このような人間社会の持続的な発展に対する地球規模のリスクに対し、我が国は国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の理念の下、様々な地球温暖化防止対策を国内外で展開してきた。特に国際協力分野では、改正地球温暖化対策推進大綱においても「我が国は、優れた技術力と環境保全の蓄積された経験を背景に、国際協力を通じて世界の取組の先導的役割を果たしていく」と位置付けており、開発途上国への地球温暖化分野での支援を多角的に展開してきている。地球温暖化対策関連ODAとしては、97年に発表された「21世紀に向けた環境開発支援構想(ISD)」の枠組みの中で、大気汚染・水質汚濁・廃棄物対策、自然環境保全、水問題、環境意識向上の支援とともに、重要な5分野の1つとして、98年以降8,670億円の規模で取り組まれてきている。
地球温暖化問題は、2001年には国際社会において、アメリカの京都議定書からの離脱とアメリカ以外の国々による京都議定書批准に向けた具体的合意(マラケシュ合意)の達成など、大きな波乱と進展が見られた。今後、地球温暖化問題対策は、世界最大の温室効果ガス(GHG)排出国であるアメリカの国際協調体制への参加が待たれるものの、途上国のための基金設立やクリーン開発メカニズム(CDM)・共同実施(JI)というODA対象国をパートナーとする京都メカニズムが実質的に開始されるなど、国際的な枠組下で急速に進展することが予想される。特に、日本国内だけでの京都議定書目標達成の困難さや将来的な途上国でのGHG排出量増加などを鑑みれば、ODAにおける地球温暖化関連分野への貢献は、今後非常に重要な取組といえる。
本調査は、我が国がISDの下で98年以来実施してきた「京都イニシアティブ」を中心とする地球温暖化対策関連ODAについて、今後の「地球温暖化時代」における地球温暖化対策関連ODAのあり方を提言するとともに、2002年8月26日から9月4日まで開催される持続可能な開発のための世界首脳会議(WSSD)への日本からのインプットとして資することを目的に、総合的、多角的に評価する。