2025年版開発協力白書 日本の国際協力

第Ⅰ部 JICA海外協力隊60周年─世界と日本を変える力─

グアテマラの地方で、モデル校を巡回し、模範授業や教員支援を行うJICA海外協力隊員と農村部の学校に通うこどもたち(写真:JICA)

グアテマラの地方で、モデル校を巡回し、模範授業や教員支援を行うJICA海外協力隊員と農村部の学校に通うこどもたち(写真:JICA)

1 JICA海外協力隊の全体像─世界と日本を変える力─

独立行政法人国際協力機構(JICA)海外協力隊は、2025年で発足60周年を迎えました。世界各地におけるボランティア活動と、ODAを活用した技術協力が融合したユニークな国際貢献として世界に認知され、これまで延べ58,000人以上の隊員が、派遣先の99か国において、まさに日本の「顔の見える開発協力」として開発途上国の発展に貢献してきました。

JICA海外協力隊は、開発途上国の経済・社会の発展のみならず、現地の人たちの日本への親しみを深めることを通じて、日本とこれらの国との間の相互理解・友好親善にも寄与しており、その貢献は国内外で高く評価されています(国内外の声については「JICA海外協力隊 ─世界と日本を変える力─」を参照)。また、活動を通じて開発途上国における様々な課題に取り組んできた協力隊員は、帰国後に社会課題解決を目指して起業したり、日本企業の途上国への進出や日本の地方自治体の地域活性化に貢献するなどしており、協力隊の経験を社会に還元するという側面も注目されています。ここでは、発足当時から今日に至るまでの協力隊の歩みを振り返ります。

(1)60年の歩み

1965年12月に初の日本青年海外協力隊員がラオスに向けて出発する様子(写真:JICA)

1965年12月に初の日本青年海外協力隊員がラオスに向けて出発する様子(写真:JICA)

国際社会から多くの支援を受けながら、国の再建・復興を進めた日本は、1950年代から国際協力を開始しました。このような状況の中、当時の日本の青年の開発協力活動への関心の高まりを形にすべく、民間の青年団体や政治家が主導する形で希望者を海外に派遣する計画が構想され、1965年4月20日に「日本青年海外協力隊」が発足しました。この事業の実施は当時の海外技術協力事業団注1に委託され、同事業団の中に日本青年海外協力隊事務局が設置されました。同年12月に、記念すべき初代隊員5名がラオスに派遣され、その後、アフリカ(1966年)、中東(1967年)、中米(1968年)、大洋州(1972年)、南米(1978年)、東欧(1992年)と活動地域を広げていきました。

1974年8月、日本政府が行う国際協力の実施機関として国際協力事業団(現JICA)が発足し、その重要な事業の一つとして受け継がれ、名称も「青年海外協力隊」へと改称されます。

1990年には、社会の高齢化に伴い、長い人生をより有意義なものにしたいと望み、ボランティア活動に関心を寄せるシニア世代の増加という時代の要請に応える形で「シニア協力専門家」が創設され、1996年度から「シニア海外ボランティア」と改称されました。

また、海外の日系人および日系人社会が今後一層の充実と発展に向けて努力を重ねることは、結果的にはその在住国の発展に貢献し、日本にとっても望ましい状況につながり、日本政府としても可能な限り彼らを支援することが有益であるとの考えの下、1996年には「日系社会青年ボランティア」および「日系社会シニア・ボランティア」という新たな制度が設置されました。

2016年には、アジア地域の経済と社会の発展への貢献が認められ、青年海外協力隊が「アジアのノーベル賞」と言われるラモン・マグサイサイ賞を受賞しました。

2018年に、派遣体系などを見直し、区分を「青年海外協力隊/海外協力隊、日系社会青年海外協力隊/日系社会海外協力隊」と、一定以上の経験・技術が必要な案件に対応する「シニア海外協力隊、日系社会シニア海外協力隊」とし、これらを含む総称を「JICA海外協力隊」に変更して、今日に至ります。

2020年に、JICA海外協力隊は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、全世界の隊員が一時帰国を余儀なくされるという事業開始以来初の事態に見舞われました。再赴任の目処が立たないまま待機期間が延びていく中、日本国内で様々なボランティアやオンライン授業などの活動を続ける隊員の姿がありました。そして長期に及んだ行動制限が緩和され始め、2020年10月のベトナムを皮切りに次々と派遣が再開され、2023年7月、派遣再開後初めて派遣中隊員が1,000名を超えました。60年前にラオスへの派遣をもってその歩みを始めたJICA海外協力隊は、コロナ禍の苦境を乗り越え、歴史を受け継ぎ、現在も世界各地で活動しています。

JICA海外協力隊は、①開発途上国の経済・社会の発展、復興への寄与、②異文化社会における相互理解の深化と共生、③ボランティア経験の社会還元の三つの目的を掲げて発足し、その根幹の理念は今も変わりません。国際協力の志と技術・知識・経験などを有する20歳から69歳までの日本国民が、計画・行政、商業・観光、公共・公益事業、人的資源、農林水産、保健・医療、鉱工業、社会福祉、エネルギーの9分野、約180職種にわたって、開発途上国の地域住民と共に生活し、働き、相互理解を図りながら、その地域の経済および社会の発展に協力・寄与し、帰国後は培った経験をいかしながら、世界、そして日本の社会課題解決に貢献しています。

図表Ⅰ-1 JICA海外協力隊の今日までの歩み
図表Ⅰ-2 JICA海外協力隊の種類

  1. 注1 : 開発途上国における技術協力を実施するために1962年に設立された特殊法人。後にほかの組織と統合される形で1974年に国際協力事業団(現JICA)が発足。
このページのトップへ戻る
開発協力白書・ODA白書等報告書へ戻る