2024年版開発協力白書 日本の国際協力

(3)質の高いインフラ

バングラデシュ国内および近隣諸国との輸送ネットワーク増強が期待される有償資金協力「ジャムナ鉄道専用橋建設計画」(写真:大林組・東亜建設工業・JFEエンジニアリングJV)

バングラデシュ国内および近隣諸国との輸送ネットワーク増強が期待される有償資金協力「ジャムナ鉄道専用橋建設計画」(写真:大林組・東亜建設工業・JFEエンジニアリングJV)

開発途上国の自立的発展には、人々の生活や経済活動を支え、国の発展の基盤となるインフラが不可欠です。しかし、開発途上国では依然として膨大なインフラ需要があり、2040年までのインフラ需給ギャップは約15兆ドルとも推計されています注28。開発途上国において、「質の高い成長」注29を実現するためには、この膨大なインフラ需要に応える必要がありますが、ただ多くのインフラを整備するだけでなく、開放性、透明性、ライフサイクルコストから見た経済性、債務持続可能性等を考慮していくことが非常に重要です。

日本は、海上・航空等の安全管理、防災・強靭(じん)化技術、気候変動・環境の対応に資する都市開発、安全・安心の交通システム、電力・エネルギーインフラや水供給等に強みを有しています。これらの強みをいかして相手国の社会課題解決につなげるため、開発途上国の経済・開発戦略に沿った形でインフラ整備というハード面の支援に、制度整備、運営・維持管理、人材育成などのソフト面での協力を組み合わせることにより、「質の高いインフラ」解説の整備を推進しています。

●日本の取組

インドにおけるコールドチェーン構築を目的とした官民連携事業で、日本企業が開発した冷蔵コンテナを利用した貨物鉄道の低温輸送サービスの開通セレモニーの様子(写真:JICA)

インドにおけるコールドチェーン構築を目的とした官民連携事業で、日本企業が開発した冷蔵コンテナを利用した貨物鉄道の低温輸送サービスの開通セレモニーの様子(写真:JICA)

タジキスタンにおける橋梁(りょう)の点検・診断、補修、維持管理に関する人材育成支援の様子(写真:JICA)

タジキスタンにおける橋梁(りょう)の点検・診断、補修、維持管理に関する人材育成支援の様子(写真:JICA)

日本は、より多くの人々が良質なインフラを利用できるよう「質の高いインフラ」の国際スタンダード化を目指し、国際社会と連携して「質の高いインフラ」の重要性を発信してきました。2016年5月に日本が議長国として開催したG7伊勢志摩サミットで合意された「質の高いインフラ投資の推進のためのG7伊勢志摩原則」が、「質の高いインフラ投資」の基本的な要素について認識を共有する第一歩となり、2019年6月に日本が議長国として開催したG20大阪サミットでは、質の高いインフラ投資の促進に向けた戦略的方向性を示す「質の高いインフラ投資に関するG20原則」注30が承認されました。日本は、各国や国際機関とも連携し、その普及・実施に取り組んでおり、「質の高いインフラ投資」の重要性については、様々な二国間会談や多国間会議の場において確認されてきています。

2022年6月のG7エルマウ・サミットでは、世界のインフラ投資ギャップを埋めるため、G7が連携して質の高いインフラ投資を促進するためのイニシアティブであるグローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)注31が立ち上げられました。G7は、PGIIの下、5年間で、質の高いインフラに特に焦点を当てた公的および民間投資において最大6,000億ドルを共同で動員することを目指すことを表明しました。2024年6月のG7プーリア・サミットに際して開催されたPGIIに関するサイドイベントでは、各国からアフリカにおける連結性を強化する取組の紹介や、PGIIの下で民間資金を含むインフラ投資が推進されることへの期待が表明されたほか、岸田総理大臣(当時)から、アフリカやアジアにおける連結性の向上に係る日本の取組を紹介した上で、PGIIの成果を2025年に開催予定である第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)にもつなぐことができるよう、質の高いインフラを通じて、引き続きアフリカの成長を後押ししていくことを表明しました。

