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第8章 今後の取組み方針



8.5 アウトカム指標の設定とモニタリング

現在のところ貧困の緩和を最優先とするバングラデシュ国の上位開発目標の実現状況、それらの実現をサポートする各セクターの開発動向に関するレビューは公式かつ定期的に行われていない。援助実施機関として行う個別案件毎の目標達成と評価に焦点が置かれていたため、援助計画全体の目標の指標化は進められず、モニタリングの機能も備わっていない。

今後、国別援助計画を見直すさいに検討しなければならないことは、援助計画全体の成果指向化と最適な援助取組み策に関する検討・見直しのシステム化である。成果指向化とは、我が国が援助をとおしてその実現と達成に貢献したい目標と指標の設定である。バングラデシュ国の上位開発課題に沿った目標と指標の設定にあたっては、現在取りまとめの段階にあるPRSPにて設定される開発目標と指標に沿うことも一案である。

また、OECD/DACの新開発戦略が全世界にわたって提示したミレニアム・デベロップメント・ゴール(Millennium Development Goals:MDG)も検討に値する。PRSP進捗報告にて掲載されたバングラデシュ国版MDGの内容は以下のとおりである。

表8-5-1 Milliennium Development Goals

MDG 指標例
1 最貧と飢えの根絶 貧困発生率(所得)
栄養不足にある子供の割合
2 初等教育のユニバーサル化の達成 純就学率
識字率
3 ジェンダー格差の是正と女性のエンパワメント 初等および中等教育における男女就学比
女性の賃金雇用率
4 幼児死亡率の低下 乳幼児死亡率
幼児死亡率(5歳以下)
5 妊産婦の健康の改善 妊産婦死亡率
助産婦など立会いのも行われた出生の割合
6 HIV/AIDS、マラリア、その他疾病の根絶 HIV、マラリア、その他疾病の発症率
避妊法および器具の普及率
7 環境の保全 安全な水へのアクセスを有する割合
単位エネルギー利用当りのGDP
出典: バングラデシュ開発フォーラム2002年向けバックグラウンド・ペーパー


MDGに加え、バングラデシュ国開発計画においても重要な位置付けに置かれている以下の上位課題に対する目標と指標の設定も考えられる。指標は定量的なものに限らず、必要であれば定性的な目標の設定も活用する。

上位課題群 指標例
社会的公正の実現 ジニ係数
法律や司法制度の整備・改善状況
雇用と所得機会の創出 賃金雇用率/失業率
セクター別就業人口データと就業構成比
一人当りのGDP/年間家計支出高
輸出の振興と外国投資の促進 各種輸出入統計データ
外国直接投資統計データ
マクロ経済の持続的な安定成長 各種マクロ経済、財政、対外バランスに関するデータ


これら指標や定性的目標を設定したのちは、以下の手順に従いモニタリング、分析、見直し活動に移ることが望まれる。

  • 定期の指標モニタリング(データの収集)
  • 指標の変化と目標の達成状況に関する背景、要因、制約などのレビュー
  • 各セクターの開発動向のレビュー
  • 我が国の援助方策と内容に関する包括的な有用性評価
  • 援助実施上の留意点の洗い直し
  • 重点分野/セクター毎における対応課題と援助方策の見直し
  • 上位開発課題への対応において他に採りうる方策の有無や是非についての検討
  • その他援助スキームや実施体制に関する改善策の検討
  • 国別援助計画への新たな援助方策と改善策の組入れ

上記に加え、援助計画の目標と指標自体の見直しも適宜行われる。そして、定期モニタリング、分析、援助計画と方策の見直しに関する実施時期やスケジュールについても効率性と有効性を図るべく検討されることが望ましい。可能で有れば、経済協力関連の政策協議などとのタイミングを図るよう留意する。

なお、バングラデシュ政府計画省には実施・モニタリング・評価局(IMED)があり、現行では中央政府実施による主要公共事業のモニタリング・評価監理に当っている。今後、IMEDには上記の開発上位目標と指標に沿ったデータの収集とモニタリング体制を構築することが望まれる。我が国も国別援助計画の見直しやモニタリングのさいは、バングラデシュ政府側との情報の共有が可能となり、計画見直しや評価の効率化がはかられるものと思われる。

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