:難民を助ける会
5. 評価者:
 下岡明子 グローバル リンク マネージメント(株) 社会開発部研究員
 小川陽子 グローバル リンク マネージメント(株) 社会開発部研究員
6. 現地調査実施期間:2001年7月22日~8月12日
7. プロジェクトの目的:
 難民を助ける会は2000年3月より四肢障害者の経済的・社会的自立を目指し「四肢体障害者のための職業訓練プロジェクト」を実施しているが、以前の訓練施設は手狭で、車椅子や松葉杖を使う訓練生が作業上困難を生じたり、転倒したりということがあった。また、男子寮がなかったため、最も遠い生徒は片道2時間かけて通っており、バス乗降中転倒するなど、障害を悪化させる心配もあった。本プロジェクトは、新たに男子宿泊棟及びホールを備えた教室棟1棟の増設を行うことを通じて、職業訓練センターの学習環境を改善させることを目的としている。
8. 評価結果:
(1) 新築された男子寮、訓練室、機材は、訓練・生活活動にフル活用されており、清掃・整理整頓が行き届き、大事に使われている様子が覗えた。
(2) 増築された訓練施設や男子寮のおかげで訓練生の転倒事故などが減り、訓練生が通学途中事故に遭う危険が回避されるようになったことから、草の根無償の支援は、安全・健康面での環境を整えることに大いに貢献したといえる。本プロジェクトでは、頻度の高いカウンセリングサービスを取り入れ、四肢障害者である訓練生のニーズを定期的に拾うことで、訓練環境を常に改善させるための様々な工夫を行っている。修了した訓練生82人のうち、身に付けた技術を使って53人が収入を得られるようになっている。
(3) 同センターにおける職業訓練や寄宿舎活動への参加は、修了生の生活を経済的・社会的に改善させる基礎を確実に築いている。カチン州で道端理髪屋として個人開業をしたノーサンさん(19歳)は、自分の職業に自信が持て、バーバーショップを建てるという目標が出来たという。引きこもりがちであった以前に比べ、顧客も友達も多くなったことを何よりも喜んでいた。ミャンマー国においては、仏教的人生観や迷信など社会的な偏見や差別が広く存在する。その中で、修了生や訓練生と触れる機会のあった人々や家族の偏見が軽減されつつあることも観察されており、本事業が訓練生・修了生に与えうるインパクトの強さが覗える。
(4) ミャンマーでは人口約4,800万人のうち3~5%が障害者と言われている。同事業は、地雷被害者のほかミャンマーに多い交通事故、ポリオなどが原因で四肢障害者となった人々を対象に、社会福祉省の持つ障害者向け職業訓練校だけでは対応しきれない人々の重要な受け入れ口となっており、妥当性の高い案件である。
(5) 事業実施団体である日本のNGOは財務面で安定しており、現地においてもNGOや民間企業との交流や独自の人脈から人材・物資・便宜供与などを上手く活用しているため、事業の継続性は保たれている。本事業の運営や技術的ノウハウをミャンマーに移転することを最終的な目標に掲げているが、現在の時点で障害者支援に配分される国の予算は極めて限られており、事業がミャンマーに根付くまでかなり長い時間がかかるものと思われるところ、当面は、効果の高い事業を行う同団体の障害者職業訓練分野における一層の活躍が期待される。
9. 提言(今後のフォロー・アップ、改善すべき点など):
(1) 施工業者が障害者配慮を施した施設建設になれていなかったため、様々な補正作業を強いられ、また完工後も問題が起こっている。保証期間が切れた後の対処の仕方が懸念される。
(2) 優良な施工業者の選定に関する何らかの対策が必要であると思われる。例えば、日本大使館側で優良な施工業者のリストアップなどを作成するだけでも充分効果的であると思われる。
10. 外務省からの一言:
(1) 訓練生の生き生きとした表情、積極的に技術を修得しようとする姿勢が印象的だった。同施設は、技術指導のみならず必要に応じて訓練生に対するカウンセリングも行っており、自信を喪失しがちな障害者の精神面でのケアに効果をあげている。また、同じ問題を抱える同年代の友人ができることが嬉しい、との感想が複数の訓練生から聞かれた。
(2) 障害者施設の建設にあたっては、今後、業者を選定する段階で、見積りだけでなく障害者施設建設が可能であるかについて厳しく審査するよう、大使館から事業実施団体に指導することで対応したい。


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