はじめに:日本の国際協力の意義
日本が2020年に実施した政府開発援助(ODA:Official Development Assistance)の支出総額は、約2兆1,677億円となりました。新型コロナウイルス感染症への対応、少子高齢化対策や自然災害の復旧・対策など、日本国内で様々な課題が山積し、日本の財政や国民の経済生活に大きな影響をもたらしています。このような中で、なぜ日本はODAで開発途上国を支援するのでしょうか。
日本は、第二次世界大戦後、戦後の荒廃(こうはい)の中から復興しました。そうした苦境から復興し、経済成長を成し遂げ、先進国の仲間入りを果たすにあたり、日本の復興・経済成長を支えた柱の一つとして、戦後間もない時期から開始された、米国などの先進国や世界銀行をはじめとする国際機関などからの支援の存在がありました。東海道新幹線や東名高速道路、黒部ダム、そして愛知用水など、日本の再建と発展のため必要不可欠であった基礎的なインフラは、これらの支援によって整備されました。経済発展を遂げた日本は、国際社会で名誉ある地位を占める一国家として、ODAを活用して途上国の経済発展を後押ししてきました。実際、日本に対して世界各国から寄せられる期待は非常に大きなものです。
広く世界を見渡せば、気候変動、自然災害、環境問題、感染症、難民問題など、一国では解決が難しい地球規模課題が山積し、深刻化しており、その影響も一国内にとどまらず、世界中に広がっています。2015年には、国連において持続可能な開発目標(SDGs)が採択され、2030年までに「誰一人取り残さない」社会を構築すべく、国際社会が取組を進めています。国際社会の相互依存が深まる中で、ODAを通じて途上国の発展に貢献することは、国際社会の平和や安定、更には繁栄に寄与し、それは日本国民の利益の増進にもつながっています。たとえば、新型コロナの感染拡大に際し、途上国へのワクチン等の供与やコールド・チェーン整備等を行う「ラスト・ワン・マイル支援」を通じて世界規模での感染の終息に貢献することは、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現や世界経済の回復のみならず、国内の感染リスク軽減や日本経済の立て直しにもつながります。また、途上国における温室効果ガスの排出や海洋プラスチックごみの削減に協力することは、日本を取り巻く環境の改善にも大きく貢献することになります。さらに、日本が途上国の産業育成に取り組むことにより、日本企業の海外展開を支援するとともに、途上国から、たとえば多様な水産資源が日本に輸出され、私たちの食卓を彩ることにもなります。
日本がODAを開始して、65年以上が経ちました。これまでの日本のODAを通じた途上国への様々な分野での支援や人材育成は、今の日本に対する信頼につながり、途上国からは沢山の感謝の声が届いています。また、たとえば、日本も、東日本大震災や近年の災害後には、途上国を含め海外から沢山のお見舞いや支援を受けています。ODAは貴重な税金により実施していますので、適切に活用し、途上国のために役立てていくことは言うまでもありません。その上で、世界が抱えている課題を解決することが、日本の平和と安全、そして繁栄につながるものとなるよう、日本は、これからも世界の様々な主体と協力しながら開発協力を行っていきます。
