2 JICA海外協力隊の60年間の功績
JICA海外協力隊の長年にわたる功績として、開発途上国の課題解決や、草の根レベルでの日本政府と相手国政府間の友好・信頼関係の構築が挙げられます。
協力隊としての経験がその後のキャリア構築の足がかりとなり、任務終了後も、隊員活動を通じて培った経験を武器に、国際機関や地方自治体、民間企業など、より専門性の高い職場で活躍する協力隊員も数多くおり、国内の災害復興や日本の地方創生に貢献する隊員経験者の姿も見られます。
(1)開発途上国の課題解決
マラウイにおいて、「一村一品運動」として、ピーナッツオイルを商品化したJICA海外協力隊員(写真:JICA)
ルワンダにおける「水の防衛隊」の活動風景(写真:JICA)
サモアの気象局において、無償資金協力で整備された気象観測装置の維持管理や、ICT技術(情報通信技術)を活用した気象情報の配信などの活動を行うJICA海外協力隊員(写真:JICA)
ザンビアで地域ボランティアと共同で結核啓発活動を実施するJICA海外協力隊員
約180の職種において活動するJICA海外協力隊は、強いチャレンジ精神を持って、現地の人々と共に多様な分野における世界の課題に立ち向かってきました。現場のニーズに寄り添った活動は、開発途上国の経済・社会の基盤を強化し、地域の自立を支える原動力となっています。
協力隊が取り組む世界的な課題の一つとして挙げられるのが、食料不足です。今後の人口増加や気候変動にも対応しうる食料増産のための支援として、「食用作物・稲作栽培」や「コミュニティ開発」の職種の隊員が食料問題への対処に貢献しています。例えば、急速な経済成長および人口増加が進んでいるアフリカ諸国では、調理のしやすさや長期保存が利くことからコメの消費量が伸びており、日本の稲作技術を活用した協力が行われています。協力隊員は、水管理や苗作り、共同作業体制の整備など、農業の生産性を支える基礎的な技術を現地農家と共に作業しながら伝えることで、自立的な営農の確立を支援しています。これらの取組は、地域の食料安全保障と農村経済の安定化に寄与しています。
このほかに、「コミュニティ開発」の職種で派遣され、地域活性化に励む隊員もいます。「地域おこし」や「まちおこし」が国全体の発展につながることは、日本も開発途上国も変わりません。隊員の中には、日本生まれの地域おこしのコンセプトである「一村一品運動」注6を開発途上国にも展開し、新たなビジネスを派遣先の住民と共に生み出し、貧困や過疎化といった課題の解決のために活動しています。そのほか、スリランカで生計向上に取り組んだ隊員が、帰国後自身でフェアトレード事業を開業し、任期終了後も途上国の自立に向けた取組に携わるといった事例もあります。
さらに、人々の生活と開発の根幹をなす資源である水の管理にも取り組んでいます。2008年から、JICA海外協力隊のうち、アフリカの安全な水と衛生分野の課題に挑む隊員を「水の防衛隊(Water Security Action Team :W-SAT)」として派遣し、各国のニーズに応じた安全な水の確保や衛生環境の改善などに取り組んでいます。
このように、JICA海外協力隊は、途上国が直面する多様な課題の解決に向けて草の根レベルで着実な活動を継続しています。
- 注6 : 1970年代末に平松大分県知事(当時)が提唱したことから始まった運動。「ローカルにしてグローバル」をキャッチフレーズに、地域資源をいかして、世界レベルの特産品を育てることにより地域活性化を目指す取組。
