2022年版開発協力白書 日本の国際協力

はじめに:日本の国際協力の意義

日本は、戦後、当時の先進国や国際機関からの援助を受けながら復興・経済成長を果たし、累計で190か国・地域に対して様々な支援を行ってきました。2021年の日本の政府開発援助(ODA:Official Development Assistance)実績は、米国、ドイツに次ぐ第3位であり、日本は、国際社会で責任のある国としての役割を果たしています。


新型コロナウイルス感染症の拡大やウクライナ情勢を受けた影響からも分かるように、世界のどこかで起きた危機は、世界のいかなる国・地域にとっても決して「対岸の火事」ではありません。アジアと日本の経済は密接につながっており、アジアと日本が支え合うことはお互いの発展に不可欠であるといえます。世界の平和と経済社会の安定・繁栄は、エネルギーや食料の多くを海外からの輸入に依存する日本にとっても重要です。新型コロナの収束に向けて、また、今後のパンデミックに対する備えとして、開発途上国の医療体制強化を支援することは、日本国内の感染リスクの軽減や日本企業進出の環境整備にもつながります。


65年以上にわたる開発協力は、途上国との良好な二国間関係の構築や、国際的な場における日本への信頼の向上にも大きく寄与してきました。日本の協力に対する謝意や信頼の表れとして、途上国は日本の協力を自国の紙幣や切手のデザインに採用したりしています。また、東日本大震災や近年の災害にあたっては、途上国を含め世界の国々より、多くのお見舞いや支援が届けられました。日本は、国連加盟国中最多の12回にわたり国連安全保障理事会非常任理事国に選出されていることを始め、国際選挙において、途上国を含む世界の国々から多大な支持を得ています。これらは、ODAの戦略的活用を含む外交努力の結実であり、国際社会の日本への信頼と期待の高さといえます。パワーバランスの変化により不確実性を増す国家間競争の時代において、法の支配に基づく国際秩序を守り抜くためにも、途上国を含む各国との関係強化は一層重要になっています。


グローバル化に伴い日本企業の海外進出も増加しています。しかし、途上国においては、インフラの未整備や技術系人材の不足、税制・法制度の不透明さなど、ビジネス展開に課題があることも事実です。かかる課題の解決や、事業開始に向けた調査・実証事業、日本の技術の活用促進等にもODAは活用されており、これからも日本企業の途上国でのビジネス展開を下支えしていきます。


国際社会の相互依存は深まり、一国の努力だけでは解決しえない地球規模課題は一層深刻化、複雑化しています。世界が抱えている課題を解決することが、日本の平和と安全、そして繁栄につながるものとなるよう、日本はこれからも、ODAを適切かつ透明性をもって活用し、世界の様々な主体と協力しながら、一層戦略的・効果的な開発協力を行っていきます。

日本の協力により建設されたカンボジアの2つのメコン架橋は、それぞれ「きずな橋」、「つばさ橋」と呼ばれ人々に親しまれており、紙幣のデザインに採用されている

日本の協力により建設されたカンボジアの2つのメコン架橋は、それぞれ「きずな橋」、「つばさ橋」と呼ばれ人々に親しまれており、紙幣のデザインに採用されている

火山噴火被害に対する緊急援助物資を載せてトンガの空港に到着した自衛隊機を出迎えるフアカヴァメイリク首相(中央)(2022年1月)

火山噴火被害に対する緊急援助物資を載せてトンガの空港に到着した自衛隊機を出迎えるフアカヴァメイリク首相(中央)(2022年1月)

ケニア最大の地熱発電所建設事業を日本の円借款にて支援。発電を支えるタービンの大部分が日本製であり、その納入も日本企業が請け負った。(写真:丸紅(株))

ケニア最大の地熱発電所建設事業を日本の円借款にて支援。発電を支えるタービンの大部分が日本製であり、その納入も日本企業が請け負った。(写真:丸紅(株))

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