2020年版開発協力白書 日本の国際協力

5.欧州地域

欧州地域の中で、過去に共産主義体制にあった中・東欧、旧ソ連の多くの国々は、現在、市場経済に基づいた経済発展に取り組んでいます。日本は、人権、民主主義、市場経済、法の支配などの基本的価値を共有するこれらの国々との関係をさらに強化し、欧州全体の一層の安定と発展に貢献するため、経済インフラの再建、環境問題などへの取組を支援しています。

●日本の取組

ウクライナの農業放射線研究所において、日本から供与された研究用機材を操作する研究員

ウクライナの農業放射線研究所において、日本から供与された研究用機材を操作する研究員

西バルカン諸国注8は、1990年代に発生した紛争の影響で改革が停滞していましたが、各国・国際機関などの復興支援、および各国自身による改革の結果、復興支援の段階から卒業し、現在は持続的な経済発展に向けた支援が必要な段階にあります。

結束する欧州を支持する日本は、2004年にEU(欧州連合)と共同で開催した西バルカン平和定着・経済発展閣僚会合で確認された、「平和の定着」、「経済発展」、「域内協力」の3本柱を重点分野として開発協力を展開しています。2018年には、安倍総理大臣(当時)が西バルカン諸国のEU加盟を目指した社会経済改革を支援し、民族間の和解・協力を促進することを目的とする「西バルカン協力イニシアティブ」を発表しました。日本は、西バルカン諸国において、「持続可能な経済成長の促進」を重点方針として支援しています。

旧ソ連諸国であるウクライナやモルドバは、ロシアとEUとの間に位置し、地政学上重要な位置にあり、これらの国々の安定と持続的な発展は、欧州全体の安定にとって不可欠です。

日本は、ウクライナの自立的・持続的経済成長を後押しすべく、保健医療、財政、経済基礎インフラなどの幅広い分野において支援を行っています。情勢が依然として悪化しているウクライナ東部に対しては、避難民への水・衛生分野の支援、シェルターの提供、住居修復などの支援を着実に実施しています。また、資金供与以外でも、技術協力を通じた財政改革支援、公共サービス改善支援、メディア支援のほか、新たに廃棄物管理能力向上などの支援を実施しています。

モルドバに対しては、同国の持続可能な経済発展や国民の生活水準向上に資する支援を行っています。

2020年、日本は、欧州地域に対し、新型コロナウイルス感染症の対策支援として、各国からの要請に基づき、保健・医療関連機材の供与のため、北マケドニア、コソボ、セルビア、モンテネグロの4か国との間で総額4億円の無償資金協力に関する書簡を署名・交換しました。

さらに、欧州地域内の経済発展の格差を踏まえ、日本は、EUに加盟した国々に対し、援助対象国から卒業したものとして支援を段階的に縮小させるとともに、それらの国がドナー国として欧州地域の開発途上国に対する開発協力に一層積極的に取り組むことを促していきます。

日本の開発協力の方針 欧州地域の重点分野
図表Ⅲ-6 欧州地域における日本の援助実績

  1. 注8 : アルバニア、コソボ、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、北マケドニア、モンテネグロの6か国。
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