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第4章 提言


 以上のような評価結果を踏まえ、以下の提言を行う。

4.1. スキームの目標体系の再構築

 「文化・教育の振興」を測定することの難しさは当然あるも、文化無償協力の目標を体系化し、それぞれの目標達成状況を測定するための指標を設定することを検討する。
 現行の文化無償協力は、「開発途上国の文化、教育の発展を支援するとともに、我が国とこれら諸国との文化交流を促進し、友好関係及び相互理解を増進させる」という意義(最終目標)を示しているものの、この目標を達成するための道程が示されていないため、個々の案件を実施することがこれらの目標の達成にどうつながるのかが把握しにくい。また、目標の指標が設定されていないため、その達成度を測定することが困難な側面がある。したがって、文化無償協力の実施状況を把握し、スキームを効率的に運営するためには、目標の体系化と指標の設定が有益であると考えられる。
 文化無償協力の目標体系の再構築にあたっては、ODAに期待される役割の変化にも配慮する必要がある。文化無償協力のスキームは、導入以来間もなく30年が経過しようとしており、その間、ODA大綱の改定を始め、ODAを取り巻く国内外の環境は変化してきた。このような変化に対応するためにも、文化無償協力の果たす役割を広く捉え、例えば、新しいODA大綱の重点課題に示されている「平和の構築」を文化無償協力の目的の一つとすることも一案である。

4.2. 文化無償協力対象の拡大

 文化無償協力の目的を達成するためには、他スキームとの連携が重要であるとともに、文化無償協力の対象を拡大することを検討する余地がある。文化無償協力は機材供与を原則としているが、施設の状況など機材を取り巻く環境によっては、その効果が最大限発揮されない恐れもあることから、文化無償協力の対象を柔軟に捉え、機材供与に関連する施設の建設・修復なども対象に入れることを検討すべきである。例えば、文化遺産無償協力では施設案件も可能であるが、今回調査した通常の文化無償協力でも、文化財・文化遺産の保存という目的を達成するためには、修復用の機材を供与するのみならず、展示施設の建設・修復まで一貫して行う方がより効果的であると考えられる。

4.3. 自己評価メカニズムの強化

 文化無償協力の効果を高めるためには、適切な検証を行い、その結果を案件の改善に活用することが重要である。現状でも、事前調査や機材活用状況調査などを実施し、案件内容の確認、活用状況の把握に努めているが、今後、達成目標の指標化が可能となる場合には、指標を定期的にモニタリング、事後に検証するというメカニズムを導入することができれば、案件の管理能力が更に向上すると考えられる。事前評価の実施を、被援助国・機関自身の自己評価に任せることも、被援助国・機関のオーナーシップを高め、援助の有効活用に関する意識啓発にも寄与すると考えられるので検討すべきと思われる。

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