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中国・教育条件改善計画

1.評価対象プロジェクト名:
(1)中国・浙江省紹興市新昌県体育場建設計画
(2)中国・江蘇省泰州市特殊学校言語訓練棟建設計画
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2. 国   名: 中華人民共和国
実施機関名: (1)新昌県体育運動委員会
(2)泰州市特殊教育学校
3.援助形態:
(1)平成9年度草の根無償資金協力 85,274ドル
(2)平成10年度草の根無償資金協力 79,271ドル
4.評価実施機関名:在上海総領事館
5.現地調査実施期間:2001年1月5日、2月21日
6.プロジェクトの分野:教育
7.政策目的又は政策の方向性:中国地方都市における教育条件改善
8.当該プロジェクトの目的:
 (1)は、山間部に位置する県の中心となる体育場を整備することにより、(2)は地方の中規模都市に聴覚障害児の特殊学校を建設することにより、地方都市の教育条件を改善する。
9.評価結果:
(1) 新昌県は、紹興市の中で、施設がないために県民運動会を開催することが出来ない唯一の県であったが、県民のスポーツ熱と健康増進を促進することを目的として、体育場建設計画が持ち上がった。従来の計画では簡単なグラウンドを整備するのみであったが、県は本件に対する日本政府からの援助決定を受けて全国レベルの大会を誘致できるよう規格を調整し、市からの資金手当を受けて約5000人を収容できる総合陸上競技場を整備した。今年はここで「全国青少年陸上選手権大会」が開かれることになっており、また、県の重点高校を競技場の隣に移設して体育の授業で利用する他、早朝には老人を中心とした県民の運動や交流の場として、放課後は選手養成のためのスポーツ学校の場として無料で開放するなど、日常的な利用率も十分に高まっていることが確認された。
(2) 当初の計画どおり、聴覚障害児のための語学訓練棟が完成し、9年の義務教育対象児童約120名に対し、教師26名により、普通の授業と言語訓練を組み合わせた極めてきめ細かい授業が行われている。本件の援助決定を受けて県は資金を補填して宿舎を建設し、生徒全員が寄宿生活を行って自立のための社会訓練を受けている。昨年の卒業生14名は全員が地元の工場へ就職したが、今後は高等教育機関への進学の道を開くため、今年秋を目途に高等部の設立を申請している。また、視覚障害児教育を既に開始し、障害児の回復率を高めるために学齢前(3~6歳)の特殊教育にも近く着手するとしており、地域の中核的特殊教育機関になっていることが確認された。
10.提言:
 (1)は、裨益者の範囲が不特定多数の公共施設の建設により、(2)は比較的限られた範囲の社会的弱者を対象とした教育施設の建設により、地方都市の教育条件を整備するとの所期の目標は十分に達成されている。これら2件を含む最近の傾向として、日本政府からの援助決定を契機として地元政府が予算措置を講じて付属施設を建設するなどしてプロジェクトの運営が拡充される例が多く見られる。今後は、こうした草の根無償協力の「呼び水」としての役割を最大限に発揮させ、将来像を描きつつ地元政府と綿密な連携を取ることにより、より有意義なプロジェクトを作り出すことが必要と言える。
(3)上海総領事館の管轄地域の大部分は、中国においても比較的経済発展が進んだ沿岸部に位置するが、「条件のある者からまず豊かに」という改革・開放政策の結果、都市と農村の生活水準の格差拡大、都市部における貧困層の出現等により、「草の根無償」の対象は普遍的に存在している。また、草の根無償は地元レベルでは、「利民工程」の名称でかなり浸透しており、目に見える援助としての役割は益々高まるものと思われる。
11.本省からの一言:
 昨年4月にセネガルで開催された「世界教育フォーラム」の際に採択された「ダカール行動枠組み」の目標達成(初等無償教育の全面普及、男女格差是正等)に向け、我が国としても基礎教育分野に積極的に支援していく考え。さらに、今回のケースのようにNGOとの連携において高い効果の上がったプロジェクトは、ベストプラクティスとして今後のプロジェクトの参考としたい。


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