8.2 IDIに向けての提言
2001年の「九州・沖縄サミット」において発表された「沖縄感染症イニシアティブ」(IDI)では、今後5年間に30億ドルを目途として、感染症(HIV/AIDS、結核、マラリア・寄生虫、ポリオ)、公衆衛生の推進、研究ネットワークの構築、基礎教育、水供給の分野の協力を強化、実施していくこととなっている。IDIとGIIとの類似性が高い4ことから、GIIの評価から得られた提言は、IDIの各側面の改善に貢献することが期待される。
援助の現場で、GII評価から得られた提言がIDIの推進のために活用しやすいように、提言を以下の観点から整理した。
GIIの評価から得られた最大の教訓は、援助効果を拡大するためにはGIIに戦略性を持たせるべきであったということである。戦略性がなかったことに起因した課題については、すでに本報告書の複数の箇所で言及されている。このことから提言においては、戦略の「策定」を必須の対処事項と位置づけた。次に重要となるのは、戦略をどう「運営」すべきかという点である。したがって、以下においては、戦略について「策定」と「運営」の2つの領域からの提言を示している。
また、現状では、援助の重点分野において個別プロジェクトが散発的に実施されている5ため、開発課題の解決のための資源の有効活用という観点からは効率性が十分に確保されにくい。また、個別プロジェクトの散発的な実施は、効果の増大にもつながりにくい。これらの課題への対処策としては、プログラムに基づく援助実施が挙げられる。保健セクター全体に対する援助の実施方法としては、上記したように目標達成のために戦略を策定し、それに基づき、プログラムを配置し、さらにプログラムの中の構成要素としてのプロジェクトを配置していくこととなる。この考え方に基づき、以下では、プログラムおよびプロジェクトについても「策定」と「運営」の領域からの提言を示した。プロジェクトに関しては、「運営」にかかる提言が複数あるため、別途示した。
提言の中には、具体的行動案も含まれている。なお、具体的行動計画は評価者のみでなく、評価結果を受けて援助関係行政機関が作成し、実現性のあるものとすることが望ましい。
4 2つのイニシアティブは以下の点で類似性が高い。1)緊急を要する感染症対策への協力である、2)具体的な対象分野がGIIと複数重複している、3)各種援助形態による実施を推進する。
5 「散発的な実施」は、要請主義に起因するところもある。