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中国・都市環境整備計画

1.評価対象プロジェクト・プログラム名:都市環境整備計画(注1)
(クリックすると画像が変わります)
2. 国   名:中国
実施機関名:柳州市、内モンゴル自治区、蘭州市
3. 援助形態: (1) 柳州酸性雨及び環境対策総合整備計画
プロジェクト借款/96年度/2,300百万円
(2) フフホト・包頭大気汚染対策計画
プロジェクト借款/96年度/10,000百万円
(3) 蘭州環境整備計画
プロジェクト借款/96年度/7,700百万円
4.評価実施機関名:在中国日本大使館
 (現地コンサルタントによる評価)
5.現地調査実施期間:2001年2月27日~3月27日
6.プロジェクト・プログラムの分野:環境
7.政策目的又は政策の方向性:中国及び東アジア地域の環境問題を解決するための協力を行うと同時に、日中善隣友好関係を深める。
8.当該プロジェクト・プログラムの目的:
 都市環境改善を図るため、ガス供給事業、熱供給事業、ゴミ処理場建設、汚水処理事業、上水道拡張事業及び非公共の各種工場における環境改善事業を行うとともに、環境改善の一助とするため環境モニタリング機器・公害対策の研究機器の充実を行うもの。本計画は、柳州市、フフホト市、包頭市及び蘭州市を対象都市として、21項目の環境改善事業を実施するものである。(別表参照)
9.評価結果:
(1) 妥当性
 都市環境整備計画は対中経済協力の重点分野である環境分野の協力案件であり、中国の都市環境改善を目的とし、東アジア地域の環境改善に資し、日中善隣友好を促進するものである。環境保全を基本的な国策とする中国は、1996年から、都市環境総合整備及び定量的考査制度を実施し、都市環境改善に力を入れている。柳州市、フフホト市、包頭市及び蘭州市はいずれも都市環境整備計画を立て、計画実施のための資金を調達している。各サブプロジェクトは中国のニーズや技術水準と合致している。
(2) 目標達成度・成果
 本計画は合計21項目のサブプロジェクトからなるが、完成と試運転中6項目、実施中14項目、産業構造調整のため、未着工1項目である。事業は順調に進んでいて、実施期間中に19項目、2004年までに1項目が完成する見込みである。
 これまでの成果としては、(A)汚染物質排出量の低減等による都市環境の改善が見られた。例えば、本計画を契機に都市エネルギー転換が加速され、二酸化硫黄の排出量が低減した。具体的には、本計画の対象となっている柳州市、蘭州市及びフフホト市における2000年の大気中の二酸化硫黄の濃度は1995年と比べると、それぞれ59.5%、32.9%及び63.4%低減しており、また、包頭市においても、1996年より8.9%低減した。(B)本件円借款プロジェクトを契機として中国側の資金調達も促進され、環境改善のための自主努力が奨励された。(C)東アジア環境対策(とりわけ酸性雨対策)に資した。特に、柳州市の酸性雨対策は極めて顕著な効果があり、酸性雨発生率が1995年の84.6%から2000年の1%に低減し、降水のpHが4.19から6.25に上昇し、五年の間、酸性雨はほとんど発生しなかった。(D)中国環境政策及び西部大開発戦略と合致する対中環境協力として中国政府関係者の好評を得た。(E)中国都市環境総合整備を加速し、市民は民生事業の恵みを実感した。(F)環境プロジェクトの実施によって、日本援助に対する市民の認識が広がり、日中善隣友好を深めたことが挙げられる。
 本計画の対象になっている四都市における過去五年間の環境の改善(別図1~図4参照)は、国及び地方政府による環境管理の強化、各種の防止対策の実施、環境投入の増加及び経済成長の本質的な改善などの要因による総合的な働きの結果であるが、我が国の協力による円借款プロジェクトの実施期間が中国「第九次五カ年計画期間」(注2)と合致していること、また、各円借款プロジェクトの主要汚染物質削減に対する効果と中国側の努力とがあいまって、本プログラムは対象都市の環境改善に大いに貢献していると思われる。
10.提言(今後のフォロー・アップ、改善すべき点、政策的な観点からの提言):
(1) 今後とも、環境協力を対中経済協力の重点分野とする必要がある。
(2) 2000年から、中国は「西部大開発戦略」を執行し、内陸部の経済成長、汚染防止・生態保護を重視している。今後の対中経済協力についても内陸部における環境保護などの重要性を考慮する必要がある。
11.本省からの一言:
 中国の環境問題は、隣国である我が国にも大きな影響を及ぼし、環境分野での日中協力を推進することは、我が国にも大きな利益となる。今後も本件のような環境協力を進めていくことが重要。
注1: 本評価は未だ実施中の計画を評価したものである。
注2: 1996年から2000年までの「第九次五カ年計画期間」は中国環境保全事業における第一回目の汚染対策キャンペーンの時期である。この期間に、中国政府は一連の総合的環境保全措置を実施した。主要汚染物質の総量規制計画、工業企業汚染物質の排出基準達成計画及び都市の環境機能区基準達成計画などの計画は顕著な成果をあげ、全国の汚染物質排出総量は1970年代からの初めてのマイナス成長となっている。


