広報・資料 報告書・資料

参考1:政府開発援助に関する中期政策

V.実施・運用上の留意点


1.開発途上国ごとの状況把握と国別援助計画の策定

―政府開発援助の効果を高めるため、開発途上国ごとの開発課題等を把握し、各国の状況を十分踏まえた援助を行うため、各種調査を積極的に行うとともに、開発途上国との政策対話を推進する。
―現在策定されている「国別援助方針」を更に具体化した「国別援助計画」を関係省庁の連携の下に順次策定し公開していく。この援助計画は、主要な援助受取国について、5年程度の期間を念頭に置き、我が国の当該国に対する援助の意義、基本的な目的、重点課題・分野、活用すべき援助手法等を示すものとする。
―「国別援助計画」策定に当たっては、各援助形態を一体的にとらえたものとし、また他の援助国・国際機関との協調・連携や民間セクターとの連携を視野に入れたものとする。
―開発途上国の実情・ニーズを最もよく把握しうる現地大使館や実施機関の現地事務所の一層積極的な活用を図る。

2.事前調査、環境配慮、実施段階でのモニタリング及び事後評価

(1)事前調査及び環境配慮
―ODAの一層効率的・効果的な実施のため、「国別援助計画」等に従って事前調査を行い、優良な案件の発掘・形成・選定を進めるとともに、その過程において調査の重複の回避を含め関係者間で密接に調整を行う。
―援助の実施に際しては、その環境及び地域社会に与える影響について環境配慮ガイドライン等に基づき、必要に応じ環境アセスメント等を行いつつ、事前に厳しく審査する。その結果に応じ、適切な対策を講じるとともに、環境に与える影響次第では実施しないこととする。その際、開発案件が、持続可能な開発の実現にとって適切なものとなるよう、必要に応じ代替案を含めて検討する。
―環境配慮に際しては、相手国側の制度等を踏まえた地域住民等の参加や情報の公開が重要であることに留意する。環境配慮の手続きや基準等については、適宜見直しを行い充実に努める。

(2)モニタリング
 ―事業進捗のモニタリングを充実強化し、事業実施中に起こる問題に対して各援助形態を活用しその連携を図りつつ所期の成果が挙がるように対処する。

(3)事後評価
―完了した事業については、環境影響の把握・評価を含め、可能な限り事後評価を実施し、その結果を公表する。
―評価の客観性を一層高めるために、学識経験者、NGO等の第三者や被援助国関係者による評価を拡充する。
―評価に当たっては所期の目的を達成しているか否かのみならず、地域・環境・マクロ経済などへの影響を含めた総合的な評価とする。
―評価の結果必要な場合フォローアップ事業を実施するとともに、教訓が将来の援助事業に生かされるようフィードバックに努めていく。
―事業の性格に応じた効果的な評価手法を開発・導入し、評価システムの充実に努める。

3.開発人材の育成

 援助を実施するのは人であり、優れた開発人材の確保と活用は効率的な援助のため極めて重要である。その際、分野・課題ごとの高度な知見や技術を有する専門家のみならず、現地の諸事情に精通した地域専門家の確保と活用が重要となる。更に、開発の現場や援助実施機関と教育機関との間の連絡・連携を密にすることが必要である。
 以上を踏まえ、次の諸点に留意する。
―開発に携わる人材の育成を更に拡充するとともに、我が国と他の援助国の援助実施機関との間の人的交流や、国際機関への人の派遣や調査への相互参加等による交流を強化する。また、教育現場と援助の現場との間の人的往来を強化する。
―援助需要の多様化や手法の変化に対応できるよう、大学・大学院におけるインターンシップの活用や、開発関係教科等に関する単位互換の促進等により、高度な専門性を有する人材の育成支援を図る。
―高度な知見や技術を有する専門家を十分確保するため、専門家公募制度の拡充、地方自治体・NGO・大学等を通じて人材確保の幅を広げる。
―民間コンサルタントの積極的活用を進め、必要に応じ、その育成・強化に努める。

4.国民の理解と参加の促進

 ODAに対する幅広い理解と支持をうるためには、我が国内外における広報及び情報公開の推進はもとより、国民各層・諸団体と連携して事業を実施していくことが必要である。特に、国内の有為の人材を有効に活用し、我が国の人的な国際的貢献を強化することは、我が国の「顔の見える援助」促進の観点からも極めて有効である。
 以上を踏まえ、次の諸点に留意する。
―民間企業、地方自治体、NGO、労使団体等国民の幅広い層の協力と参加を得てODAを実施するよう努める。
―国内での開発協力への関心の高まりを背景に、青年層からシニア層に至るさまざまな年齢層の参加・協力を得てODAを実施していく。
―NGO活動への支援に加えて、ODA事業のNGO、大学、シンクタンク等への委託の手法を活用するほか、地方自治体の開発事業への参加を更に促進する。
―我が国内外における我が国援助の広報に努める。

5.情報公開の推進

 我が国ODAの情報公開については、OECDのDACによる対日援助審査(1995年)に見られるように国際的には高く評価されているが、ODAの推進に当たって一層の国民の理解と支持をうるため、国会をはじめ広く国民に情報公開を進めていく必要がある。
 以上を踏まえ、次の諸点に留意する。
―一覧性のある情報提供の観点から、我が国のODAの実施状況に関する年次報告の充実を図る。
―プロジェクトの入札プロセスに関する情報、個々の案件に関する関連情報の一層の公開に努める。
―円借款の候補案件(ロングリスト)の作成・公表等を通じ、援助の透明性を深める。
―情報公開の幅を広げるだけでなく、より分かり易く、使い易い形での情報提供に努め、また、インターネット等の積極的な活用により情報へのアクセスを改善する。
―中央のみならず地方メディアや地域社会へのきめの細かい情報提供を進める。
―ODAの現場が海外にあることから、直接援助現場に触れる機会が少ない国民が我が国ODA案件に触れる機会を持てるよう努める。

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