2021年においては2020年に続き、新型コロナ対策支援が日本の国際協力の大きな柱の一つとなりました。日本は、新型コロナの世界的な収束に向け、ワクチン供給のみならず、その開発・生産、輸送、接種のための包括的な支援を実施してきました。ワクチンについては、開発途上国を含めたワクチンへの公平なアクセスを支援するためにCOVAXファシリティへの合計10億ドルの財政支援を表明したほか、アジアに加えて、アフリカや中南米地域にも供与先を拡げました。2022年2月末までに約4,200万回分の現物供与を実施し、今後も合計6,000万回分を目処として進めていきます。ワクチンを接種会場まで届けるためのコールド・チェーンの整備等を行う「ラスト・ワン・マイル支援」を進め、世界各国から高く評価され、感謝の言葉を頂いています。2021年版開発協力白書では、こうした取組について第Ⅰ部の特集として取り上げています。
また、国際社会は時代を画する変化の中にあり、法の支配などの普遍的価値やルールに基づく国際秩序に対する挑戦が厳しさを増しています。こうした中で、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向けた取組の重要性が一層増しています。新型コロナの拡大により、世界中で脆弱な状況にある人々が大きな打撃を受け、人間の安全保障が脅かされています。第Ⅱ部では、世界をより良い未来に導くための重要な羅針盤として位置付けている持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取組を紹介するとともに、FOIP実現も念頭に、米国、豪州、インド、ASEAN、欧州等との連携を進めながら実施している質の高いインフラ等の支援について取り上げています。気候変動問題については、COP26交渉の成果を踏まえ、関係国と連携・協力しつつ、脱炭素社会の実現に向けて表明した支援や再生可能エネルギー導入支援等について取り上げています。
2021年は、2月のミャンマーでのクーデター、8月以降のアフガニスタン情勢の急変など、我が国の国際協力を巡る環境に大きな変化がありました。第Ⅲ部では、これらの情勢変化により生じた人道ニーズに応えるための緊急支援を含む、我が国の地域別の取組について紹介しています。
近年、開発課題が多様化・複雑化し、世界全体の資金フローのあり方も変化する中で、ODA以外の資金・活動の役割が増大しており、様々な主体との連携は欠かせません。そこで、第Ⅳ部では、日本の企業・NGO・地方公共団体・大学、JICA海外協力隊、国際機関日本人職員から寄せられた現場の声や実例を通じて、日本の開発協力がいかに重層的な連携の下に実施され、世界でどのように役立っているかを紹介しています。
日本の開発協力の実施のためには、国民の皆さまの御理解と御協力、そして連携が不可欠です。コラムや写真を数多く掲載することで読みやすい紙面作りにも努めたこの2021年版開発協力白書が、国民の皆さまの御理解を深めるための一助となれば幸いです。