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評価概要



1. 評価の目的と評価対象国の選定

 国別評価は、我が国援助の主要受取国について、我が国援助を国全体や主要援助分野・地域単位等の観点から総合的に分析・検証し、援助が総体として評価対象国の経済開発及び民生向上にいかなる成果を上げているかを評価するとともに、評価結果から導き出される教訓・提言を関係者にフィードバックすることにより、当該国に対する援助政策策定及び援助供与に資することを目的とする。
 国別評価の対象国は、(1)我が国援助の主要受取国である、(2)我が国がトップドナーである、(3)今後の我が国援助政策について検討することが必要である、の何れかの条件を満たす国の中から、地域的に偏重することなく適切なタイミングで実施されるように過去の国別評価実績及び当該国の経済・社会情勢に配慮しながら選定される。
 今回は、アフリカ地域における我が国援助の主要受取国であり、以前の国別評価から10年以上経過しているザンビア共和国を対象国として選定し評価調査を実施した。

2. 評価分野の選定

 国別評価においては、(1)対象国に対する我が国援助の重点的援助分野である、(2)対象国にとって開発優先度の高い分野である、(3)我が国援助の実施プロジェクト数が相対的に多い分野である、の何れかの条件を満たす援助対象分野の中から、対象国に対する我が国の援助方針・政策、対象国における開発ニーズ等を勘案し、通常、3ないし4分野の「評価を実施するにあたっての重点分野」が選定される。今回の評価調査にあたっては、ザンビア共和国の開発計画上優先度が高く、我が国援助の実施プロジェクト数が相対的に多い農業、保健、教育及び基礎インフラ分野を評価対象として選定した。

3. 我が国の対ザンビア援助の概況

 1993年から1999年までの我が国の対ザンビアODA援助累計額は、無償・技術協力を合わせて409.86百万ドルであり1995年には二国間ベースで最大の援助供与国であった。
 最近の援助額を見ると、日本はザンビアにとり最も大きな援助国の一つ(95-98年ではドナー援助の約14%で旧統治国である英国の約18%に次いで第2位)である。我が国は、1999年には約56百万ドルの援助を供与しており、1998年にはIDA等の援助機関からの援助が逓減していることからも、我が国の対ザンビア援助はドナーの中でも重要度を増していると言える。また、我が国の対ザンビア援助対象は建設、農業、水資源開発、教育、医療、公衆衛生、基礎インフラ等広範な分野をカバーしている。

4. 我が国の援助に対する評価

 ザンビアは数多くの開発問題を抱えるため、マクロ経済レベルで我が国の対ザンビア援助の定量評価を行うことは容易でない。しかし、農業、保健、教育、基礎インフラ等の分野においてははっきりとした援助効果がみられる。従って、我が国の援助は相対的に有効に活用されており、ザンビアの経済開発及び貧困削減に貢献し、ザンビア国民の生活向上に役立ったと考えられる。また、我が国の対ザンビア援助は幅広くザンビア政府・ザンビア国民からも評価されている。例えば、カルンバ大蔵・経済開発大臣は、我が国のバランスのとれた援助はザンビア国民の人造りに大きく貢献したとの見解を示している。

 分野毎の我が国援助の具体的な効果としては、次の通りである。

(1)農業分野

 我が国のザンビアへの農業援助は農村道路の整備、穀物倉庫の拡充を通じて食糧増産及び地方部での生産性向上に寄与すると共に農村住民の所得及び雇用機会の増加に対して非常に効果的であった。家畜開発についてもザンビア大学獣医学部への技術協力により多大なる寄与が認められる。評価調査団としては、作物多様化並びに地方部小農にたいする更なる支援の必要性を認識している。
 ザンビアは農業についての潜在的発展可能性が高く、自然資源の有効活用をさらに促進すべきである。このためには、土質の低下をもたらす従来からの化学肥料を使用した農業から有機農業への転換も必要である。

(2)保健分野

 保健分野における我が国の援助は、医療専門家の育成に貢献したと言える。同時に、同分野の開発をより効果的に実施するためには、一層の人的資源開発・財源増の必要性が認識される。
 保健分野での援助の中で、ザンビア大学教育学院(UTH)へは1981年以降、総額58.2億円が供与されており、プライマリ・ヘルス・ケア(PHC)、並びに母子保健技術の向上に継続的な支援が行われている。ザンビアの保健レベルの向上に一層資するため、我が国ODAで供与された設備、機器適切な維持管理の必要性、ルサカ市プライマリ・ヘルス・ケア(PHC)プロジェクトとザンビア大学教育病院(UTH)プロジェクトの効果的な連携の必要性及び地方部での人的資源開発の強化が今後必要であると考える。

