評価年月日 平成20年6月20日
評価責任者:無償資金・技術協力課長 柴田裕憲
1.案件名1ー1.供与国名ヨルダン・ハシェミット王国 1ー2.案件名「第二次ザルカ地区上水道施設改善計画(3/3期)」 1ー3.目的・事業内容本計画は、首都アンマンの北東35キロメートルに位置するヨルダン有数の工業地域であるザルカ地区に、配水池、送水管、ポンプ場、塩素消毒施設等を建設・敷設することにより、当該地域の漏水率の減少、対象地域の住民に安全で安定した給水を図ること等を目的とする。供与限度額は11.92億円であり、バトラウィ配水池の建設、配水管の敷設、配水管網解析等の指導等を行う。 1ー4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点外部要因リスクとして、ヨルダンの水道整備に関わる政策に変更がないことのほか、以下の事項がヨルダン政府により実施される必要がある。 (1)本計画により整備された給水施設の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。 (2)活動に必要な人的手当及び予算措置を行うこと。 |
2.無償資金協力の必要性2ー1.必要性(1)ヨルダンの国土の約80%は砂漠又は荒地であり、国民の一人あたりの年間水資源賦存量(水資源として理論上最大限利用可能な水の量=降水量-蒸発散によって失われる量)は200立法メートル(世界平均7700立法メートル)と極端に少ない上、急速な人口増加により水不足は深刻化している。ヨルダン政府は、「国家水戦略」を策定し、水不足を新規水源開発のみに頼るのではなく、水源を管理・保全し、国民の水問題意識を向上させ、限りある水源を最大限に有効利用していく方針を打ち立てた。 (2)この上位計画のもと、本件計画の対象地域では、漏水率の低減等により、現在84リットルである1人1日実水使用量を2020年までに国家目標(150リットル)に近い130リットルに引き上げる計画を策定している。 (3)このようなことから、本計画の実施機関であるヨルダン水道庁は、対象とする水道システムを再構築することにより、給水区域に4配水区を設置し、漏水量を減少させ実水使用量を増加させること等を目的として、我が国に対し無償資金協力を要請したものである。 (4)我が国はこれまで、1994年から96年にかけて開発調査「ザルカ地区上水道施設改善調査」、2002年~04年に無償資金協力「ザルカ地区上水道施設改善」を実施し、ルセイファ市、ザルカ市アワジャン地区を対象とした送水管、配水池、配水連絡管の敷設建設を実施している。今回の計画では、対象地区29.7万人の安定した安全な水の供給に裨益する。 2ー2.効率性(1)経済性の観点から、配水池の規模は、将来における自助努力による増設が可能なように計画することで、本案件で建設する配水池の規模を必要最小限としている。また、既存の配水管網、配水池およびポンプ場建屋等の既存施設を可能な限り有効利用する計画とすることで、本案件の効率性を高めている。 (2)施工・調達計画の策定には、現地調達が可能な資材および技術水準を考慮した工法を採用することで、施設引渡し後の維持管理およびその経済性に配慮した計画としている。また、主要資材である配管材は、第三国を含め可能な調達先から輸送費を含めた現地での価格を比較することで、コスト削減に努めた調達計画としている。 2ー3.有効性(1)本計画の実施により、37.4万人の裨益人口の給水可能な日の増加が図られる。 (2)本案件は、ヨルダン政府の策定した「国家水戦略」に合致するものであり、一人あたり水賦存量が世界最低レベルであるヨルダンにとって、水資源の有効活用は死活的に重要であることから、我が国の顔が見える案件として、外交的インパクトが大きい。 (3)ヨルダンは、我が国が提唱した「平和と繁栄の回廊」構想及びG8拡大中東・北アフリカ諸国(BMENA)パートナーシップ構想の重要なパートナーであり、本計画の実施により、日本とヨルダンの二国間関係強化への効果が期待される。 |
3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等(1)ヨルダン政府からの要請書 (2)JICAの基本設計調査報告書(JICAを通じて入手可能) (3)無償資金協力実施適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。 |