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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日 平成20年4月7日
評価責任者:無償資金・技術協力課長 柴田裕憲

1.案件名

1-1.供与国名

 スリランカ民主社会主義共和国

1-2.案件名

 「アヌラダプラ教育病院整備計画」

1-3.目的・事業内容

 本計画は、アヌラダプラ教育病院(1958年設立)の外来部門サービス、異常分娩対応施設、及び集中医療施設の充実を図り、同病院の外来部門、産婦人科部門、小児科部門において質の高いサービスを提供することにより、スリランカの妊産婦死亡率や乳幼児死亡率の低下等を図ることを目的とする。供与限度額は18.03億円(国庫債務負担行為。平成20年度:0.26億円、平成21年度:4.91億円、平成22年度:12.86億円)であり、外来棟(外来部門、産婦人科手術部門、小児及び新生児ICU等)、発電機棟、浄化槽の建設や、X線撮影装置、保育器、超音波診断装置等の関連医療機材の整備等を実施するもの。

1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 以下の事項がスリランカ政府により実施される必要がある。

(1)本計画により整備された施設・機材の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。
(2)活動に必要な人的手当及び予算措置を行うこと。

2.無償資金協力の必要性

2-1.必要性

(1)スリランカ国における保健状況は、無料の医療サービスが末端まで普及していることもあり、乳幼児死亡率は出生1,000人対12人、5歳未満児死亡率は出生1,000人対14人、妊産婦死亡率は出生10万人対92人と、同じGNIレベルの国々と比べても比較的良好である。しかしながら、保健医療サービスの地域間格差は大きく、特に北・東部の紛争地域、北中央部、南部地域では、貧困状況にあることもあり、他州と比較して、保健医療各種指標が低くなっている。

(2)本計画対象地域はスリランカ国において貧しい州の1つである北中央州であり、同州の乳児死亡率は出生1,000人対18.6人、5歳未満児死亡率は出生1,000人対20.3人と、スリランカの全州の中で最も高い数値となっている。

(3)アヌラダプラ教育病院は北中央州唯一の3次医療施設である。下位医療施設は基本的な外来診療、内科治療と正常分娩には対応できるものの専門外来はなく、外科手術や帝王切開は対応不可能な状況であることから、アヌラダプラ教育病院に患者が集中しており、外来患者は毎日1,050名程度、ベッド占有率は産科が180%、小児科が180%、婦人科は130%と非常に混雑している。

(4)アヌラダプラ教育病院は1958年に設立されたもので老朽化が著しく、特に外来は管理棟を転用して使用しているので、患者待合室がなく、廊下に患者がすし詰めの状態となり、患者及び医療従事者の動線が錯綜しているなど、施設、機材の未整備のため、3次医療施設として備えておくべき専門医療サービスが十分に行えない状況にある。

(5)このような状況を改善するため、スリランカ政府は、アヌラダプラ教育病院の外来部門サービスの充実、異常分娩対応施設の充実、集中医療室の充実のための施設及び機材の整備に係る無償資金協力を要請してきたものである。

2-2.効率性

(1)本計画を実施するにあたり、スリランカ保健省、北中央部州、アヌラダプラ教育病院における現状等を考慮して、スリランカ国側の実施能力に適応した教育病院として妥当かつ適正な施設、機材の範囲、規模及び内容とするとともに、同病院のマスタープランと整合し、各診療科、施設の機能の効率化を図ることを目的とし、過剰な規模とならないようにした。

(2)可能な限り単純な施設構成とすることにより、患者及び医療従事者の動線を整理し、作業の効率化を図るとともに、単純な構成で施設の維持管理費を低減することにより、本案件の効率性を高めている。

(3)機材計画に関しては、既存機材の現況、スリランカ国側の予算、技術レベル及び維持管理面での実施能力に配慮した、適切かつ効果的な機材の範囲、規模及び内容とし、調達先については、スペアパーツの入手が円滑に行えるよう十分留意した。

2-3.有効性

 本計画の実施により、以下のような成果が期待される。

(1)分散している外来部門を一体の建物に集約することで病院機能が効率化し、外来患者への対応能力が向上する。

(2)老朽化した産婦人科手術部の施設・機材を整備することで、質の高いサービスが提供可能となるとともに手術件数が増加する。

(3)新生児ICU及び小児ICUの施設、機材を整備することで集中治療の安全性が高まるとともに、質の高いサービスが可能となる。

(4)スリランカの妊産婦死亡率や乳幼児死亡率の低下に寄与する。

(5)さらに、本計画の実施により、日本とスリランカの二国間関係強化への効果が期待される。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)スリランカ政府からの要請書

(2)JICAの基本設計調査報告書(JICAを通じて入手可能)

(3)無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kaikaku/ugoki/sochi/3_komoku/3.html



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