2025年版開発協力白書 日本の国際協力

3 大洋州地域

日本と太平洋島嶼(しょ)国は、太平洋で結ばれた友人であり、歴史的にも深いつながりがあります。また、太平洋島嶼国の国々は広大な排他的経済水域(EEZ)注12を有しており、海上輸送の要であるとともに、日本のかつお・まぐろ漁業に必要不可欠な漁場を提供しています。さらに、この地域の平和と安定は、太平洋の隣人である日本の平和と安定にも直結します。

日本とこのような関係にある太平洋島嶼国の持続可能な発展は重要であり、日本は長年にわたり、二国間の取組や太平洋・島サミット(PALM)プロセスを通じた協力を進め、太平洋島嶼国との信頼関係を築いてきました。

●日本の取組

フィジーにおける無収水対策プロジェクトで、給水管接続に関する研修を行う福岡市職員(写真:JICA)

フィジーにおける無収水対策プロジェクトで、給水管接続に関する研修を行う福岡市職員(写真:JICA)

2025年5月、マーシャル諸島を訪問し、1983年に日本の協力によって建設されたマジュロ橋を視察する生稲外務大臣政務官(当時)

2025年5月、マーシャル諸島を訪問し、1983年に日本の協力によって建設されたマジュロ橋を視察する生稲外務大臣政務官(当時)

2026年1月、バヌアツを訪問し、建設・整備を支援したバヌアツ国立病院を視察する島田外務大臣政務官(写真左から1人目)

2026年1月、バヌアツを訪問し、建設・整備を支援したバヌアツ国立病院を視察する島田外務大臣政務官(写真左から1人目)

太平洋島嶼国は、経済が小規模で特定の産業に依存していること、領土が広い海域にまたがっていること、国際市場への参入が困難なこと、気候変動の影響や自然災害の被害を受けやすいことなど、小島嶼国に特有な共通の脆(ぜい)弱性を抱えています。

日本は、太平洋島嶼国の持続可能な発展のためには、こうした脆弱性に起因する各国の社会・経済的な課題を克服するための協力のみならず、地域全体と共に取り組むことが不可欠との考えの下、1997年以降、太平洋島嶼国との首脳会議であるPALMを3年ごとに開催しています。

太平洋島嶼国・地域は地域協力の枠組みである太平洋諸島フォーラム(PIF)注13メンバーとしての一体性を拠(よ)り所としており、PIFとして、2022年に、2050年の太平洋島嶼国地域における政治・経済・社会等のあるべき姿と戦略的方策をまとめた「ブルーパシフィック大陸のための2050年戦略(2050年戦略)」を発表しました。日本は一貫してこの戦略に対する強い支持を表明しています。

2024年7月に東京で開催されたPALM10では、日本と太平洋島嶼国・地域が共通の課題に取り組みながら、未来に向けて共に歩む関係の構築に向け、PIFの2050年戦略に定められる7つの分野注14における具体的な取組を共同行動計画で示しました。日本は、この共同行動計画に基づき、着実に取組を進めています。

例えば、日本は、デジタル分野の「技術と連結性」の強化の観点から、2021年以降、米国、オーストラリアと共に、東部ミクロネシアの海底ケーブル敷設のために連携してきています。このプロジェクトにおいては、日本は、2023年6月にキリバスおよびナウルとの間で無償資金協力に関する書簡の署名・交換を行い、海底ケーブルの敷設の支援を開始したほか、2024年6月にはキリバスとの間で、7月にはナウルとの間で、無償資金協力の追加贈与につき署名しました。また、2025年3月にはミクロネシア連邦における陸揚局の設置を支援する無償資金協力に関する書簡の署名・交換を行いました。さらに、7月から9月にかけて、キリバス、ナウル、ミクロネシア連邦で本事業のケーブル陸揚式が行われるなど、支援を着実に進めています。

2025年には、日本は、トンガにおいて、ファアモツ国際空港の国際線旅客ターミナルビルの拡張・改修等の整備を支援することを決定しました。トンガは約170の島々で構成され、航空路が人々の生活に重要な役割を担っており、同国および地域の連結性の強化や産業基盤の強化が期待されます。