<表>サブプロジェクトの事業概要
事業名 サブプロジェクト 事業概要
1.柳州酸性雨及び環境汚染総合整備 都市ガス供給事業 既存ガスプラントの供給量 を増加させて都市ガスを供給するほか、LPGの供給施設の能力を引き上げることにより、ガス利用率を高める。
ゴミ処理場建設事業 ゴミ埋立処分場を建設する。
コークス炉ガス脱硫 コークス炉ガス精製装置の能力不足を補い、併せて、排水処理を行うための設備を設置し、大気汚染物質及び水質汚濁物質の排出削減を図る。
工場排気ガス処理事業 工場の硝酸製造工程に排ガス処理装置を設置し、大気汚染物質の排出削減を図る。

















都市ガス供給事業 ガスパイプラインを敷設し、市内にガスを供給する。
熱供給事業 熱水製造工場を建設するとともに、同工場で発生した熱水を供給するための施設を建設し、市内に熱を供給する。
炭化カルシウム炉移転更新 老朽化した炉を移転して更新し、大気汚染物質の排出削減を図る。
工場廃水処理 排水の量を減らすため製造工程を改善するとともに、新しい廃水処理設備を建設し、処理後の廃水が環境基準に合致するようにする。
工場ボイラー更新 老朽化したボイラーを新しいボイラーと代替し併せて発電を行うことにより、大気汚染物質の排出削減を図る。
工場廃水処理 旧式化した排水処理工程を更新し、排水、汚染物質の排出量 削減を図る。





都市ガス供給事業 ガス製造プラントを新設し、合わせて対応するガスパイプラインを敷設し、市内に都市ガスを供給する。
熱供給事業 熱水製造工場に熱供給用ボイラーを増設するとともに、発生した熱を供給するための施設を建設し、市内に熱を供給する。
環境モニタリング設備購入 モニタリング施設の更新及び導入により、モニタリングセンターを充実させるとともに、研究設備を拡充する。
工場排気処理 旧式化している工場の移転新設により大気汚染物質及び水質汚濁物質の排出削減を図る。
工場移転 都市部にある工場を移転するとともに、工程改造を行い、都市部環境への負荷の低減を図る。
石炭灰利用 石炭燃焼により発生する灰を原料にブロックを製造するプラントを建設し、同石炭灰による環境負荷の低減を図る。
COガス回収 空中に放散されている炉からのCOガスを回収、利用する設備を設置し、エネルギーの効率的利用及び大気汚染物質の排出削減を図る。
蘭州環境整備 都市ガス供給事業 既存ガスプラントの供給能力に対応するガスパイプラインを敷設することで、市内の都市ガスの供給を増強し、消費される石炭量 を削減する。
熱供給事業 既存熱電プラントに対応する熱供給パイプラインを敷設し、市内に熱を供給することで、消費される石炭量 を削減する。
汚水処理事業 汚水処理場を建設するとともに下水管網を建設し、汚水を処理する。
上水道拡充事業 既存の浄水場を拡充するとともに、配水管網等を建設する。


図1 柳州市95-2000年主要汚染物質濃度経年変化
図1 柳州市95-2000年主要汚染物質濃度経年変化

図2 蘭州市95-2000年主要大気汚染物質濃度経年変化
図2 蘭州市95-2000年主要大気汚染物質濃度経年変化

図3 フフホト市95-2000年主要汚染物質濃度経年変化
図3 フフホト市95-2000年主要汚染物質濃度経年変化

図4 包頭市95-2000年主要汚染物質濃度経年変化
図4 包頭市95-2000年主要汚染物質濃度経年変化


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