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コラム:現地調査レポート~タイ編(その1)~

チェンセン城跡修復事業(社会投資事業)

タイ北部に位置するチェンライ県チェンセン郡のチェンセン城の城壁と堀を発掘・修復をする事業は、タイ観光公社により20年以上前から計画されていたが、事業予算が高額なために、事業事業は先送りされていた。しかし雇用創出効果が高いことから、社会投資事業の事業の一つとして1999年に実施された。約1年間の土木事業により900人の雇用を創出し、当初計画どおりの効果を生み出した。城跡自体の観光資源としての価値は未知数ではあるが、それでも教育文化省の事業責任者によると、修復後の城跡に立ち寄る観光客は増加したとのことであった。 写真1 チェンセン城の城壁
写真1 チェンセン城の城壁

ハイランドエコツーリズム振興事業(社会投資事業)

ハイランドエコツーリズム振興事業は、地方の山岳少数民族などの観光資源を利用したエコツーリズムセンターの建設を行ったものである。同時に、観光サービスのための研修がタイ政府の自己資金で行われた。宿泊施設の整備、安全面の向上、情報発信などにより、国際観光客が訪問するようになっており、センターのオープン以来33ヵ月で7,000人の観光客がセンターを訪れ、そのうち10%がセンターや周辺の少数民族村で宿泊している。地元の人々は、宿泊サービスや土産物の販売によって現金収入を得ることができるようになった。これまで若い世代は仕事に就くために都市に出ていたが、エコツーリズム関連の仕事に就くことによって地元に残ることができ、伝統社会を守ることができるようになった。また、アジア通貨危機によってUターンした人々の雇用も創出することができた。 写真2 エコツーリズムセンターの少数民族家屋
写真2 エコツーリズムセンターの少数民族家屋

貧困緩和プロジェクト(経済復興・社会セクター・プログラム・ローン)

タイ政府内務省地方開発局は、1993年から96年にかけて貧困村(住民の30パーセント以上が年収15,000バーツ(約40,000円))以下の村民に対する無利子資金貸与プロジェクトを実施した。その第2フェーズ事業が28,000村を対象として計画されたものの、アジア通貨危機の影響によりタイ政府資金が枯渇したため、円借款の見返り資金の一部を利用して4000村を対象に実施されることになった。

この事業では、対象村の農民が自ら評価委員会を組成し、対象農民が提案する事業の審査を行って、資金を貸し付ける農民の決定を行う。返済についてもこの評価委員会が管理する。

写真3 農民へのインタビュー
写真3 農民へのインタビュー

今回インタビューを行ったタイ北部のパヤオ県メージャイ郡の村では、今までのところ返済不能・保証人による代理返済等の事態は一件も発生していなかった。資金を借り受けた農民に聞いたところ、7,000から15,000バーツの借入金を元手に農閑期のスイカ栽培、竹の子の水煮缶の製造、地元の人々が利用する生鮮食料店や雑貨屋の経営、バイクの修理屋を始めたとの回答が得られた。パヤオ県などタイ北部は乾季には雨が不足して農業を行うことが困難であるが、この資金を元手に始めた事業で農閑期に現金収入を得ることができるようになり、生活水準が上昇した。今後はさらに現金収入を増やすために技術的な研修や訓練を受けたいとの意見も出された。


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