太平洋島嶼国は気候変動に脆弱で災害リスクの高い地域であり、災害が頻発する日本との共通の課題を抱えています。日本の強みである防災の技術や知見を活用し、太平洋地域の気象・自然災害情報分析の高度化および共有体制の強化に協力することは、大洋州地域だけでなく日本の災害リスクも削減するのみならず、重要なシーレーン上の関係船舶の円滑な航行の確保および同地域における日本漁船の安全操業にも寄与することから日本にも裨(ひ)益するものです。また、同地域において日本の関係研究機関が行う気候変動とその影響の調査・分析、海洋環境の保全・再生、水産資源の持続可能な利用などの様々な事業が円滑に行われることは、日本自身の課題解決力の向上にもつながります。2025年3月、日本とフィジーは、開発途上国と共に課題解決を図るオファー型協力の一環として、太平洋島嶼地域の気象分野における中核拠点であるフィジー気象局の研修センター、測器センターおよび防災啓発展示施設の整備への協力に関する書簡の署名・交換を行いました。また、同年5月、約110の有人島からなる同国でサイクロンなどの自然災害が発生した際に人命救助などの緊急対応能力を強化するため、大型船(災害対応船)の供与を行う協力に関する書簡の署名・交換を行いました。

太平洋地域の海洋と環境の持続的な管理は、共に海洋資源を不可欠な利益とする日本と太平洋島嶼国の共通の課題です。特に、漁業・海洋資源の監視と持続可能な利用、海洋安全保障および海上安全分野における能力構築と機材などの提供、廃棄物管理と汚染削減、違法・無報告・無規制(IUU)漁業対策、太平洋の生物多様性環境と資源の保全といった分野において、協力して取り組んでいます。

この分野における各国の能力向上のため、日本は、ナウルに対する警備艇の供与、ソロモン諸島に対するソロモン国立大学「水産業研究センター」の設置、パプアニューギニアに対する国立水産大学の臨海教育施設や訓練船などの整備について協力しています。また、バヌアツ、フィジー、パプアニューギニア、マーシャル諸島およびミクロネシア連邦に対し、水産資源量の増減や分布の持続的な確認などを行う漁業調査監視船や水産関連機材を供与するなど、持続可能な発展を後押ししてきています。

人的交流・人材育成は、日本と太平洋島嶼国の「キズナ」のさらなる強化にとって不可欠です。太平洋地域には、50年以上前から、4,000人以上のJICA海外協力隊員が派遣され、教育、保健、建設、環境、IT、スポーツ、文化など、幅広い分野での社会改善のため、太平洋の人々と共に生活し、その国の発展に力を尽くしてきました。また、太平洋島嶼国・地域の若者が日本への理解を深め、将来の友好の架け橋となるよう、日本は、JENESYS注15による青年招聘(へい)・派遣プログラムや、国費外国人留学生制度などの人的交流プログラムを推進しています。

日本は、こうした様々な取組を通じて、強靭(じん)で安定かつ繁栄した太平洋島嶼国地域の構築のため、共に取り組んでいきます。


  1. 注12 : 自国の領海の外側に設定できる経済的な権利が及ぶ水域。
  2. 注13 : 2025年11月現在、PIF加盟国・地域は、オーストラリア、クック諸島、ミクロネシア連邦、フィジー、フランス領ポリネシア、キリバス、ナウル、ニューカレドニア、ニュージーランド、ニウエ、パラオ、パプアニューギニア、マーシャル諸島、サモア、ソロモン諸島、トンガ、ツバル、バヌアツの16か国および2地域。
  3. 注14 : (1)政治的リーダーシップと地域主義、(2)人を中心に据えた開発、(3)平和と安全保障、(4)資源と経済開発、(5)気候変動と災害、(6)海洋と環境、(7)技術と連結性。
  4. 注15 : 日本とアジア大洋州地域間の人的交流。Japan-East Asia Network of Exchange for Students and Youthsの略称。
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