(3)教育分野

 教育分野における我が国の対ザンビア援助は小中学校建設が主となっており、マヘバ、ルコナ、ジンバ地区で4校の教育施設を建設したことにより就学児童数の大幅な増加が達成されると共に、高等学校への進学率の上昇をもたらした。
 我が国の援助は、初等教育並び中等教育の拡充に多大な貢献があったと認められる。近年、上述の4校の中学校が建設され、さらに8校のベーシック・スクール(小中学校)が建設中であり、学校教育施設の量的拡充に大きく貢献している。
 ザンビアの基礎教育投資計画(BESSIP)によれば教育施設の量的拡充のみならず、教育の質的向上も重要であることから、今後はキャパシティー・ビルディング(能力開発)を強化する必要性があると考える。

(4)基礎インフラ分野

 我が国援助は、水資源開発及び道路網整備等を通じ、ザンビアの経済及び社会インフラ開発に貢献した。近年では、我が国はベーシック・ヒューマン・ニーズ(人間の基本的ニーズ)の充足を目指した社会インフラ開発を重点とし、ザンビア国民とりわけ貧困層の社会インフラへのアクセスを容易とすることにより、国民の生活水準の向上に貢献している。
 ルサカ市道路網整備計画では65kmに及ぶ道路の補修が実施された結果、大型車の通行が容易になり商品流通へ貢献し、住民の経済・医療活動へのアクセス能力の向上に役立っている。
 ルサカ市周辺地区給水計画はプロジェクトの実施により約12万人の住民が裨益し、一日に世帯当たり7リットルの水が得られていた状態から、一日当たり70リットルの水を得ることができるようになった。南部州地方給水計画の実施についても、裨益住民の一日当たり10リットルの水が得られていた状態から、現在では20~30リットルの水を得ることができるようになった。
 社会インフラ分野のプロジェクトでは自立発展性の確保に対して住民の積極的な関与が必要となることから、一層の住民からの協力が期待される。

5. 提言

 今回の国別評価結果を踏まえ、我が国援助の全体展望を策定していく上で留意すべき点は以下の通りである。

(1)貧困削減への取り組み

 我が国の対ザンビア援助は引き続き貧困削減に重点を置くべきである。この関連で、地方農村開発への支援は特に検討が必要である。また、これまでの経験及び予期されるインパクトを考慮すると、農業、教育、医療、公衆衛生及び社会福祉等の分野が我が国の重点分野として挙げられるべきである。

(2)農村開発及び農業開発に対する支援

 農村開発及び農業開発を達成する上で、小農の生産性向上への援助、農業開発計画策定支援、農業生産性向上・農業技術定着への支援及び農業投入財導入のためのマクロクレジットへの支援が検討されるよう。

(3)HIV/AIDS対策

 HIV/AIDS問題はザンビア国の開発にとって、健康上の問題のみならず社会経済的な問題として捉えることが肝要である。この観点から、HIV/AIDS対策へは優先的に援助を実施すべきと考える。また、HIV/AIDS対策以外としてはプライマリ・ヘルス・ケア(PHC)に対する支援の拡充が考えられる。

(4)ベーシック・ヒューマン・ニーズとしての社会インフラ開発

 国民が最低限の生活水準を維持するため、また、貧困削減のためにも、医療クリニック、医療ポスト、病院、学校及び農村道路等の必要不可欠な社会インフラが一層拡充されるべきである。

(5)教育

 基礎教育の質的向上を一層推進すべきである。これに関連し、教員養成を行うことが非常に効果的であると考える。

(6)キャパシティー・ビルディング(能力開発)及び技術移転の必要性

 我が国の今までの援助経験から、アフリカ地域での援助を成功させるためには、キャパシティー・ビルディングが必要である。長期的には、キャパシティー・ビルディング及び技術的ノウハウの移転はザンビアにとって大きな効果を上げる。

(7)ドナー間の調整の必要性

 他のドナーとの協力関係を促進していくべきである。このドナー間の協力関係の結果、我が国と他のドナーとの共同プロジェクトが生産的な成果を上げている。この成功例として、国境地域HIV/AIDS予防日本―米国共同プロジェクト等がある。
 我が国は、「オーナーシップ」及び「パートナーシップ」を基本理念としたセクター・プログラム(SP)アプローチを支持し、その促進への積極的な議論に関与していくべきである。

(8)NGOとの連携促進

 NGOとの連携は効果的な開発援助を実施する上で肝要である。一般的に、NGOの活動はヘルスケア、公衆衛生、人的資源開発及び環境保護等の分野で有効であり、これらの分野はザンビアにとっても重要である。ザンビアのNGOとの連携強化が強く推奨される。

(9)オーナーシップ

 より効果的な開発援助の実施のためにはザンビア国民が案件に対する当事者意識を持つことが極めて重要である。この点で、ジョージ・コンパウンドのPHCプロジェクトは非常に効果的である。

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