広報・資料 報告書・資料

第6章 アフリカに対する貿易・投資分野協力全般への考察(TICAD IIIに向けて)

6-2 我が国のアフリカに対する貿易・投資分野協力のあり方

 本節では、本件のプログラムレベル評価から考察された、我が国のアフリカに対する貿易・投資分野協力のあり方について検討する。

6-2-1 地域性を踏まえたアフリカに対する貿易・投資分野協力と拠点造り
 第2章でアフリカの経済動向について概観したように、アフリカは地域によって、経済成長や産業基盤の状況が異なるため、貿易・投資分野協力についても、地域的な特色を考慮することが重要であると思われる。また、ODAの効率的且つ効果的な実施という観点からも、アフリカの地域性を考慮することの意義が考えられる。
 第2章で見たように、1998~2002年度にかけてJICAが実施した貿易・投資分野協力の研修員受入実績では、南アフリカ共和国(南アフリカ地域)、エジプト(北アフリカ地域)、タンザニア(東アフリカ地域)、ケニア(東アフリカ地域)、ガーナ(西アフリカ地域)に対する協力が多い。アフリカの特定国に対する援助配分は、これらの国を各地域の中核的な援助対象国と位置付け、その地域への援助効率を高めるという利点も見られると思われる*2
 また、既に北アフリカ地域ではエジプトに貿易研修センターが設置され、拠点造りが進められているように、各地域の特定国への援助配分を高めることと共に、アフリカの地域性を意識した、特定国における貿易・投資分野の開発拠点設置の支援を行うことも検討に値すると思われる。

6-2-2 アフリカの民間部門に対する裨益を意識した貿易・投資分野協力
 プログラムの結果についての評価で見たように、我が国の研修員受入、専門家派遣を通じた貿易・投資分野協力プログラムは、受益国政府職員への裨益が中心であり、その効果が民間部門に対する有効性・インパクトが十分に及んでいない点が確認された。こうした点から、我が国のアフリカに対する貿易・投資分野協力についても、民間部門への裨益を意識した協力を実施することが期待される。
 政府間協力であるODAを踏まえると、直接、アフリカの民間部門に対して協力を行うことは困難があると思われるが、現状の貿易・投資分野協力プログラムを通じた場合でも、研修員の受講の機会や派遣専門家の業務指示事項に民間部門への技術移転の重要性を含めることにより、協力の有効性やインパクトを高めることができるようになると思われる。

6-2-3 アフリカに対する貿易・投資分野協力における受益国リソースの活用
 アフリカに対する貿易・投資分野協力における効率的な実施という観点からは、同分野における受益国の人材、大学・研究機関、産業界等の人材リソースを活用することも重要な試みであると思われる。米国国際開発庁(USAID)カイロ事務所では、援助資金を地場NGOや民間部門へ配分し、エジプト国内のリソースを開発援助に活用していることが聴き取り調査で確認された*3
 アフリカ受益国のリソースを活用することは、現地の貿易・投資分野の実情に精通した人材活用に繋がり、受益国のニーズをより適確に把握した上で協力を実施できる利点がある。アフリカにおいて第三国研修を行う場合も、アフリカの大学や研究機関、産業団体等から講師、教材作成の人材を採用することは、受益国のニーズや考え方に則した研修を実施することにも繋がることが考えられる。

6-2-4 アフリカに対する貿易・投資分野協力と繋がりのあるその他の協力との連携の推進
 本調査では、貿易・投資分野協力プログラムの具体的な形態として、研修員受入と専門家派遣を取り上げたが、貿易・投資分野協力では、これら以外に、「開発調査」や「経済インフラ整備」の協力を実施する中で、貿易・投資分野と繋がりのある協力を検討することも考えられる。その場合、プロジェクト方式技術協力(技術協力プロジェクト)のように、研修員受入と専門家派遣による協力を補完的に進める援助を常に検討することが望まれる。
 一部派遣専門家からは「貿易・投資には色々なプロセス・部門・分野があり、その中で日本の得意とする分野に絞って援助を行えばどうか(相手国の要請を聞くよりも日本側にできることを提案する方法)」とするコメントや、「一つの案件で終わりとするのではなく、関連した案件と結びつけ『線』や『塊』となるようにすればより大きな効果がでてくるのではないか」という提案も示されている。
 こうした援助の連携を推進するにあたっては、我が国の援助関係機関による協力の連携強化が重要となるであろう。


*2 この点については、外務省経済協力局技術協力課に対する聴き取りでも、地域への波及効果への期待が言及された。
*3 主要ドナーによる貿易・投資分野協力の動向については、「添付資料2」を参照ありたい。


このページのトップへ戻る
前のページへ戻る次のページへ進む目次へ戻る