2020年版開発協力白書 日本の国際協力

開発協力トピックス2

「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取組の推進

第2回日米豪印外相会合に出席する茂木外務大臣(2020年10月6日)

第2回日米豪印外相会合に出席する茂木外務大臣(2020年10月6日)

日本の支援により建設された“つばさ橋”(写真:久野真一/JICA)

日本の支援により建設された“つばさ橋”(写真:久野真一/JICA)

2016年に日本が提唱した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP:Free and Open Indo-Pacific)」の考え方は、今や米国のみならず、オーストラリア、インド、ASEAN諸国、欧州諸国にまで広がりつつあります。

2020年10月の菅総理のベトナムおよびインドネシア訪問の際、ASEANによる「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」とFOIPの連携等について首脳間で意見交換がなされました。翌月の日ASEAN首脳会議では、「インド太平洋に関するASEANアウトルックについての日ASEAN首脳会議共同声明」が発出され、AOIPとFOIPが、本質的な原則を共有していることが確認されました。同声明では、海洋協力、連結性、SDGs、経済というAOIPの重点分野に沿って協力を進めていきます。FOIPの重要性とAOIPに対する全面的な支持は2020年10月に東京で開催した日米豪印外相会合でも再確認されています。アフリカ諸国についても、2020年12月の茂木大臣の外遊時に各国ハイレベルとFOIPの実現に向け協力することで一致しました。日本は、今後も様々なパートナーと緊密に連携しながら、重層的な協力関係を強化していきます。

FOIPの実現のための基本的な考え方は、①海洋秩序に関する政策発信や、海洋法の知見の国際社会との共有、②自由で公正な経済圏を広げるためのルール作り、③インド洋と太平洋にまたがる連結性の実現、④能力構築支援等を通じたガバナンスの強化、⑤海洋安全保障および海上安全の確保であり、その実現のためにODAも戦略的に活用してきています。

インド洋と太平洋にまたがる連結性の実現に向けた質の高いインフラの整備としては、「メコンの大動脈」と言われるホーチミン、プノンペン、バンコクの巨大都市を結びインド洋に抜ける南部経済回廊(かいろう)や、ベトナムのダナンからラオス、タイ内陸部を結びミャンマーを通じてインド洋につなぐ東西経済回廊の連結性強化に資するプロジェクトを実施してきています。具体的には、カンボジアのつばさ橋の建設やラオスの国道9号線の改修など、物流の効率化や交通渋滞の緩和に寄与する取組を実施しています。また、インドネシア西ジャワ州パティンバンでは新港建設を支援中で、2020年12月には先行開港区の建設が一定程度終了したことから、一部区間の完成披露として暫定オープン式典が行われました。さらに、能力構築支援等を通じたガバナンスの強化の例として、自立的かつ持続可能な成長を後押しするため、相手国政府の財政政策や公的債務管理に関する能力強化を目的に、マクロ経済政策アドバイザーの派遣なども実施しています。

海上安全の確保の観点からは、自由で開かれた国際秩序を構築するため、日本のシーレーン上に位置するフィリピン・ベトナムなどに対し、巡視船や沿岸監視レーダーをはじめとする機材供与、専門家派遣や研修による人材育成などを通じて海上法執行能力構築支援を積極的に実施し、海賊やテロといった要因を取り除き、平和と安定を確保すべく取組を継続しています。

日本およびこの地域の安定と繁栄は、透明性の高いルールに支えられ、様々な人・物・知恵が活発に行き交う「自由で開かれたインド太平洋」の存在なくしてはあり得ません。日本はこれからも、ODAを含む様々な支援を活用し、FOIPの実現に向けた取組を進めていきます。

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