評価年月日 平成20年4月4日
評価責任者:無償資金・技術協力課長 柴田裕憲
1.案件名1ー1.供与国名フィジー諸島共和国 1ー2.案件名「南太平洋大学情報通信技術センター整備計画」 1ー3.目的・事業内容本プロジェクトは、12の太平洋島嶼国・地域により設立・運営され、国土が広大な地域に散在する大洋州島嶼国地域に対して、遠隔教育活動を実施している国際教育機関である南太平洋大学(University of South Pacific、以下「USP」)の、不十分な情報通信技術(Information and Communication Technology、以下「ICT」)に関する教育・研修機能の改善を行うとともに、新たにICT分野の研究・開発環境を整備することにより、USP加盟各国におけるICT分野の人材育成を目的とする。供与限度額は22億100万円(国庫債務負担行為。平成20年度5億6,300万円、平成21年度16億3,800万円)であり、USP内にICTに関する研究・教育・訓練を行うセンターの建設及び関連機材の供与を行うものである。 1ー4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点以下の事項がフィジー諸島共和国政府により実施される必要がある。
(1)本計画により建設されたセンター及び供与された機材の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。
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2.無償資金協力の必要性2ー1.必要性(1)太平洋地域は、広大な海洋に島嶼が散在する特異な地理条件から情報格差が著しく、情報分野の人材育成も困難であったことから、これまでITを活用した産業は発達してこなかった。2003年に日本で開催された太平洋・島サミットにおいても、ICT推進が島嶼国のデジタル・デバイドを解消し、大洋州地域の発展に重要であるとの認識が示された。また、フィジー諸島共和国においても、「国家情報通信技術開発計画2003-2005」で、デジタル化された経済と情報通信能力のある市民により、同国が太平洋における情報通信技術の中心国家となるとのビジョンを掲げている。 (2)フィジー諸島共和国に本部を置くUSPは、1968年に12の島嶼国・地域(フィジー、クック、キリバス、マーシャル、ナウル、ニウエ、ソロモン、トケラウ、トンガ、ツバル、バヌアツ、サモア)が、それぞれ資金を拠出し共同設立した域内最高水準の国際教育機関であり、域内の社会経済発展に大きく寄与してきている。また、USPに加盟する小島嶼国が独自の高等教育機関を持つのが困難な環境下にある中で、USPは各国それぞれの連携を深め、人的資源の底上げを図る非常に重要な役割を担っている。 (3)USPは太平洋地域におけるICT教育の中心を担っているが、ICT関連学科の応募学生数は2002年の約9000人から2005年には1万人を超えるに至り、施設や機材が学生数の増加に追いつかない状況である。特に、コンピュータ科学科は、急造の木造校舎でコンピュータ実習室が絶対的に不足(充足率約60%)しており、ICT教育環境の質・量ともに改善が求められてい る。 (4)このような背景のもと、フィジー諸島共和国政府は「南太平洋大学情報通信技術センター整備計画」を策定し、我が国に無償資金協力を要請してきたものである。 2ー2.効率性(1)当初、USP側は1000人及び500人を収容する2つの講堂を含む共用部、コンピュータ科学科、ITサービス部、研究・開発部門、工学科、地理情報学科で構成される規模の施設建設を要請していたが、現地調査及び協議の結果を踏まえ、講堂は多目的利用が可能な300人規模とし、共用部、コンピュータ科学科、ITサービス部、研究・開発部門、工学科で構成される計画として、地理情報学科は現施設が十分使用可能な事から除外した。 (2)機材についても、本プロジェクトにより整備される施設における配備に見合った機材とし、USPに直接裨益する機材に絞り、本案件の効率性を高めている。 2ー3.有効性(1)本件の実施により、以下のような成果が期待される。 (イ)実習室が整備されることにより、コンピュータ科学科のカリキュラム数が増加するとともに、社会人向けICT関連研修コース開催可能時間が週24時間から48時間に拡張される。 (ロ)USPにICTの中核的教育・研究センターを設置することにより、ITのスキルをもった人材が育成され、大洋州の島嶼国が世界的な情報社会に容易に参加できるようになる。 (ハ)ICT教育環境が強化され、ICT関連職種への就職機会が増加することが期待される。 (2)同大学は12の島嶼国・地域により設立・運営されている国際教育機関であり、総学生数のうち約6割がフィジー人であるが、それ以外にソロモン、バヌアツ、キリバス等12か国・地域の学生がUSPキャンパスにおいて、あるいは遠隔教育を通じて学習を行っている。本計画は、フィジー1か国のみならず、太平洋島嶼国地域全体に裨益するものである。 (3)2006年の第4回日本・太平洋諸島フォーラム首脳会議において我が国からは、経済成長、持続可能な開発、良い統治、安全確保及び人と人との交流を重点分野として3年間で450億円規模の支援を行うことを表明しており、本件はこの支援方針とも合致する。 (4)さらに、本計画の実施により、我が国と太平洋島嶼国との関係強化への効果が期待される。 |
3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等(1)フィジー諸島共和国政府からの要請書 (2)JICAの基本設計調査報告書(JICAを通じて入手可能) (3)無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。 |