2020年版開発協力白書 日本の国際協力

6.中央アジア・コーカサス地域

ロシア、中国、南アジア、中東、欧州に囲まれた中央アジア・コーカサス地域の発展と安定は、ユーラシア地域全体の発展と安定にとって大きな意義を有しています。また、この地域は、石油、天然ガス、ウラン、レアメタル(希少金属)などの豊富な天然資源を有する戦略的に重要な地域です。この観点から、日本は、これらの地域の国々における人権、民主主義、市場経済、法の支配といった基本的価値の推進を支えています。また、同時にアフガニスタンやイランなど、中央アジアに近接する地域を含む広域的な視点も踏まえつつ、同地域の長期的な安定と持続的発展のための国づくりを支援しています。

●日本の取組

ウズベキスタンの学校において、新型コロナ対策にも貢献するe-learning教材を活用して計算を学ぶ児童たち(写真:JICA)

ウズベキスタンの学校において、新型コロナ対策にも貢献するe-learning教材を活用して計算を学ぶ児童たち(写真:JICA)

日本は、旧ソ連の崩壊に伴い独立した中央アジア・コーカサス諸国に対し、市場経済体制への移行と経済発展に向けた各国の取組を支援するため、老朽化したインフラ整備、市場経済化のための人材育成、保健医療をはじめとする社会システムの再構築など多彩な分野で支援を行っています。

中央アジア諸国との関係においては、同地域の「開かれ、安定し、自立した発展」には、域内国が共通の課題に共同で対処することが重要であるとの考えから、日本は、2004年に「中央アジア+日本」対話の枠組みを立ち上げ、地域協力の「触媒(しょくばい)」としての役割を果たすよう努力してきました。近年は対話にとどまらない、より実践的な協力を進めています。

2020年8月、茂木外務大臣を議長として、「中央アジア+日本」対話・外相会合(テレビ会議)が開催されました。同会合において、茂木外務大臣と中央アジア5か国の外相は、(1)新型コロナウイルス感染症対策における中央アジアの域内協力および日本との協力、(2)2022年の外交関係樹立30周年を見据えた協力の在り方、特に次回の第8回外相会合に向けた議論の方向性について意見交換を行い、議長声明を発表しました。また、新型コロナ対策について、茂木外務大臣は、各国の取組を後押しするため、日本が(1)保健・医療機材の無償供与、(2)国際機関を通じた技術支援・保健医療物資供与、(3)アビガン錠の無償提供、(4)医療専門家間の意見交換を含む感染症対策に係る情報・教訓・知見の共有を積極的に進めている旨を述べました。これに対し、中央アジア各国の外相からは日本の協力に対する謝意が表明されました。茂木外務大臣から、新型コロナの状況下でも、これまで積み重ねてきた日本の対中央アジア外交の基本的考え方は全く揺るぎないと述べるとともに、自由で開かれた国際秩序の重要性について指摘し、各国外相から賛意が示されました。

中央アジア諸国のうち、特に、ウズベキスタンとの二国間関係では、2019年12月のミルジヨーエフ大統領訪日の際、安倍総理大臣(当時)と首脳会談を行い、電力および農業分野での総額約1,900億円の円借款を含む経済協力案件等に合意しました。また、2020年12月には、ウムルザーコフ副首相兼投資・対外貿易大臣が訪日し、麻生副総理兼財務大臣、茂木外務大臣等との会談が行われました。茂木外務大臣との会談では、ウムルザーコフ副首相から、新型コロナ対策をはじめとする日本からの支援に対する謝意の表明がありました。両国は、2019年12月の大統領訪日の際に合意した経済協力案件等を着実に実施していくことで一致しました。

コーカサス諸国との関係では、日本は、アジアと欧州をつなぐゲートウェイとして重要な役割を担うコーカサス地域の自立的な発展のための協力を進めていく考えのもと、2018年9月の河野外務大臣(当時)によるコーカサス3か国(アルメニア、ジョージア、アゼルバイジャン)訪問の際に、「コーカサス・イニシアティブ」を発表しました。同イニシアティブは、①国づくりを担う人づくり支援と、②インフラ整備やビジネス環境整備を通じた魅力的なコーカサスづくりのための支援の2つの柱を基本方針としています。

日本は人材育成支援として、2019年までに中央アジア・コーカサス諸国から11,447名の研修員を受け入れるとともに、同諸国へ向けて3,209名の専門家を派遣しています。また、若手行政官の日本留学プロジェクトである人材育成奨学計画や、日本人材開発センターを通じたビジネス人材育成など、新しい国づくりに必要な人材の育成を支援してきています。

また、日本は新型コロナ対策支援として、中央アジア・コーカサス地域の6か国との間で、保健・医療関連機材の供与のため、総額25億円の無償資金協力に関する書簡を署名・交換しました。このほか、中央アジア5か国に対し、技術協力案件や無償資金協力案件を通じて、総額約1.9億円の保健・医療関連機材の供与を実施しています。

日本の開発協力の方針 中央アジア・コーカサス地域の重点分野
図表Ⅲ-7 中央アジア・コーカサス地域における日本の援助実績
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