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第4章 提言

 前章における評価の結果を踏まえて、今後の我が国の対インド援助政策の策定・実施の改善にむけて、以下を提案する。

提言1:インド政府との公式協議において国別援助方針(今後は国別援助計画)を活用し、日本の援助政策・方針を周知する。

 我が国の対インド援助方針は、ODA大綱及び中期政策が示す我が国援助の大枠の中に位置づけられ、かつ、適切な過程を経て策定・実施された。当援助方針は本評価対象期間中のみならず、期間後も引き続き我が国の対インド協力の方向性を示す指針として重要な役割を担っていくべきものと考える。事実、現地でのインド政府との政策協議に向けた対処方針を作成し、その内容を今後策定予定の対インド国別援助計画に反映させることを主な活動目的とした、在印ODAタスクフォースが結成された(2003年4月)。しかしながら、現地ヒアリングによると、インド財務省等を除くライン省庁の8割が日本の対インド国別援助方針を認知していなかったことが、明らかになった。要請主義を採用している日本が、限られたODA予算内で効率的な支援を行っていくためには、優良案件の形成が不可欠である。そのためには、インド政府の各省庁が自らの分野において、日本がどのような援助方針を有しているかを知る必要がある。従って、日本としてもインド政府のライン省庁、ひいては、州政府に我が国援助方針の一層の浸透をはかるべきである。

提言2:特に、電力分野への支援を強化する。例えば、電力分野における、事業効率性改善、組織改革、経営改革、及び人材育成・キャパシティビルディングを充実させていく。電力分野への支援においては、ハードとソフトを組み合わせることによる相乗効果の創出を目的とした取り組みを実施しつつあり、そのようなニーズへの一層の対応を図る。

 電力分野における日本の援助へのインド側のニーズは大きく、かつ、今後も大きいと予想される。電力分野においては、5カ年計画において、新規発電所建設に加えて既存施設の運営効率化の改善の必要性が述べられている。日本はこれまでも、セクター改革への姿勢が明確な州における積極的な案件形成や、発電所の環境配慮手法の構築及び改善措置についての提言、また送配電ロス低減や業務効率化のための担当機関のキャパシティー強化を目的とした調査等により、ソフト面からの電力セクター支援を行ってきている。最近の要請案件においても効率化改善が含まれており、具体的には、インド政府は、日本に対して、電力分野への資金供与に併せて料金設定や制度に関する助言等の技術援助を要求している。特に電力分野においては、日本は既にリーディングドナーとしての地位を築いており、当分野における今後の日本の活動に対する、インド政府及び他ドナーからの期待は大きい。

提言3:我が国援助の重点分野については、我が国の上位政策、これまでのインドへの協力実績、インド側からの要請、インドの社会・経済及び開発動向、他ドナーの協力分野と動向等を総合的に勘案した上で、重点分野の再検討を行う。

 我が国の対インド援助実績(インプット及びアウトプット)を見ると、重点分野によって金額、件数及び人数にばらつきがあった。この期間はインドの核実験に対する新規援助停止措置という特殊要因もあることから、この間の実績や要請が少ないことを以て重点分野の適切性を一概に論じることはできない。しかし、対インド国別援助計画策定においては、我が国の援助方針及びインド側のニーズを的確に反映するためにも、我が国の上位政策、援助実績、インド側からの要請、インドの社会・経済及び開発動向、他ドナーの協力分野と動向などを総合的に勘案して重点分野の検討を行うのが望ましい。特に、我が国の援助額が減少傾向にある中で、「選択と集中」という観点から、優先分野を選択することも検討されるべきである。

提言4:国別援助政策の検証体制を整備するために、今後策定予定の国別援助計画に評価の実施を明記する。

 ODA中期政策には、評価システムの構築が言及されている。近年、外務省改革に関する「変える会」の文書や新ODA大綱にも評価の実施について言及されている。また、他ドナーの援助政策においても、評価システムの構築が言及されているのみならず、実際に制度として評価が機能しているケースも見られる。このような状況の中、我が国対インド国別援助方針という政策の実行を定期的に評価する体制を整備するために、まず、今後策定予定の国別援助計画に評価の実施を明記することが必要である。個々の事業レベルでの目標の達成度合いのみならず、地域、環境、マクロ経済などへの影響を含めた総合的な評価が必要である。


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