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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日 平成20年4月4日
評価責任者:無償資金・技術協力課長 柴田裕憲

1.案件名

1ー1.供与国名

 エジプト

1ー2.案件名

 「バハルヨセフ灌漑用水路ダハブ堰改修計画」

1ー3.目的・事業内容

 本計画は、エジプト中部に位置するバハルヨセフ灌漑用水路の一つで、建設後100年以上が経過し老朽化の激しいダハブ堰を改修することにより、当該地域の農業生産性の向上や農民の所得向上等を図ることを目的とする。供与限度額は21.41億円であり、ダハブ堰の改修 (設計配水量毎秒210.15立法メートル、堰の全長38メートル)、ゲートの更新、併設橋及び管理棟(基礎部分)の建設を行う。

1ー4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

 外部要因リスクとして、ナイル協定によるナイル川のエジプト年間利用可能水資源量555億?が減少しないことのほか、以下の事項がエジプト政府により実施される必要がある。

(1)本計画により整備された堰の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。

(2)活動に必要な人的手当及び予算措置を行うこと。

2.無償資金協力の必要性

2ー1.必要性

(1)エジプトにおける可耕地面積は、全国土の約4%である。降雨がほとんどないエジプト国の農産物生産は、一部地域を除いてナイル川からの灌漑用水に全面的に依存しており、灌漑農地面積は農地全体の60%を占めている。

(2)本件計画の対象であるバハルヨセフ灌漑用水路は、エジプト全土の耕地面積の11%(323,400ヘクタール)を灌漑する重要な農業基幹施設である。しかしながら、この地域の農業の生命線である最上流に位置するダハブ堰は、1900年の建設から100年以上が経過しており、老朽化が著しいため堰上流の受益地への安定した水供給が達成できていない。このため、受益地の灌漑用水が不足し、農業生産性向上の阻害要因となっている。

(3)このようなことから、本計画の実施機関である水資源灌漑省は、2005年に策定された「国家水資源計画2017」に基づき、老朽化した灌漑施設の改修事業を進めるなど、灌漑用水の安定供給による農業生産性の向上に取り組んでおり、我が国に対し無償資金協力を要請したものである。

(4)我が国はこれまで、ラフーン堰(1997年)、マゾーラ堰(2002年)、サコーラ堰(2006年)の改修を無償資金協力にて実施している。今回の計画では、バハルヨセフ灌漑用水路の最上流に位置するダハブ堰を改修することにより、37,170ヘクタールの農地に受益するほか、下流3堰に必要量の灌漑用水量を安定して放流するという重要性がある。

2ー2.効率性

(1)新堰に設置されるゲートの操作パネルや予備発電機を収納するために管理棟の上屋部分を先方負担とした。これにより、上屋建設費分のコストが縮減された。

(2)既設ダハブ堰の併設橋幅員は4メートルであるところ、要請書では12メートルへの拡張が示されていたが、既設ダハブ堰の交通量調査の結果から、車道部4メートル×2車線+歩道部1メートル×2両側=10.0メートルとした。したがって、幅員縮小に伴う材料費節減が為され、コストが縮減された。

(3)既設ダハブ堰は、バハルヨセフ水路幅約88メートル(ゲート数20門)に対して全断面が通水断面であった。これは、既設堰建設当時では、バハルヨセフ水路がナイル川の洪水の影響を受けていたため、洪水時には全断面を通水させる必要があったためであるが、現在では、ナイル川は既にアスワンハイダムによる洪水調節が行われており、バハルヨセフ水路では洪水の影響はないことから水路全断面を通水させる必要はない。以上の条件を考慮し、本改修計画では、堰下流側に必要となる水量を確保するとの観点から、堰通水幅を既設堰の約半分である約40メートル(ゲート数4門)とした。これにより、ゲート門数の節減が為され、コストが縮減された。

2ー3.有効性

(1)本計画の実施により、以下のような成果が期待される。

  • 灌漑地への灌漑配水量が増加する。
  • 農作物の年間生産量の増加が期待される。
  • 同地域の農家の生活レベルが向上することが期待される。

(2)エジプトは、第5次経済社会開発五カ年計画(02-07年)において、農地・水資源の効率的利用を農業分野における主要課題としてあげており、また、水資源灌漑省が、2005年に策定された「国家水資源計画2017」に基づき、灌漑用水の安定供給による農業生産性の向上に取り組んでいることから、本計画の実施は、同国の開発計画に合致する。また、我が国の対エジプト援助方針においても、「貧困削減と生活水準の向上」を重視した支援を行うこととしており、地方の貧困削減に資する本計画は、我が国の援助方針とも合致する。

(3)さらに、本計画の実施により、日本とエジプトの二国間関係強化への効果が期待され る。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)エジプト政府からの要請書

(2)JICAの基本設計調査報告書(JICAを通じて入手可能)

(3)無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kaikaku/ugoki/sochi/3_komoku/3.html



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