評価年月日 平成21年7月7日
評価責任者:無償資金・技術協力課長 柴田裕憲
1.案件名1-1.供与国名フィリピン共和国 1-2.案件名「気象レーダーシステム整備計画」 1-3.目的・事業内容フィリピン共和国東部太平洋岸の3カ所(ビラク、アパリ、ギウアン)にドップラー方式の気象レーダーを設置する。本事業により早い段階からフィリピンへ侵入する台風の監視が可能となる。供与限度額は33.50億円。フィリピンは民主主義、市場経済等の価値を我が国と共有する、東南アジアで中核的な役割を果たしている国であり、同国との友好関係は重要である。 1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点以下の事項がフィリピン共和国政府により実施される必要がある。 (イ)本計画により整備された気象レーダーシステムの維持管理を適切かつ継続的に実施すること。 (ロ)建設用地、仮設用地の確保や障害となる構造物の移設等に必要な人的手当及び予算措置を行うこと。 |
2.無償資金協力の必要性2-1.必要性(1)フィリピン政府は、「ゼロ」災害被害を目指し、災害被害の軽減対策を政策の重要項目として位置づけており、2004年から2010年までを対象とする「中期国家開発計画」において、防災組織強化や洪水予警報システム等の対策の強化を掲げている。特に、台風による被害は自然災害の約90%を占めており、その対策は急務となっている。 (2)一方、フィリピンにおける台風監視で最も重要な地域である東部太平洋岸のビラク、アパリ及びギウアン地域における気象レーダーは設置後20年近くが経過しているものであり、台風等の移動状態を観測できるドップラーレーダーではないため、暴風や降雨の移動方向や極めて短時間で発生し被害を及ぼすトルネードを伴う暴風雨を即時監視できない他、多降雨地域を特定することが困難となっている。 (3)このため、フィリピン政府は、台風・暴風災害に対し、円滑でより効果的な防災活動を拡充・強化するために、上記3カ所にドップラー機能を有する気象レーダーを整備し、的確な観測・情報伝送機能を構築するのに必要な施設・機材を整備する本件計画を立案した。 2-2.効率性台風、暴風雨、落雷等の自然災害が発生した場合においても継続して気象業務が行えるよう安定性を考慮した上で、経済性、施工性等の観点から最適な形式を選択し、本計画の効率性を高めている。 2-3.有効性(1)3基の気象レーダーにより監視範囲が広がり、フィリピンへの台風進入路のほぼ全てをカバーするため、的確に、早い段階から台風の監視が可能となる。 (2)台風襲来時の台風情報の発令が6時間毎だったものが毎時間の発令が可能となる。 (3)台風等の風速及び降雨の移動方向や短時間で発生するトルネードを伴う暴風雨のリアルタイムでの監視が可能となる。また、洪水予警報の精度が向上する。 (4)迅速な避難命令の発令が可能となり、防災関連組織による避難活動支援等の適時な実施が可能となる。 (5)フィリピンは民主主義や市場経済等の価値を我が国と共有する、東南アジアで中核的な役割を果たしている国であり、本件協力を実施することは同国との関係強化を図る上で意義が大きい。 |
3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等(1)JICAの基本設計調査報告書 (2)無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。 |