国際協力の現場から 01
干ばつに負けない農業へ─ジンバブエの小規模農家を支える挑戦─
~高品質のゴマを生産して日本に輸出し、農家の未来を照らす~
支援を受けた小規模農家が収穫したゴマから不純物を取り除いている様子(写真:WFP)
日本の商社職員がゴマ栽培地を視察し、小規模農家と協議する様子(写真:WFP)
かつて「南部アフリカの穀倉地帯」と呼ばれたジンバブエでは、エルニーニョ現象による干ばつの影響で、主食である穀物の不作が続き、多くの小規模農家が窮地に立たされています。こうした状況を受け、気候変動に対する強靭(じん)性を高め、持続可能な農業の導入による、小規模農家の生計向上が急務となっています。
日本は、ジンバブエに対して食料支援(米、雑穀、食料油等)も行いつつ、2024年11月には、干ばつに強く、日本も有力な輸出先であるゴマに着目し、世界食糧計画(WFP)と連携し、小規模農家が市場志向型農業を実践するためのゴマ栽培の促進およびバリューチェーン構築支援を開始しました。
本プロジェクトの中核を担うWFPジンバブエ事務所の大橋知加(ちか)氏は、青年海外協力隊(現JICA海外協力隊)で培った現場主義を大切にしながら、国連機関で10年以上環境管理分野や防災、人道支援分野などに携わってきました。本事業の目的について、「農作物の栽培や機材整備のみならず、保管や出荷、販売や輸出入を含む、農産物が消費者に届くまでの一連のプロセスを『食料システム』として捉え、システム全体の強靭性を高めることで、農家の収入の安定化と収入源の多様化を目指す。」と語ります。本プロジェクトによるバリューチェーン構築に当たっては日本の商社の知見がいかされたほか、日本はWFPのパートナーとして本プロジェクトに関わった現地NGOに対して、草の根・人間の安全保障無償資金協力を通じて、ゴマを保管するための倉庫および一時保管用コンテナを供与しており、国際機関、民間企業、ジンバブエ政府、現地NGOと広く連携したジンバブエに対する協力が実現しています。
大橋氏は「現地の人に会い、現場を知り、想像力を持って支援方法を共に考えることが重要」と、現地の人々に歩み寄ることの大切さを語ります。品質基準や残留農薬の規制が厳しい日本への輸出を目指し、約3,000世帯の農家に対して、無農薬栽培の手法や収穫時期、加工方法などについて何度も農村に商社職員と共に足を運び、丁寧に指導した上で、現地の気候に適したゴマの改良種子を提供したところ、初年度には、高品質のゴマ261.5トンが食用ゴマ油を製造する日本企業に輸出され、地元経済に約21万ドルもの利益がもたらされました。現地の農家は「干ばつで、トウモロコシなど他の穀物は全滅してしまったが、ゴマだけは収穫でき、収入を得ることができた。日本基準の品質であり高値で売れることもありがたい」と喜びの声を上げます。同プロジェクトとの相乗効果を狙い、現地NGOを通じてゴマを保管するために建設された倉庫は、ゴマの適切な品質管理に貢献し、集荷拠点としても機能しており、中間業者等による不当な価格での取引、小規模農家の搾取防止にも役立っています。WFPは本プロジェクトが終了する2027年末までに、実施地区を拡大し、1.4万世帯以上への支援を目指すとともに、他の地域への普及可能性についても検討しています。
大橋氏は、「現地において自立したコミュニティーを構築するに当たって、日本が開発した小規模農家向け市場志向型農業振興(SHEP)アプローチ注1を通じて『食べるための農業』から『稼ぐための農業』への転換を促すことは重要であり、同アプローチとの連携を強化していきたい。」と語ります。また、ジンバブエは識字率が相対的に高く、政府が若者の育成に力を入れていることも踏まえ、「ジンバブエの若者のポテンシャルは高く、人々の日本への信頼は厚い。日本企業との連携を進めていく上で、若い世代の力に期待したい。」と、未来への希望を語ります。
干ばつや価格変動といった課題に直面しながらも、ジンバブエの小規模農家は「日本に輸出できる高品質な作物を作りたい」と誇りを持って栽培に取り組んでいます。多様なアクターの連携によって生まれた同国のゴマ産業は、新しい収入源をもたらすだけでなく、人々が将来に希望を持てる大きな一歩となっています。日本は、今後も小規模農家への支援を通じ、食料安全保障と気候変動に対する強靭性を強化する取組を継続していきます。
注1 用語解説を参照。
