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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日 平成20年4月9日
評価責任者:無償資金・技術協力課長 柴田裕憲

1.案件名

1-1.供与国名

 タジキスタン共和国

1-2.案件名

 「クルガンチュベ-ドゥスティ間道路改修計画」

1-3.目的・事業内容

 本計画は、タジキスタンの首都から南北に延びる主要幹線道路網の南ルート上の一区間を改修すること等により、当該道路の走行性や安全性の改善等を図ることを目的とする。供与限度額は34.32億円であり、クルガンチュベ-ドゥスティ間道路(約60キロメートル)の車道及び路肩の舗装、交差点6ヵ所の改良、橋梁14ヵ所の改良(架け替え12橋、撤去1橋、部分補修1橋)等を実施するものである。

1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 以下の事項がタジキスタン政府により実施される必要がある。

(1)本計画により整備された道路の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。
(2)活動に必要な人的手当及び予算措置を行うこと。

2.無償資金協力の必要性

2-1.必要性

(1)タジキスタン政府は、「国家投資・技術プログラム2005-2007」を策定し、経済成長を促進するため、道路網、鉄道網を整備し、貨物・旅客輸送の効率化を図ることを急務としている。また、本計画の対象道路は、同国首都を中心に南北に延びる主要幹線道路網の南ルート上の一区間であり隣国アフガニスタンを経由し、アラビア海に接続する重要なルートとしてタジキスタン国家長期計画(2006-2010)における優先道路となっていることに加え、アジアンハイウェイ構想の広域幹線道路としても位置づけられている。しかしながら、タジキスタン政府は、慢性的な予算不足のため、その殆どを他国や国際機関からの援助に依存しながら、道路インフラ整備を進めている。具体的な支援状況としては、2007年8月にタジキスタンとアフガニスタンとの国境橋が米国の支援により完成し、また、ADB(アジア開発銀行)によりドゥシャンベ(首都)-クルガンチュベ間の道路(約93キロメートル)が改修され、更に、現在我が国無償資金協力によりドゥスティーニジノピャンジ間の道路(約24キロメートル)の整備が行われている。

(2)本計画の対象区間であるクルガンチュベ-ドゥスティ間の道路は、旧ソ連時代に建設されたものであり、既に30~40年が経過している。これまで限られた予算の中で日常的な維持管理は実施されているものの機材不足等により抜本的な改修は実施されていない。また、地下水等の影響から基礎部の状況が悪い状況である上、道路インフラ整備によって今後は交通量(特に大型トラックやトレーラー等の大型車両)が増加することが予測され、短期間で舗装に深刻なダメージが発生することが予見される。したがって、広域幹線道路としての機能を確保するためには、緊急の舗装打換え改修工事等が必要とされている。

2-2.効率性

(1)道路の設計については、現地材(路盤材)の活用、資材の再利用、路肩舗装を簡易舗装とするなど、効率化を図ることでコスト縮減を図った。

(2)構造物の設計については、改修対象12橋梁を架け替えとはせず、ボックスカルバード形式とした。また、横断構造物(77ヵ所)の一部(22ヵ所)を部分改修とするなど維持管理コスト等が低く経済的な工法を採用することでコスト面での効率性を確保した。

2-3.有効性

(1)本件の実施により、以下のような成果が期待される。

  • 走行性が改善され、円滑な交通が確保されることにより、始点~終点(市街地区を除く)間において現行では安全に走行できる平均走行速度毎時30キロメートル程度が毎時70キロメートル程度、市街地区間は毎時20キロメートル程度が毎時40キロメートル程度に増加するとともに、大型トラックやトレーラー等の大型車両の通行量増加することが期待される。
  • 道路走行時の見通し(視距)が現在のうねり区間の最低視距10メートル程度から140メートルに改善されるとともに、路肩の付帯により歩行者・自転車と車両が分離され当該道路の通行安全性が向上する。

(2)タジキスタンでは、計画的にインフラ整備を行うために「長期運輸開発計画2006-2010」において、幹線道路網の整備が優先的に進められている。また、実施機関である運輸通信省は「国家投資・技術プログラム2005-2007」において、経済成長を促進するために道路網、鉄道網を整備し、貨物・旅客輸送の効率化を図ることを急務としており、本件の実施は、同国の開発計画に合致する。また、2005年に行われた政策協議及び現在作成中の我が国の対タジキスタン国別援助計画においても、「インフラ整備」を重視した支援を行う方針としており、我が国の援助方針とも合致する。

(3)2006年6月5日に開催された「中央アジア+日本」対話第2回外相会合では、「中央アジアからアフガニスタンを経由する南方への輸送ルートの整備が内陸に位置する中央アジア諸国の発展及び繁栄にとり重要である」との共通認識が行動計画に謳われており、本計画はこの考えにも合致している。

(4)さらに本計画の実施により、日本とタジキスタンの二国間関係強化への効果も期待される。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)タジキスタン政府からの要請書

(2)JICAの基本設計調査報告書(JICAを通じて入手可能)

(3)第37回無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kaikaku/ugoki/sochi/3_komoku/3.html



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