評価年月日:平成21年7月2日
評価責任者:無償資金・技術協力課長 柴田 裕憲
1.案件名1-1.供与国名カンボジア王国 1-2.案件名「国道一号線改修計画(第3期)」 1-3.目的・事業内容プノンペンとベトナム国境バベットを結び、アジアハイウェイA-1号線の一部を形成するカンボジアにおいて最も重要な幹線道路の1つである国際幹線道路国道一号線のプノンペン~ネアックルン区間約56キロメートルの内、緊急性の高いプノンペン市近郊4キロメートル地点から、第2期実施区間に接続する約9キロメートル区間の道路拡幅、舗装修復等の改修を行う。供与限度額は20億500万円(平成21年度:8億5,200万円、平成22年度11億5,300万円)。カンボジア首脳レベルから累次要請があり、外交面からも極めて重要な案件。 1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点我が国は、JICA環境社会配慮ガイドラインを最大限に尊重した調査を実施するとともに、実施段階においても、移転対象住民に対する適切な補償方式の導入をカンボジア政府に働きかける等、綿密な対応を実施してきている。 |
2.無償資金協力の必要性2-1.必要性(1)カンボジアの幹線国道は、首都プノンペンを中心に放射状に展開し、大部分の地方主要都市及び国境通過点を結んでいる。しかし、1970年代~80年代の内戦時代に維持管理が行われず、さらに洪水被害や爆撃・地雷による破壊等により、ほとんどの道路が損壊した。1993年以降、日・米・豪・ADB等の援助により復旧が進められているが、近代的な規格の道路に改修されたのは全体の60%に当たる約1,200キロメートルに過ぎない。 (2)カンボジア政府は、「第2次社会経済開発5カ年計画(2001年~2005年)」以来、幹線国道の修復・再建、隣国への道路網の確立、持続的な維持管理計画の策定等の道路整備目標を掲げて、上記状況の改善に取り組んできている。 (3)国道一号線は、プノンペンとベトナム国境バベットを結ぶカンボジアの最重要道路の一つであると共に、ベトナムの商都ホーチミンに達する道路に接続してアジアハイウェイA-1号線の一部を形成する国際幹線道路でもある。同道路のネアックルン~バベット区間(約105キロメートル)はアジア開発銀行の融資により改修が実施されたが、残るプノンペンからネアックルン区間(約56キロメートル)はメコン河に平行して横たわる氾濫源に位置することから損傷が著しく、現在平均時速30キロメートル程度の走行しかできない状況にある。 (4)このような背景の下、カンボジア政府は国道一号線プノンペン~ネアックルン区間の改修について、資金及び技術力の不足により自力での実施が困難であることから、我が国に対し支援要請を行ってきたものである。 2-2.効率性これまでの我が国の無償資金協力、他機関・他ドナーによる協力事業を十分に踏まえ、国際幹線道路としての機能を早期に発現させるために、メコン地域開発のための南部経済回廊整備上の最重要区間として、必要性・緊急性の高い区間に計画対象を絞るなど、事業の効率性を確保している。 2-3.有効性(1)本計画の実施により、以下のような成果が期待できる。 (イ)幹線国道の機能が向上することにより、物的・人的交流が促進されて、地域の経済・社会活動が活性化する。 (ロ)農産物の輸送、学校や病院、都市施設へのアクセスが改善し、沿道住民の生活水準の向上に寄与する。 (ハ)道路舗装の修復や道路幅の拡幅により、国道一号線の走行性が改善され、現在の平均時速約30キロメートルから約80キロメートルの走行が可能となる。これによりプノンペン~ネアックルン区間の通過所要時間が現行の1時間50分から40~50分に短縮される。 (ニ)道路面の嵩上げや道路排水施設の改善により、洪水に対する道路の流下能力が向上し、国道一号線への冠水やプノンペン市周辺地域への越流被害を防止する。 (2)カンボジアが極めて重要としている幹線道路整備計画であり、首脳レベルから累次要請があるため、外交面においても極めて重要な案件。その実施により、日本とカンボジア王国の二国間関係強化への効果が期待される。 |
3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等(1)JICAの基本設計調査報告書 (2)無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。) |