匠の技術、世界へ 1
eラーニング・システムを活用した日本流の質の高い教育の普及
~ウズベキスタンの公教育と民間教育を使いやすく分かりやすいシステムでサポート~

eラーニング・システムを活用して学習するウズベキスタンの生徒たち(写真:デジタル・ナレッジ)

教授法プログラムの研修を熱心に受けるウズベキスタンの教員たちの様子(写真:デジタル・ナレッジ)
中央アジアの内陸国ウズベキスタンでは、産業発展に向けた教育・人材育成やICT化が進められており、国民の間での教育熱も高まっています。しかし、公立学校の教員数の不足や教員の能力の問題、教材や民間教育サービスの不足が大きな足かせとなっていました。
こうした状況のもと、eラーニング・システムを開発・運用する株式会社デジタル・ナレッジ社(東京都)は、JICAの中小企業・SDGsビジネス支援事業の枠組を利用し、日本の質の高い教育のコンテンツを普及させるため、「ウズベキスタン国地方学校教員の能力向上及び教育格差是正向け学習管理システム(LMS)に係る普及・実証・ビジネス化事業」を実施しました。
本事業では、デジタル・ナレッジ社のeラーニング教育システムをウズベキスタンの国民教育省ICTセンターに導入し、公教育と民間教育双方の発展のために活用しました。具体的には、公教育分野では、学校教員対象の教授法プログラムや小中学生対象の数学用教材など、日本の大手教育企業のオンラインの教育プログラムをウズベキスタン向けに修正して提供しました。また、民間教育分野では、放課後に公立学校の校舎を借り、同社の教育システムを導入した小中学生のための塾を開設しました。特に教員向けのプログラムについては、生徒の理解度・学力向上のための具体的な研修を受けたことがなかったウズベキスタンの教員から、「こういう教え方があるのか」という感嘆の声が上がりました。
「我が社が開設した放課後の塾は、日本の個別指導塾や電子そろばん等のサービスを提供するもので、当初2クラス程度を予定していましたが、口コミで評判が広まり応募が殺到するほど人気が出たため、急遽(きゅうきょ)クラスを増設する必要があるほどでした。元々、日本流の教育ビジネスが成り立つのかという点を確かめるために応募した事業でしたが、結果として、教育に対する国民の熱意が素晴らしく、必要なインフラも整いつつある大きな可能性を持った国であるという、ウズベキスタンの潜在性についても改めて知ることができました。」と、デジタル・ナレッジ社の齋藤陽亮(さいとうようすけ)氏は語ります。
JICAウズベキスタン事務所で本事業を担当した久保田(くぼた)企画調査員は、「デジタル・ナレッジ社の皆さんのウズベキスタンに対する大きな愛情を感じます。」としつつ、次のように語ります。「通常、民間企業がウズベキスタン政府を説得し、事業を動かしていくことはとても難しいのですが、デジタル・ナレッジ社は国民教育省との固い信頼関係のもと、スピード感をもって事業を展開しています。同社が提供するサービスへの期待はもちろんですが、その熱意が先方政府に伝わっていることも大きいと思います。また、国民教育省の副大臣(当時)が、JICAの人材育成奨学計画(JDS*)を通じて日本の大学院に留学した経験があり、日本の教育への信頼が厚いこともその背景にあります。」
2020年3月、新型コロナウイルス感染症対策のため全土で休校措置が取られた際も、国民教育省から直接協力要請が寄せられました。「同社は当初の事業計画を拡大してオンライン学習プログラムを無償提供し、ウズベキスタン政府から高く評価されています。」とJICA本部の民間連携事業部で本事業を担当した小澤(おざわ)職員は振り返ります。
日本企業とウズベキスタン政府との信頼関係のもと、日本の質の高い教育とICTの技術が、ウズベキスタンの子どもたちの「学びたい」という思いに応え、同国の発展のために貢献しています。
*JDSについて、詳細は「(4)大学・教育機関との連携」を参照。