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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成20年4月3日
評価責任者:無償資金・技術協力課長 柴田 裕憲

1.案件名

1ー1.供与国名

 カンボジア王国

1ー2.案件名

 「コンポンチャム州病院改善計画」

1ー3.目的・事業内容

 本計画は、保健医療体制が全国的に遅れているカンボジアにおいて、同国最大の人口を擁するコンポンチャム州における保健医療体制の整備に資することを目的とする。供与限度額10億3,900万円。(平成20年度:2億1,600万円、平成21年度:4億7,100万円、平成22年度:3億5,200万円)であり、コンポンチャム州病院の外科・産婦人科分野の検査機材や診療施設の整備を内容とする。

1ー4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき事項

 以下の事項がカンボジア王国政府により実施される必要がある。

(1)本計画により建設された施設及び供与された機材の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。
(2)活動に必要な人的手当及び予算措置を行うこと。

2.無償資金協力の必要性

2ー1.必要性

(1)1970年代から20年間続いた内戦の結果、カンボジアの保健医療体制は全国的に立ち後れが目立ち、人材の育成、サービスの向上、インフラの整備等全般にわたる改善・強化が急務の課題となっている。特に、州レベル以下の医療機関においては、設備・施設の老朽化に伴い、保健医療サービスの質・量の低下が著しく、患者の搬送・受入体制が十分に機能していないことが問題となっている。(カンボジアの妊産婦死亡率は10万人あたり440人、乳幼児死亡率は千人あたり97人(2004年)と世界で25番目に高い数値となっており、周辺国に比べても劣悪な状況となっている。)

(2)コンポンチャム州は、首都プノンペンから北東約120キロメートルに位置し同国で最大の人口を擁する州であり、本計画の対象であるコンポンチャム州病院は病床数260床、主な施設21棟(延べ床面積約9,400平方キロメートル)を有する同州内最高次の医療機関である。しかしながら、同病院の施設の多くは老朽化が進んでおり、また医療機器も老朽化と不足が顕著であるため、適切な保健医療サービスを提供することが困難な状況となっている。特に、同病院には交通事故や産婦人科疾患による患者が多いにも拘わらず、外科・産婦人科病棟と手術棟には床の陥没や雨水の漏水が見られ、また、病室も入院患者数の増加に対応しきれず廊下や屋上に病床を配置するなど不衛生な環境となっており、診療に支障を来す状況となっている。

(3)このような状況の下、カンボジア政府は我が国に対し無償資金協力の要請を行ってきたものである。

2ー2.効率性

 本件を実施するに当たっては、規模の観点からは、カンボジアの医療技術者の絶対的な不足を考慮して、コンポンチャム州病院における現在の医療技術者で運営可能な計画とした。(例えば、病棟の規模については、現在の外科医師数で対応可能な手術件数を考慮し、外科病棟100床及び産婦人科病棟30床を整備)。内容の観点からは、施設・機材とも、老朽化により危険な外科産婦人科部門、外科手術部門、外科手術部門と連携が必要な救急部門、及びX線検査部門に主な対象を絞るなど、案件としての効率性を確保している。

2ー3.有効性

 本件の実施により、以下のような成果が期待される。

(1)本案件の実施により、以下のような成果が期待できる。

(イ)コンポンチャム州病院の整備を通じ、同州における患者搬送・受入体制を強化するとともに、地域住民が享受する保健医療サービスの質・量を向上させることが期待できる。直接効果としては以下のとおり。

1) 病棟の整備により、既存棟の構造的危険が回避され、廊下や屋上に病床を設置している不衛生な環境を改善できる。また、入院患者数の増加が見込まれる。

2)外科・産婦人科病棟内に分娩室及び母子感染予防活動室を整備することにより、母子感染予防の効果が期待される。

3)手術に係る衛生環境の改善により、院内感染の防止効果が向上するとともに、適切な看護が可能となる。

4)急増する交通事故等の救急患者の診療に迅速に対応することが可能となる。外科の手術件数が増加することが見込まれる。

5)超音波室及び心電計室をX線検査棟内に整備・統合することにより、機材の集中管理が効果的に行われ、質の高い医療サービスの実施が可能となる他、スタッフに対する放射線防護が確立する。鳥インフルエンザウィルス等に関する世界保健機構(WHO)の勧告が遵守され、検査スタッフ及び近隣住民の安全が確保される。

(2)さらに、本計画の実施により、日本とカンボジア王国の二国間関係強化への効果が期待される。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)カンボジア王国政府からの要請書

(2)JICAの基本設計調査報告書(JICAを通じて入手可能)

(3)無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kaikaku/ugoki/sochi/3_komoku/3.html



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