(2)信頼の構築
バングラデシュでポリオ予防接種の実施状況を確認するJICA海外協力隊員(写真:JICA)
エクアドルのサボテン農園において、果実の市場価値の向上策を検討するJICA海外協力隊員
かつての教え子がトンガ首相と駐日トンガ大使に就任し、30年以上を経て、対面を果たした元協力隊員。写真右がフアカヴァメイリク首相(当時)、写真左がマンギシ駐日大使。
日本が70年以上の国際協力の歴史を通じて培ってきた国際社会からの信頼は、日本にとって貴重な財産となっています。生活インフラの面などで厳しい環境の地域にまで足を運び、派遣先の社会に深く根ざしながら現地の人々と共に汗を流して活動する協力隊員は、まさに日本の草の根外交の最前線を担っているとも言える存在であり、日本と対象国との深い信頼関係の構築に大きく寄与しています。
協力隊ならではの現場に寄り添った取組の一例として、バングラデシュにおけるポリオ対策が挙げられます。同国の首都には援助機関が派遣する医療専門家が多く常駐しているため、協力隊は、必ずしも支援が十分に行き届いていない地方の村へと足を運び、現地語を駆使しながらポリオの予防接種の重要性について村人を粘り強く説得してきました。都市部の病院に行く経済的な余裕がない村人たちに対するポリオに関する地道な啓発活動は、予防接種率の向上という定量的成果のみならず、現地の人々との絆(きずな)の構築にもつながっています。これは、「現地の人と共に」を活動の本質とする協力隊員だからこそ生み出せる信頼関係です。
また、長期間にわたって隊員を派遣することで、JICA海外協力隊、そしてより広く日本に対する信頼感を高めることに貢献しています。長年の協力隊活動を通じ脈々と続いてきた日本と受入国との強固な関係を基盤としつつ、草の根で活動する隊員が蒔(ま)いた新たな交流の種が少しずつ芽を出し、互いの文化や精神を尊重し合う形で日本と受入国との信頼関係が築かれてきました。例えば、1979年から1980年までに、ケニアの中学校に理数科の教員として派遣され、ソロバンを用いつつ数学を教えた青年海外協力隊員の教え子には、同国園芸作物開発公社の総裁や歯科医、大学の物理学の教授、会計士など、理数系の頭脳を武器として活躍している人々が多くいます。誠実で粘り強い草の根活動で構築されてきた関係は、長い年月を経て国民の記憶に深く刻まれ、両国の友好の象徴となるだけでなく、国家間の関係強化にもつながっています。
60年の歩みを経た今、JICA海外協力隊の活動は国境を越えて築かれた信頼の積み重ねとして、日本のODAが目指す「共創」の実現を力強く支えています。文化や価値観の違いを乗り越えることで生まれる信頼は、援助する側とされる側の枠を超えた真のパートナーシップの結果であり、現地の人々と共に課題を解決するその姿勢は、日本の国際協力の根幹を成しています。
