広報・資料 報告書・資料

政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成20年5月16日
評価責任者:無償資金・技術協力課長 柴田裕憲

1.案件名

1ー1.供与国名

 インドネシア共和国

1ー2.案件名

 「マラッカ海峡及びシンガポール海峡船舶航行安全システム向上計画(1/2)」

1ー3.目的・事業内容

 本計画は、国際的な海運の大動脈であるマラッカ海峡及びシンガポール海峡(以下、「海峡」とする)において航行船舶を海難及び海賊等から守ることを目的とする。
 インドネシア側の海域における航行船舶官システムの整備を図ることにより、Vessel Traf fic Service(VTS)センサー4箇所における機材整備及びVTSセンター1箇所の新設を事業内容とする。供与限度額15億7,300万円。

1ー4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき事項

 以下の事項がインドネシア共和国政府により実施される必要がある。

(1)人員・予算が確保され、適切に建設・整備が行われること。

(2)システム運用に必要な商用電源、無線周波数、及び高速回線確保が行われること。

(3)建設施設及び供与機材の維持管理が適切な計画に基づいて行われること。

2.無償資金協力の必要性

2ー1.必要性

(1)同海峡は、年間9万隻以上の船舶が航行し、我が国の関係船舶も年間約14,000隻が往 来する国際的な海運の大動脈である。

(2)しかしながら、同海峡は狭隘な水路の上、浅瀬、岩礁、沈船などが多く、大型船舶の航行密度が高いため、常に海難事故の危険にさらされている。そのため、同海峡では通航路を設定し、対面する船舶航行の流れを分離する分離通航帯方式が採用されるとともに、船名・船位等の情報をマレーシア及びシンガポールの海上情報センターに通報する強制船位通報制度が設けられており、船舶の航行安全確保に向けた取り組みが行われている。

(3)同海峡はその地理的性格から、海峡を挟んだ沿岸国間での往来が盛んであり、旅客フェリーをはじめ、貨物船、漁船等、分離通航帯を横断して航行する小型船舶が多い。これらの横断船舶を、分離通航帯を航行する大型船舶の障害とさせないためには、航行船舶の動静をモニターする仕組み(Vessel Traffic Service(VTS))の導入が不可欠である。

(4)また、2006年9月には我が国が提案した「アジア海賊対策地域協定(ReCAAP)」が発効すると共に、2007年にはIMOと沿岸国の共催によるマラッカ・シンガポール海峡に関する国際会議において、沿岸三カ国、海峡利用国、海運業界及びその他の利害関係者との対話と協力を促進するための「シンガポール声明」が採択されるなど、同海峡の安全確保は同国のみならず、国際社会の喫緊の課題となっている。

(5)このような状況の下、同政府は、同海峡航行船舶の安全確保を図り、国際貿易・海運上の危険性を軽減するべく、分離通航帯を横断航行する船舶の監視を目的としたVTSの構築に関し、我が国無償資金協力を要請してきたものである。

2ー2.効率性

(1)本計画において整備される海峡航行船舶監視システムは、マレーシア及びシンガポールに設置されているものと同様の規格であるため、共通の管制体制が構築され、訓練及び運用が効率的に実施される。

(2)本計画においては、インドネシア政府の当初要請のVTSセンター全てを整備するのではなく、予備調査及び3回の基本設計調査の結果を踏まえ、整備箇所を絞り込むことにより効率性の向上を図っている。

(3)本計画は、本計画は、インドネシアの「運輸省戦略計画2005年~2009年」、及び国家開発計画庁発行のブルーブックにおける優先度の高いプロジェクトのリストに位置付けられており、同国の開発計画に合致する。

2ー3.有効性

(1)本計画の実施により、マラッカ海峡及びシンガポール海峡沿岸三カ国の中で、唯一VTSが整備されていなかったインドネシア国沿岸域にVTSシステムが導入・整備され、同国・同海峡沿岸域を航行する船舶の監視活動が可能となる。

(2)さらに、本計画の実施により、日本とインドネシア共和国の二国間関係強化への効果が期待される。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)インドネシア共和国政府からの要請書

(2)JICAの基本設計調査報告書(JICAを通じて入手可能)

(3)無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kaikaku/ugoki/sochi/3_komoku/3.html



このページのトップへ戻る
目次へ戻る