評価年月日:平成22年1月26日
評価責任者:国別開発協力第二課長 小野日子
1.案件概要1-1.供与国名スリランカ民主社会主義共和国 1-2.案件名ジャフナ教育病院中央機能改善計画 1-3.本プロジェクトの目的北部州の第3次搬送医療施設としての機能回復、適切な診断・治療ができる環境の整備及び同州の医療事情の改善を図るため、外来棟、中央診断棟、手術・集中治療室棟等の設備の整備及び機材等の供与を行う。供与限度額は22.98億円。 1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点以下の事項がスリランカ側により実施される必要がある。 (1)本計画により整備された施設・機材の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。 (2)維持管理に必要な予算措置を行うこと。 |
2.無償資金協力の必要性2-1.必要性(1)スリランカ政府の10か年開発計画「マヒンダ・チンタナ」(2006~2016)では、社会の発展を目指し、より健全な人的資本の蓄積を重視している。そのため、スリランカ政府は、保健分野においては、特に脆弱で所得の低い階層に対し、近代的な医療サービスを受診可能とし、健康福祉の平等性の確保を重要課題としている。 (2)ジャフナを始めとするスリランカの北部地域では、昨年5月にスリランカ政府と反政府武装勢力のタミル・イーラム解放の虎(LTTE)との内戦が終結したが、戦闘により約28万人の国内避難民が発生した。現在スリランカ政府は国内避難民の帰還を進めているが、帰還先の医療施設の復旧や水の供給等基礎インフラ整備は、帰還促進のために早急に必要となっている。他方、北東部地域の医療施設の整備は内戦中に大きく遅れたことから、全国平均に比して医療事情は劣悪な状況下にある。 (3)本案件対象のジャフナ教育病院は、北部州の上位搬送病院と位置付けられているが、この地域の医療施設の多くは内戦により被害を受け、機能不全となっているため、同病院は実質的に第1次、第2次病院の機能も担っている。その結果本病院に患者が集中している。ま た、本病院の24棟のうち14棟は建設後40年以上経過しており、他の施設も内戦中に設備投資がなされていなかったため、施設・機材共に老朽化しており、病院としての機能を十分に発揮できていない状況にある。さらに同病院は北東部地域の医療従事者の養成施設としての機能も兼ねているが、機材・設備の不足から期待される役割を十分に果たせていない。 2-2.効率性(1)今次計画による病院の設備の規模も病院の現有医療スタッフの技術水準において十分運営可能であり、また事業の対象範囲を病院諸施設の中央化という日本で効果を発揮している計画手法を適用しうる中央機能の改善とした。中央機能以外の病棟・外来・サービス部門等は建設コストは比較的低額であるため、将来的にスリランカ側で再整備していくことが可能である。なお、敷地準備工事、既存建物解体はもとより外構工事、既存機材移設費等はスリランカ側が負担することとなっている。 (2)医療機材の選定に際しては、現有機材の更新と不足機材の補充を基本とし、費用対効果が大きく、現在の同病院の技術レベルに合致した機材を選定した。また、不適切な取扱いにより耐用年数よりも早く不具合が生じることが懸念されるため、機材維持管理システムの改善、機材維持管理手法の技術指導、いわゆる「5S理念」(整理、整頓、清潔、清掃、躾)に基づく機材の整理、管理にかかる技術支援を導入した。 2-3.有効性(1)病院施設の建設、機材の更新により、年間約45万人から60万人に外来患者受入れ数が増加し、年間大型手術件数は5,786件(2008年)から最大で11,680件に増加する見込み。 (2)ジャフナ教育病院からコロンボの医療施設に移送されていた患者(2008年時、506人)に対し、来院患者全員の診療が可能となり、地域が求めている医療サービスを適切に提供することが可能となる。 |
3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等(1)スリランカ政府からの要請書 (2)JICAの基本設計調査報告書(JICAより入手可能) (3)第25回無償資金協力実施適正会議にて検討(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。 |