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中国・国家水害防止総指揮部指揮自動化システム

1.評価対象プロジェクト・プログラム名:
 国家水害防止総指揮部指揮自動化システム
(クリックすると画像が変わります)
2. 国   名:中国
実施機関名:水利部、国家水害防止総指揮部
3.援助形式:プロジェクト方式技術協力
 長期専門家派遣 7名、短期専門家派遣 39名
 研修員受入事業 21名
 実施期間:93年度~2000年度
4.現地調査実施機関名:在中国大使館
5.現地調査実施期間:2001年3月21日
6.プロジェクト・プログラムの分野:水利・治水
7.政策目的又は政策の方向性:
 治水インフラ整備による水害被害の低減
8.当該プロジェクト・プログラムの目的:
 中国では人口や耕地、交通幹線の集中する大河川下流域がしばしば洪水被害を受けて国家経済に与える影響が甚大であるため、洪水の防止と被害の軽減が国の重要課題とされてきた。しかしながら、国家水害防止総指揮部の指揮システムが旧式で、迅速な対応が難しいことから、中国政府は1990年、洪水予報で進んだ技術を持つ我が国に、効率的な水害防止指揮自動化システムの確立と、洪水予報官の養成を目的とするプロジェクト方式技術協力を求めてきた。
9.評価結果:
 今回の協力を通じ、下記事項の成果が得られた。
(1) 本プロジェクトによって構築された「中央水害防止情報システム」は、1998年6月~9月の長江をはじめとする全国的な大洪水時に河川情報の収集・伝達・処理・提示の自動化による洪水状況監視に用いられ、国家水害防止総指揮部弁公室への品質の高い情報提供サービスを通して的確な水防指揮に貢献した。
(中国側の推定によるとプロジェクトの効果を含めて、1998年の洪水防止活動における適時で正確な洪水情報予測による全国での洪水損失軽減効果は800億人民元)。
(2) 本プロジェクトによって構築された「章衛南運河流域河川情報伝達システム」は、1996年8月の同流域の歴史的な大洪水に際し、章衛南運河管理局への雨量、流量、水位等の河川情報伝達及び各組織間の連絡を悪天候に左右されずに行うことができ、章衛南運河管理局の的確な水害対応に貢献している。
(「有線回線を使っての人力によるデータ記録送信」→「無線方式のテレメータ自動化システム」)
(3) 複数モデルによる「予測結果選択システム」という中国で初めてのシステムを実用化することにより、予測が困難な中国北部半乾燥地域の洪水予測の課題を克服するとともに、他流域の課題を解決できる技術も移転した。
10.提言(今後のフォローアップ、改善すべき点、政策的な観点からの提言):
 本分野に拘わらず、水利分野における協力を行っていくことは、中国政府が非常に重要視していることである。さらに、日中の経済的側面からみた場合、非常に重要な意味を持つ。水は生産活動に欠かせない資源である。今後の中国のWTO加盟に伴い経済的な結びつきが今以上に強まり、国際的分業がより進む。日本企業の生産拠点の中国への進出、中国製品の日本への輸入は形を変えた「水資源の輸入」を意味する。また、洪水から経済・社会的財産を守ることは安定的な相互依存関係を維持する上で必要である。
11.外務省からの一言:
 水利分野における協力の重要性については認識しており、このプロジェクトにて移転した技術を全国レベルに普及するために、2000年7月から新規のプロジェクト方式技術協力「中国水利人材養成」を実施している。


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