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中国・北京市地下鉄建設事業

1.評価対象プロジェクト:北京市地下鉄建設事業

 (参考視察プロジェクト:北京市地下鉄第二期建設事業)

(クリックすると画像が変わります)
2.国名:中国
3.援助形態:有償資金協力、88~89年度、40億円
 (参考:有償資金協力、91~94年度、156.8億円)
4.評価者:伊能忠敏 金沢工業大学教授
5.評価実施期間:1999年10月19日~26日
6.プロジェクトの分野:運輸・交通
7.プロジェクトの目的:
 北京市内の交通はバスに大きく依存しているが、80年代後半、乗用車、自転車の利用台数が大幅に増加したことから著しい交通渋滞が発生し、効率的な公共交通手段の確保が急務であった。本件は、北京市地下鉄1号線を復興門・西単間(1.4km)延長し、かかる北京市の交通需要増加に対応するもの。
8.評価結果:
(1)「北京市地下鉄建設事業」
 計画通り実施され、北京市西方から市街地へと延びる1号線が西単まで延長された。他の交通機関等への乗り換え無しに直接繁華街にアクセスできるようになったことから、通勤や買い物等、多くの乗客に利用されている(一日あたりの利用客数:約50万人)。
(2)「北京市地下鉄第二期建設事業」(参考視察プロジェクト)
 「北京市地下鉄建設事業」により西単まで延長された1号線をさらに四恵東まで(約11km)延長し、さらなる都市交通の改善を目的とする。99年9月末、中国建国50周年記念にあわせ、時期を繰り上げて部分的に開通したが、通信設備関連の工事が未了のため、試験的に運行されているが、正式開通により既存路線との直通運転が行われるようになれば、乗客の増加が期待される。(99年10月時点)
 「北京市地下鉄第二期建設事業」では、最新式の車両が導入されているが、維持管理には技術訓練が不可欠である。(営団地下鉄が技術指導を実施している。)
9.提言(今後のフォローアップ、改善すべき点等):
(1)車両の乗り心地、駅設備、乗換え施設等に更なる改善の余地が認められることから、今後実施される案件については、設計段階よりコンサルタントを活用することが望ましい。
(2)都市交通の整備に向けて、地下鉄及び国鉄の一層の連携が必要である。
(3)渋滞緩和及び排気ガスによる大気汚染を改善するため、公共交通機関の一層の整備が急務である。高架鉄道や路面電車の導入が望ましい。
10.外務省からの一言:
 評価時点では部分的な試運転であった1号線(苹果園~復興門~建国門~四恵東)ですが、2000年6月28日に全線開通し、1号線と環状線の乗り換えも可能となりました。北京のローカル各紙でも開通の記事は大きく取り上げられました。朝5時10分の始発から22時55分の最終まで、庶民の通勤、通学、買い物の足として、また中国のシンボルである天安門広場や故宮の足元を通る観光路線として利用されることが期待されています。
 実施機関の北京市地下鉄総公司によれば、1時間当たりの平均乗客輸送人数は試運転時の4千~5千人であったものが、今回の全線開通により2万7千~2万8千人に急増する見込みです(中国公式英字紙China Daily 6月28日付け)。
 去る6月5日には、谷野作太郎在中国大使が劉淇(りゅうき)・北京市長と会見し、今後の日本と北京との協力関係に関して意見交換を行いましたが、その際にも劉淇市長からは今回の地下鉄建設も含めた北京市に対する日本のODAは市民生活に大変役立っているとの謝意が述べられました。谷野大使からは、このように市民生活に密着する施設が日本のODAにより建設されていることがもっと広く北京市民に知られることを希望することを述べました。
なお、この評価報告は評価者が第3者である個人の責任において作成したもので 、外務省の意見ではありません。

北京地下鉄略図

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