質の高いインフラ案件に国際的な認証を与えるための枠組みであるブルー・ドット・ネットワーク(BDN)注32も「質の高いインフラ投資」を促進する上で重要な取組であり、2024年4月には、経済協力開発機構(OECD)において、BDN事務局が設置されました。日本が議長国を務めた同年5月のOECD閣僚理事会で採択された閣僚声明においては、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」に沿って、PGIIなどを通じて、質の高いインフラ投資を促進することにコミットするとともに、BDNの運用に向けた努力と事務局の設置が歓迎されました。

ASEANにおいては、カンボジアのシハヌークビル港、インドネシアのパティンバン港やジャカルタ都市高速鉄道、フィリピンのマニラ首都圏地下鉄など、多くの交通インフラ整備事業を進めてきました。2024年10月の日・ASEAN首脳会議にて、石破総理大臣は、2023年に発表された「日ASEAN包括的連結性イニシアティブ」の下、デジタル、交通インフラ整備、電力連結性等ハード・ソフト両面の幅広い分野でプロジェクトが進展しているほか、地域金融協力も推進していることを述べるとともに、活力ある地域の未来を共に創るため、グリーン・トランスフォーメーション(GX)、デジタル・トランスフォーメーション(DX)注33といった新たな課題の解決のための協力を推進することを表明しました。

太平洋島嶼(しょ)国における取組として、2021年12月に日本、米国、オーストラリア、キリバス、ナウル、ミクロネシア連邦の6か国が連名で発表した、東部ミクロネシア海底ケーブルの日米豪連携支援については、2023年6月に海底ケーブルに関する調達契約が締結され、2024年5月には、6か国のプロジェクト理事会第4回会合が開催され事業の進捗が確認されました。2024年7月に実施された第10回太平洋・島サミット(PALM10)において、岸田総理大臣(当時)は、海底ケーブルを含む「質の高いインフラ」の整備を通じ、陸・海・空およびデジタル空間での連結性の強化に貢献していく旨述べました。日本は、米国、オーストラリアを始めとする同志国などと連携しつつ、情報通信技術(ICT)分野を始めとして、インド太平洋地域における連結性を強化する質の高いインフラ整備に引き続き協力していきます。

アフリカ地域においては、2022年8月にチュニジアで開催された第8回アフリカ開発会議(TICAD 8)で、質の高いインフラ整備や国境でのワンストップ・ボーダーポスト整備を通じたアフリカの社会基盤整備に加えて、地域としての連結性強化に資する取組などを打ち出しました。アフリカにおける「連結性・質の高いインフラ投資」を具体化する協力として、2024年10月には、タンザニアにおいて首都ドドマ市の内環状道路の建設・拡幅を行う無償資金協力に関する書簡を交換しました。本計画は、同国の物流円滑化および経済・社会開発を支えるインフラ開発に寄与するほか、ドドマ市がタンザニアから内陸国のウガンダ、コンゴ民主共和国等に続く中央回廊上に位置していることから、同回廊における物流円滑化も期待されています。

日本政府は今後も、世界の質の高い成長のため、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」を国際社会全体に普及させ、アジアを含む世界の国々や世界銀行、アジア開発銀行(ADB)、OECD等の国際機関と連携し、「質の高いインフラ投資」の実施に向けた取組を進めていく考えです。

用語解説

質の高いインフラ
自然災害などに対する「強靭性」、誰一人取り残されないという「包摂性」、社会や環境への影響にも配慮した「持続可能性」を有し、真に「質の高い成長」に資するインフラのこと。2019年6月のG20大阪サミットにて、(1)開放性、(2)透明性、(3)ライフサイクルコストから見た経済性、(4)債務持続可能性といった、「質の高いインフラ」への投資にあたっての重要な要素を盛り込んだ「質の高いインフラ投資に関するG20原則」が承認された。

  1. 注28 : G20グローバル・インフラストラクチャー・ハブ(GIH)による推計。
  2. 注29 : 用語解説を参照。
  3. 注30 : 用語解説「質の高いインフラ」を参照。
  4. 注31 : Partnership for Global Infrastructure and Investmentの略称。持続可能で包摂的、かつ強靭で質の高いインフラへの公的および民間投資を促進するためのG7のコミットメント。
  5. 注32 : 2019年11月、日本、米国、オーストラリアが提唱した。2023年以降、英国、スペイン、スイスが参加し、具体的な制度設計について議論している。
  6. 注33 : 注15を参照。
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