第4章 評価方法
4-1 評価に当たっての基本的な考え方
(1) より政策レベルに近いレベルでの評価
本調査においては、前述の経緯も踏まえ、京都イニシアティブを中心とする温暖化対策ODAを政策レベルにより近いプログラムとして捉えた上で、総合的な評価を行った。
従来、ODAに限らず我が国の行政施策は、上位計画はあるもののプロジェクト単位での実施・管理が主流を成してきた経緯がある。しかしながら、多様化する経済情勢や行政の効率化の追求などの潮流もあり、より総合的な施策実施が求められるようになってきている。ODAにおいても、その目標が被援助国の経済的発展の支援にとどまらず、人間の安全保障の確保、持続可能な開発の推進、地球環境問題への対応、そして我が国の国際プレゼンスの向上など、マルチ・オブジェクトとなってきており、より効率的に事業効果を最大化するためにも、各プロジェクト間の有機的シナジーが求められている。
このような状況を踏まえると、各プロジェクト単位での計画・実施・管理ではなく、より上位の目標達成のために戦略的にプロジェクトを配置した事業フレームとしてのプログラム・アプローチが国際的にも主張・導入されるに至っている。
我が国においても、地方自治体などにおいて除々にその導入例がみられるようになってきており、ODAに関しても、先のODA評価研究会報告書においてプログラム・アプローチによる評価の拡充が提言されている。
以上から、本調査では、京都イニシアティブを中心とした温暖化対策ODAのプログラム・レベルでの評価を実施するにあたり、プログラムの成果をより包括的に測る目的からも、プログラム全体のフレームワークの分析から成果の全体像を導き評価するトップダウン・アプローチと、プログラムを形成する事業の中から具体的なプロジェクトをケーススタディーとして取り上げ、具体的かつ詳細な評価を積み上げるボトムアップ・アプローチの二通りの手法の組み合わせによる総合評価を実施した。
図 二通りのアプローチによる総合的な評価の考え方
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出所)野村総合研究所作成 |
(2) 地球温暖化の視点に重点を置いた評価
本調査では、今後の温暖化対策ODAへの教訓を導くとともに、持続可能な開発のための世界会議(World Summit on Sustainable Development)に向けた我が国のインプットを導き出すことが重要であることから、地球温暖化対策の視点にウェートを置くものとする。
その一方で、京都イニシアティブの上位構想であるISDの基本理念である人間の安全保障・自助努力と連帯・持続可能な開発への貢献、地球温暖化問題の我が国経済・産業、外交政策への影響力の大きさを考慮した納税者の視点についても考慮し、3つの視点から総合的に評価を行う。
図 評価の基本的な視点
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出所)野村総合研究所作成 |
(3) インプット分析を中心とした評価
近年、行政評価、特にODA評価では、プロジェクトの直接的な成果である「アウトプット」の評価から、社会・経済的な具体的成果である「アウトカム」を重視した評価が国際的にも注目されている。
理想的には、本調査においても、京都イニシアティブを中心とした我が国の温暖化対策ODA全体が温暖化対策に及ぼす広範かつ長期的な「アウトカム」について評価することが望ましい。しかしながら、本調査では、「1. 1998年以降の事業が対象である」、「2. 本来温暖化対策を目的とした事業でないことから、温暖化へのインパクトを測る手段が組み込まれていない」ことから、地球温暖化の視点でのアウトカム評価は、困難である。
以上の理由から、本調査では温暖化対策ODAをプログラムあるいは政策として見渡すことができる入手可能なデータを利用した「インプット分析」を中心に評価を実施した。