評価年月日 平成21年4月25日
評価責任者:無償資金・技術協力課長 柴田裕憲
1.案件名1-1.供与国名ペルー共和国 1-2.案件名「国立障害者リハビリテーション・センター建設計画」 1-3.目的・事業内容 ペルー共和国の首都リマ市において、同国における障害者リハビリテーション医療の中核機関である国立障害者リハビリテーションセンター(Instituto Nacional de Rehabilitacion :以後「INR」と呼称)を移転新築し、障害者リハビリテーション診療の向上と充実を図る。ペルーは南米大陸で重要な役割を担う我が国の友好国。 1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点以下の事項がペルー共和国政府により実施される必要がある。 (イ)本計画により整備された施設の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。 (ロ)活動に必要な人的手当及び予算措置を行うこと。 |
2.無償資金協力の必要性2-1.必要性(1)ペルー共和国政府は障害者への差別をなくすための社会福祉政策として「障害者の機会均等化計画2003~2007」を策定し、障害者対策の強化を目標として掲げた。同計画の後継として、政府は引き続き障害者の医療サービスへのアクセス機会均等を強化する「ペルー共和国障害者の10年2007~2016」を2006年12月に策定した。同計画は、障害者の抱える種々の問題に対して保健・教育・労働・住居・交通・保健および財政などの各分野で方策が立案されている。保健分野ではリハビリテーション医療サービスの拡大および専門職の養成が計画されている。 (2)INRは、ペルー共和国における障害者リハビリテーション診療の中核機関であり、年間3万人以上の患者診療を行うと同時に、各関係大学と連携してリハビリテーション専門職の養成も行っているが、既存施設は1936年に総合病院として建設したものであるため、障害者リハビリテーション診療に適した施設構造となっていない。加えて、敷地も狭く、適切な広さの診察・治療スペースを確保できず、医療サービスの提供が必要な患者に対して十分に対応できていない。 (3)このような状況を受け、ペルー共和国政府は、INRの移転新築と医療機材の調達を通じて、同センターの診療水準と患者アクセスを改善し、中核機関として同病院に本来要求される機能を充足させることを決定し、必要な資金につき我が国に対し無償資金協力を要請した。 2-2.効率性(1)全体計画で施設整備が必要なのは8部門(管理部門、外来診療部門、診断支援部門、保健促進・危険防止部門、手術センター、病棟、研究・教育部門、一般サービス部門)であるが、ペルー共和国政府との協議及び日本国内での解析を通じた無償資金協力としての妥当性・裨益効果の検討の結果、日本側は外来診療部門、診断支援部門、手術センターの一部、病棟の半分及び一般サービス部門の一部を協力対象とし、これ以外については先方負担とした。これにより、建屋建設費が縮減された。 (2)機材調達数量は、基本設計で確認された各機材を使用する診療部門における活動内容・患者数・各教材の使用頻度を基に必要数量を算定すると共に、既存機材の状態を勘案し、必要最小限の数量とした。 2-3.有効性(1)既存施設は元総合病院として建設された建物であることから、精神/運動の両機能障害治療室が無秩序に配置されており非効率的な治療・患者動線を余儀なくされているが、本計画により各治療室が秩序よく配置され、効率的な治療が可能な施設となる。 (2)治療機材の不足・老朽化により適切な治療を提供できない現状が、必要治療機材の更新・補強により改善される。 (3)2006年度時点に比べ、本件実施によりINRの診療サービスである診察数、治療数が約2割増加(2012年度)することが見込まれている。 (4)当該リハビリテーションセンターはペルー共和国の中核リハビリテーションセンターとして全国のリハビリテーションセンターを指導すると共に、リハビリテーション診療の研究・研修も合わせて行っている。施設・機材の拡充により、INRが実施するリハビリテーション分野の研究・研修が質量共に充実する。また、患者受け入れ数の拡大およびCTや水治療プールの導入に伴う医療の質の向上を通じて、下位医療施設からの搬送患者の受け入れ体制が改善する。 (5)我が国は南米大陸で重要な役割を担うペルーと友好的な関係を維持している。本件実施は、我が国のペルー共和国に対する支援方針の一つ(社会的格差是正)に合致し、同国の障害者ケアにおいて重要な意義を持つものであり、本計画の詳細設計に係る無償資金協力の交換公文は、2月のガルシア・ペルー外相の訪日時に中曽根外務大臣が署名している。 |
3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等(1)JICAの基本設計調査報告書 (2)無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。 |