国際協力の現場から 04
セカンドキャリアで挑む、開発途上国におけるビジネス支援
~国連ボランティアとして世界に貢献する日本人の活躍~
ジブチ派遣前にトイリー・クルバノフ国連ボランティア(UNV)事務局長と握手を交わす村田氏(写真左)(写真:UNV)
カドル・フセイン氏と共に現地の農業組合で聞き取り調査を行う村田氏(写真中央)(写真:UNV)
アフリカ北東部の「アフリカの角」地域に位置するジブチは、年間の降雨量が極端に少なく、干ばつが起こりやすいため砂漠化が進んでおり、耕作に適した土地は国土の0.1%ほどしかありません。食料の約9割を輸入に依存していることから、世界的な食料価格の高騰を受け、現地の人々は食料不安に直面しています。
こうした状況の改善を目指し、日本政府は「サブサハラ・アフリカ諸国における気候変動・干ばつ等が引き起こす水食料危機に対する安定化支援」を通じて、国連エキスパートボランティアとして、国連開発計画(UNDP)ジブチ事務所に村田淳(あつし)氏を派遣しました。同氏は、定年退職後、「国連で働いてみたい」という夢を叶えるべく国連ボランティアアサインメントに応募し、60歳以上で派遣された初の日本人ボランティアです。
村田氏は2024年12月から10か月間、日本での食品やコンサルティング業界での経験をいかし、国連食糧農業機関(FAO)とUNDPの共同プロジェクト(SCALA)注1において、ジブチの農産物市場を分析し、バリューチェーンの構築を支援しました。同氏は赴任当初の現地農家の状況について、「太陽光発電パネルの設置や灌漑(かんがい)システムの改善を通して生産量は安定しつつあったものの、生産から流通、販売まで一連の流れを可視化する中で、農産物の販売先が限られていることがわかり、農家が購入者や市場にアクセスできる仕組み作りが必要であると実感した。」と語ります。そこで、村田氏が提案したのが生産者と購入者の直接取引でした。現地採用の国連ボランティアであるカドル・フセイン氏とタンデムチーム注2を組み、同氏の現地における知見を融合しながら、農家と大手ホテルの取引を仲介することで、双方にとって有益な契約を成立させることができました。決済方法を現金払いとするなど、銀行口座を有していない現地農業組合の実情に合わせた取引条件となるよう工夫を凝らした点についても振り返りながら、村田氏は「小規模ではあったが、同国にとってパイロットケースとなる有意義な取引になった。」と、カドル氏への感謝と今後の発展への希望を語ります。農耕地の灌漑事業支援を受けた農家からは、「このプロジェクトは地域社会に大きな変化をもたらし、今では農産物を栽培・販売することに対してより積極的に情熱を持って取り組んでいる。」との声が聞かれ、この取組の効果が確認できます。
村田氏は同時にコンサルタント業界での経験をいかし、民間セクター開発支援にも携わりました。ジブチでは、若者の失業率の改善や雇用機会の創出が同国の持続的な成長にとって大きな課題となっている現状を踏まえ、同氏はジブチの住宅建設ブームに呼応する形で、住宅建築事業において若者を短期で雇用し、職業訓練を受けながら働くことができるように立案するなど、民間セクター開発のためのプロジェクト提案書の作成にも多数携わりました。
村田氏は「UNDPの現地職員を通じてジブチ政府関係者とも接点を得たことや、農村地区を訪れた際に日本人のUNDP職員に初めて会ったと喜んでもらえたり、日本政府や日本企業の役割に期待が示される場面も多く、短期間の参画ではあったが、日本とジブチの友好関係の構築に貢献できたのではと感じている。」と国連ボランティアとしての活動を振り返り、「開発分野において官民連携がより重要となる中で、国際協力の現場では即戦力が求められており、日本の民間企業で培ったキャリアを十分役立てることができる。」と、自身に続く意欲ある人の新たな挑戦を後押しします。今後、村田氏のように経験と知見に富んだ日本のシニア人材が、開発協力分野において、ますます活躍することが期待されます。
注1 Scaling up Climate Ambition on Land Use and Agricultureの略称。
注2 開発等の分野においてインターナショナル国連ボランティアと現地のナショナル国連ボランティアを結び付ける仕組み。現地の経験とグローバルな専門知識を融合させて知見の共有を促進するためのUNVのイニシアティブ。
