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第4章 教訓と提言

4.1 目的/妥当性からの教訓・提言

(1)モロッコ政府による水資源開発計画の見直しを受けて、今後の表流水・地下水開発支援の方向性を探る。

水を何に優先的に使ったらよいか、モロッコ国内でも論議がある中での水分野への協力であり、国家水計画がモロッコで作成されている途中であることから、今後は同計画との整合性を取りつつ日本の援助政策を策定していく必要がある。

同計画の内容については未だ定かではないが、近年の渇水の影響を受け、既存の流域別水資源開発計画に記載されている水資源開発可能量が下方修正される可能性が高い。従って、今後の大規模灌漑案件に対する協力、大・中規模ダムに関する協力については特に、国家水計画を踏まえ、その必要性と代替案を吟味していくことが重要となろう。

(2)需要管理、制度・組織改革に対する支援を今後の重点分野に加えるか否か検討する。

開発可能な水資源賦存量の漸減、地下水の過剰な開発による枯渇、ダムの堆砂、全国レベルでの水質悪化の進行を背景に、モロッコが水の供給力強化のみならず今後一段と水の需要管理に注力していくものと想定される。その内容も漏水防止といった技術的な内容から、一般市民への節水意識の啓蒙、料金制度、水行政(特に流域管理局による)の能力強化等、多岐にわたることになる。

特に制度・組織改革への支援に関しては主要他ドナーが一歩先んじている。短期的に成果を上げにくい支援ではあるものの、日本のODAの持つ様々なスキームの中で、専門家派遣、研修事業等を通じ、水資源開発・管理のための組織制度の整備を視野に入れつつ、今後の水関連案件を立案していくことが望ましい。

(3)中規模都市の下水道施設整備に対する支援を今後の重点分野に加えるか否か検討する。

我が国及び他ドナーの支援を受け中規模都市で上水道整備が進む一方、下水道整備の進捗が遅れている。人口増加、特に都市への人口の集中による生活排水増加が水質汚染や生活環境の悪化を加速させており、早急な対応が望まれる。また下水道事業に参入可能となった水道公社(ONEP)が管轄区域をカバーする投資計画を立案していることもあり、これらに対する支援の可能性を検討すべきである。

4.2 プロセス/適切性からの教訓・提言

(4)大使館・実施機関と、現地政府・NGO・他ドナーとの協議を強化する。

現地政府とは要請に基づく個別案件ベースでの協議は適切に行われている。しかしながら、当該分野支援の政策に係る協議は、政策協議以外にはなされていない。

今後は個別課題に対する支援から、モロッコの水分野を広く見据えて政策レベルの課題も抽出し、解決にあたるアプローチが有効になると考えられる。2003年に発足した現地ODAタスクフォースが、現地政府のみならずNGOや他ドナーを含め幅広く連携・協議を強化していくことが期待される。

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